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コラム

マスターズからZOZOへ 不調でも勝利したウッズと松山の共通点【舩越園子の砂場Talk】

2021.10.27 舩越園子(ゴルフジャーナリスト)
ZOZOチャンピオンシップ タイガー・ウッズ 松山英樹 砂場Talk(バンカートーク)

松山英樹の感動的な勝利で幕を閉じた今年のZOZOチャンピオンシップ。思い起こせば、日本開催だった2年前に優勝したタイガー・ウッズも、今回の松山英樹と同様にマスターズで優勝した後にZOZOで勝利を挙げた。そんな二人にはある共通点があるという。

2年前のウッズの立場や存在感をそのまま受け継いだ松山

 日本で開催される唯一の米ツアー大会、ZOZOチャンピオンシップで日本のエース、松山英樹が勝利を挙げたことは、日本のゴルフファンにとって、最高の結末だった。

ヒザの手術を乗り越えてZOZOチャンピオンシップで82勝目を挙げたタイガー・ウッズ 写真:Getty Images

 コロナ禍ゆえにギャラリーの入場は1日5000人までに限定されていたが、最終日にアコーディア・ゴルフ習志野CCを訪れた4976人は、2位に5打差で勝利した松山の雄姿に狂喜していた。

 その場面を眺めながら、今回の松山の勝利は2年前の第1回大会を制したタイガー・ウッズの勝ち方と、いろんな意味で「似ているなあ」と、そんなことを思った。

 振り返れば、2019年大会は最初から最後まで「ウッズ祭り」だった。というのも、あのときのウッズは日本で13年ぶりの試合出場を迎えており、しかも、あの年の4月にマスターズを制して大復活を遂げたばかりでもあった。だからこそ、日本のファンはウッズに興奮し、さらなる勝利を期待していた。

 しかし、肝心のウッズ自身は、左ヒザの手術から、わずか2か月しか経っておらず、異国の地でプレーする4日間72ホールにそもそも不安を抱いていた。

 折り悪く、大会は悪天候で不規則進行になり、日曜日に一気に29ホールを回る強行軍を強いられたウッズは、「月曜日に残る7ホールを戦い抜けるだろうか?」と一抹の不安を感じていた。だが、「最後の砦はマインドだ。100%心を決めて戦う」と誓ったウッズは、自分を信じて戦い切り、サム・スニードの記録に並ぶ通算82勝目を達成した。

 そのウッズは今年2月の交通事故で重傷を負い、リハビリ中ゆえに、今回の出場は叶わなかったが、2年前のウッズの立場や存在感をそのまま受け継いだ格好になったのが、今年の松山だった。

 開幕前から期待と注目は松山1点に集中していた。2年前のウッズ同様、今年の松山も4月にマスターズで勝利を挙げたばかりで、日本のファンは、オーガスタ・ナショナルを制したチャンピオンが今度は習志野を制する姿を是非とも見たいと願っていた。

 しかしながら、やはり2年前のウッズ同様、今年の松山も、期待や注目とは裏腹に、胸の中には不安を抱いていた。

「ゴルフの調子は悪い状態」

「マスターズのときが10だとすれば、今は1しかない」

 開幕前にそう語っていた松山が、いざフタを開けてみれば、フェアウェイとグリーンを捉え続ける見事なゴルフを披露して2位に5打差の圧勝を飾ることができたのは、一体なぜだったのか。その答えを松山は表彰式でも優勝会見でも、自身の言葉で何度も語った。

「たくさんの方々が応援してくれて、その中でいいプレーができたことが、すごくうれしい」

「ゴルフの状態は今日も2か3だった。結果としては8ぐらいまで上がったけど、上がった要因は、応援してくれたたくさんの人々のおかげしかない。自信が持てるゴルフではなかった。でも、コースに出たら、たくさんの応援が力になり、スイングのことを気にせず、ただゴルフができた」

 応援が力になった――ウッズも、2年前のマスターズを制したとき、そしてZOZOチャンピオンシップを制したとき、このフレーズを口にした。手術から間もない左ヒザの状態、肉体の状態に不安を覚えながらも、その不安を払拭し、勝利することができたのは「応援の力」なのだと実感したからこそ、このフレーズが口を付いたのだろう。

 そして松山も、わずか「1」、あるいは「2か3」しかなかった自身のゴルフのレベルを「応援の力」を糧に「8」まで引き上げ、勝利を挙げることができた。

 ウッズと松山の勝ち方には、そういう類似点、共通点が見て取れた。

ウッズも松山も苦戦を乗り越え習志野で勝利を挙げた

 松山には、さらなるストーリーもあった。2年前の大会で、松山はウッズの82勝目を「なんとかして阻止しようと頑張ったつもり」だったが、残念ながら2位に甘んじ、母国のファンに雄姿を見せることができなかった。

「悪い状態」からギャラリーの声援を背に勝利をもぎ取った松山英樹 写真:Getty Images

 今年のマスターズ優勝は、もちろんテレビ中継を通じて日本のファンに見せることはできていたが、日本の土の上で勝つ姿を見せたいと願っていた松山にとって、東京五輪でメダルを逃したことは、無念だった。

 2年前のZOZOチャンピオンシップ惜敗の悔しさと今年の東京五輪での無念。その両方を抱いていた松山にとって、今年の習志野で勝つことは、いわば悲願だった。

 それなのにゴルフの調子は「悪い状態」で戦っていたのだから、彼の戦いは、心身ともにギリギリだったに違いない。

 2年前のウッズも、今年の松山も、苦戦を乗り越え習志野で勝利を挙げた。ゴルフ界の王者や日本のヒーローであっても、勝利することは常に難しく、試練を克服してトップに立つからこそ人々は感動する。

 そんな感動の勝利を支えてくれたのは「みなさんです。みなさんのおかげです」と言ってもらったファンは、チャンピオンのそのセリフ、その表情を生涯忘れることはない。

 72ホール目の第2打は見事だった。イーグルフィニッシュも、2位に5打差も素晴らしかった。

 だが、「たくさんの人々の応援が力になった」と言った松山のその一言こそが、最高のエピローグだったのだと私は思う。

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