そもそも「シード権」て何? プロゴルファーが目の色を変えて取りにくる理由 | e!Golf(イーゴルフ)|総合ゴルフ情報サイト

そもそも「シード権」て何? プロゴルファーが目の色を変えて取りにくる理由

毎年、プロゴルフツアーが大詰めになると話題になる賞金王・賞金女王争い。一方で「シード権争い」にも注目が集まる。プロゴルフでの「シード」とは何を指すのか、それがいかにプロゴルファーにとって重要なものなのか、解説していきます。

出場順位を決定する厳しい戦い「QT」に回らずに済む

 秋も深まり、日本のプロゴルフツアーのシーズンが終わりに近づいている。それと並行してたびたび報じられるワードが「賞金女王(王)争い」と「シード権争い」だ。

賞金ランキング60位の高木優奈は最も厳しい状況に置かれる選手。今年のプロテストで不合格となったため、シードが取れなければQTにも出場できない

「シード」という言葉はスポーツの世界でよく使われるが、競技によって少しずつ意味が異なる。プロゴルフツアーの場合は、基本的に翌年の出場権のことを「シード」と呼んでいる。

 ゴルフは屋外で行われるスポーツのため日照時間にもよるが、1つの試合に出場できる選手の数は限られる。女子ツアーの場合、原則として1年に1度(今年はコロナ禍の影響で昨年延期になった分と合わせて2度)のプロテストに合格した者だけが受けられるQT(クォリファイングトーナメント)という“順位戦”の上位に入れば、ほとんどの試合に出られる。ただし、より調子の良い者が試合に出られるように、シーズン途中でリランキングと呼ばれる出場順位の入れ替えが行われている厳しい状況だ。

 このQTに出場しなくても試合に出場できるのが「シード選手」だ。

賞金ランキングかメルセデス・ランキングで50位まで

 この基本となるのが、前年、どれだけ賞金を稼いだかを競う賞金ランキング。女子のJLPGAツアーの場合、シーズン終了時点で50位までに入れば、特別な試合以外、すべての試合に出場できる。ただし、賞金額が試合によって大きく違うことから、今年はこれにポイント制のメルセデス・ランキング50位までの者も、いわゆる「賞金シード」と同じ出場権が与えられる。メルセデス・ランキングとは、JLPGAツアーの各競技及びUSLPGAメジャー競技での順位をポイントに換算し、年間を通じての総合的な活躍度を評価するランキングだ。

 メルセデス・ランキングのポイントは試合の結果によるものだから、順位は比較的同じようになるものの、前述のように賞金額の多い少ないがあるため、違いも出てくる。今年に関してはどちらかで50位以内に入ればよい。

「賞金シード」以外にも、通算30勝以上の選手が得られる「永久シード」や、公式戦優勝や賞金女王、メルセデス・ランキング1位で得られる「複数年シード」「(下部の)ステップ・アップ・ツアー賞金ランキング上位2名」など、いくつかの出場権がある。これにQT上位の者、さらに主催者推薦の選手も加わって、各大会が行われる。

 マンデー(3日間競技の場合チューズデー)などと呼ばれる大会直前の予選会などは、主催者推薦枠を争うもの。アマチュア選手が出場している場合もこの主催者推薦が使われる。

1円単位の僅差でも50位と51位は天国と地獄

 2020年は、コロナ禍で多くの試合が中止になったため、今季は2021年と合わせた異例のロングシーズン。賞金シードの明暗を分けるボーダーラインもいつもより大きな金額となっており、3000万円稼いでも賞金ランキングではシードが取れないという厳しい戦いとなっている。

 試合では優勝以外は同スコアの順位は同じになるため、例えば2位タイが4人いれば、2位から5位までに与えられるはずだった賞金を足して4で割ることになっている。獲得賞金額が1ケタまで細かいのはそのためだ。当然のことだが、賞金シードは1円単位の争いになることも考えられるし、実際、僅差で明暗が分かれる場合も少なくない。

 賞金シードを失っても51位から55位まで(メルセデスランキングも同様)の者は、翌年の序盤戦には出場できるが、QT上位の者と同様に、リランキング対象となる。リランキングまでの獲得賞金によって順位が入れ替えられ、稼いでいなければその後の出場は苦しくなる仕組みだ。
ツアー活性化のための厳しいリランキングにさらされることなく、シーズンを通して戦えるのが「シード選手」の特権というわけだ。

 次週の最終戦、JLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップは今季の優勝者や賞金ランキング上位者などに出場が限られるため、シード権争いには泣いても笑っても今週で決着がつく。優勝争いとはまた違う胃の痛くなるような争いの行方も、気になるところだ。

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賞金ランキング48位 菅沼菜々 3373万2393円(メルセデス・ランキング52位) 写真:Getty Images
賞金ランキング49位 有村智恵 3201万1751円(メルセデス・ランキング48位) 写真:Getty Images
賞金ランキング50位 浅井咲希 3155万6260円(メルセデス・ランキング55位) 写真:Getty Images
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賞金ランキング52位 林菜乃子 3134万8258円(メルセデス・ランキング49位) 写真:Getty Images
先シーズン(2019年)には2勝を挙げて自己最高のシーズンを送りながら、今季はシード落ちの危機に追い込まれている柏原明日架 写真:Getty Images
黄金世代でプロ入り以来シードを確保してきた新垣比菜は、エリエールレディスで優勝が求められる極めて厳しい立場 写真:Getty Images
獲得賞金2億5256万6049円、メルセデスランキングは3735.60ポイントでともにトップに立つ稲見萌寧 写真:Getty Images
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メルセデスランキング4位(2674.36ポイント)、賞金ランキングは5位(1億7146万1189円)の西村優菜 写真:Getty Images
2413.47ポイントでメルセデスランキング5位につける西郷真央。賞金ランキングは1億7268万7891円で4位 写真:Getty Images
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