海外の芝が日本の夏の高温多湿に耐えられなかった
松山英樹が優勝したZOZOチャンピオンシップは千葉県のアコーディア・ゴルフ習志野カントリークラブで開催されました。このコースは1ホールにグリーンが2つずつある2グリーンのゴルフ場でした。
このようなレイアウトは日本ではよく見かけますが、海外ではほとんど見かけません。なぜ日本では2グリーンのゴルフ場が多く造成されたのでしょうか。

それは海外のグリーンで使用されていた芝が日本の夏の高温多湿に耐えられず、長続きしなかったからです。
日本のゴルフ場のグリーンには元々、コーライ芝が使用されていました。最初に海外の芝(洋芝)を導入したのは、東京ゴルフ倶楽部が1931年に駒沢コースから朝霞コースへ移転したときでした。
しかしながら洋芝は寒冷地に生育する種類であったため、夏になると枯れてしまいました。そこで、冬に素晴らしいコンディションに仕上がる洋芝グリーンの隣に、夏用のコーライ芝グリーンを造るという独自の発想で乗り切ることになりました。
この改造を最初に実施したのが東京オリンピックの試合会場となった埼玉県の霞ヶ関カンツリー倶楽部です。それ以降、ほとんどのゴルフ場が追随しました。
したがって、2グリーンのゴルフ場は片方が洋芝のベントグリーン、もう片方がコーライグリーンというのが一般的です。ティーイングエリアの距離表示で「B.G」「K.G」と併記してある場合、ベントグリーンとコーライグリーンの略称です。
ベントグリーンのほうが見た目の傾斜どおりにボールが転がりやすく、転がりも滑らかなので好まれる傾向があります。秋・冬・春はベントグリーンを使用し、夏だけコーライグリーンを使用するゴルフ場が多いです。
ただ、2グリーンのゴルフ場はそれぞれのグリーンにガードバンカーを設置して難易度を高めていますが、使用していないグリーン方向へのミスは比較的許容されます。ピンが立っているグリーンを狙ったはずなのに、ピンが立っていないほうのグリーンにボールが乗ってしまい、「グリーンを間違えちゃったよ」なんて照れ笑いした経験は初心者だけでなく上級者にもあります。要するに、使用していないグリーン方向に打てば大きなトラブルを避けられるのです。
ゴルフはターゲットスポーツであり、ティーイングエリアからグリーンに近づくにつれて狙いどころが絞られていくのが原則です。2グリーンのゴルフ場は本来なら狙いどころを絞る場面で広いスペースが生じてしまうので、世界のゴルフ場とはかけ離れた特殊な形態であると懸念を抱く人もいました。
品種改良や管理技術の進歩により1グリーンに改造するゴルフ場が増えてきた
1970~80年代に入るとベント芝の品種改良や管理技術の進歩により、高温多湿な日本でも1年を通じて良好なコンディションを維持できるようになってきました。

それを受けて名門コースやトーナメントコースを中心に2グリーンを1グリーンにする改修工事を行うゴルフ場が増えてきました。
日本で最初に2グリーンを採用した霞ヶ関カンツリー倶楽部も、1998年に西コースを1グリーン化し、2016年には東コースも1グリーン化しました。
一方で、ベントグリーンとコーライグリーンの2グリーンから、両方ともベントグリーンの2グリーンに切り替えるゴルフ場も出てきました。これはコースの戦略性よりもコース管理のやりやすさを優先したわけです。
このようなゴルフ場は「メイングリーン」と「サブグリーン」あるいは「Aグリーン」と「Bグリーン」と表記し、芝のコンディションや予約状況などを見ながらグリーンを交互に使い分けています。
1グリーンと2グリーンのどちらが好ましいかと言えば、ゴルフ本来のゲーム性を考えると1グリーンが理想ですが、今の日本は高温多湿に加えて集中豪雨が頻繁に発生し、芝の管理が非常に難しい気候になっています。
1グリーンのゴルフ場が毎年のようにコンディション維持に苦労している様子を見ると、既存の2グリーンのゴルフ場が1グリーン化に踏み切るのはかなり勇気のいる決断になります。しばらくの間は1グリーンのゴルフ場と2グリーンのゴルフ場が共存する時代が続きそうです。
参考資料・「スゴい!ゴルフコース品定め。」川田太三 ゴルフダイジェスト社