副賞に“高級車”が減ってきた事情 それでもトーナメントやプロをクルマ業界がサポートするワケ | e!Golf(イーゴルフ)|総合ゴルフ情報サイト

副賞に“高級車”が減ってきた事情 それでもトーナメントやプロをクルマ業界がサポートするワケ

メルセデス・ベンツやBMW、スバルなど、ゴルフトーナメントには自動車ブランドが主要協賛社となっている例が多く見られます。さらには、選手個人をスポンサードすることも少なくありませんが、そこにはどんな事情があるのでしょうか?

特に高級車ブランドにとって、ゴルフファンは最高のターゲット

 自動車ブランドがゴルフトーナメントやプロゴルファーのスポンサーとなる例は少なくありません。

ゴルフ5レディス優勝でトヨタ「アクア」のニューモデルをゲットした吉田優利 写真:Getty Images

 例えば、11月11〜14日にかけて開催された伊藤園レディスゴルフトーナメントでは、トヨタ「カローラクロス ハイブリッド」が副賞として用意され、また、11月4~7日にかけて開催されたTOTOジャパンクラシックでは、優勝した古江彩佳選手が見事メルセデス・ベンツ「CLA」を手に入れています。

 このように、自動車ブランドが大会のスポンサーとなり、クルマを提供するゴルフトーナメントは少なくありません。

 さらに、選手個人をサポートする例も多く見られます。例えば、レクサスが2014年から松山英樹選手と所属契約を結んでいるほか、メルセデス・ベンツ(日本法人)は稲見萌寧選手をはじめとした多くの女子プロゴルファーをサポートしています。

 それ以外にも、メルセデス・ベンツの日本法人は、日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)や日本ゴルフツアー機構(JGTO)のオフィシャルパートナーとして、ゴルフ界全体へのサポートもしています。

 このように、自動車ブランドとプロゴルフ界は切っても切れない関係にあると言えますが、その背景にはどんな事情があるのでしょうか?

 まず一般的な話としては、プロゴルフのファン層と自動車ブランドがターゲットにする層が非常にマッチしているという点が挙げられます。

 人生の中でも最も高額な買い物のひとつであるクルマは、新車の場合は安くても150万円〜、高級車ブランドともなれば1000万円を超えることも珍しくありません。

 高額車となればなるほど、そのターゲットも限定されるので、テレビCMなどで多くの人にアピールするよりも、ターゲットが密集しているところにアプローチすることが重要となります。

 そんな中、高級車のメインターゲット層である30〜60代の富裕層の男性をファンとして多く抱えるプロゴルフツアーは、ブランドをアピールするのに絶好の場だと言えます。

 また、ゴルフトーナメントに関心の強い人は実際にゴルフをプレーする場合も多く、ゴルフ場への移動はクルマで行うことがほとんどであることから、ゴルフファンにはクルマのユーザーが多いことが容易に想像できます。

 このように、ゴルフファンは自動車ブランド、特に高級車ブランドにとってのターゲットと重なる部分が大きいため、ゴルフトーナメントやプロゴルファーへのスポンサードは大きな意味があると言えます。

若者へのアプローチの場としてもゴルフが有効に?

 要するに、ゴルフファン=富裕層という点が、特に高級車ブランドがゴルフトーナメントやプロゴルファーをスポンサードする大きな理由のひとつです。

 これは高級車のマーケティングを行う人からすれば長らく常識とされてきたことでもありますが、近年では少し事情が変わりつつあるようです。

 自動車業界に詳しいある広告代理店関係者は次のように話します。

「ここ数年、ゴルフ場へ足を運ぶ20代が相対的に増えつつあります。その背景には、コロナ禍で海外旅行などが制限される中、“密”が避けられるゴルフ場に注目が集まっていることや、これまでメインユーザーとなっていた年配層が自粛ムードで外出を控えていること、そしてそれを受けて多くのゴルフ場が若年層や初心者層へのサービスを強化していることなどが挙げられます」

「一方、自動車ブランドの多くは、いかに若年層に興味を持ってもらえるかという点を課題としています。少子高齢化が進む日本では、クルマを買える余裕のある20代へアプローチしなければ、先細りになってしまうことは明らかだからです」

「もちろん、クルマは高価なものですから、20代であれば誰でも良いわけではありません。ある程度の収入に加え、どうせクルマを買うならちょっといいクルマに手を伸ばしてみようというマインドも重要です。その点、やはりゴルフに関心のある層は、自動車ブランドから見ても最高のターゲットであると言えます」

 実際に、最近のゴルフトーナメントの副賞となるクルマは、上述したカローラクロス以外にも、ホンダ「ヴェゼル」やスバル「フォレスター」など、いわゆる高級車ではない、20代でも手の届きやすいクルマが並びます。

 高級車の代名詞と言えるメルセデス・ベンツでも、ゴルフトーナメントの副賞としているのは上述のCLAのほかに「Aクラス」や電気自動車(EV)の「EQA」など、ラインナップの中でも最もコンパクトなモデルが多くなっています。

「若者のクルマ離れ」が叫ばれる昨今ですが、クルマを購入できる20代は決して少なくありません。近年では、自動車ブランドがそうしたターゲット層にアプローチできる場としても、ゴルフトーナメントやプロゴルファーへのスポンサードが行われているようです。

※ ※ ※

 ゴルフトーナメントやプロゴルファー側からしても、スポンサーによるサポートは必要不可欠です。そういう意味でも、自動車業界とゴルフ界は切っても切れない関係にあると言えそうです。

この記事の画像一覧へ(5枚)

画像ギャラリー

稲見萌寧 写真:Getty Images
柏原明日架 写真:Getty Images
吉田優利 写真:Getty Images
金澤志奈 写真:Getty Images
ゴルフ5レディス優勝でトヨタ「アクア」のニューモデルをゲットした吉田優利 写真:Getty Images

最新記事