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- 2019年台風15号被害の象徴・市原ゴルフガーデン練習場は今?
千葉県に甚大な被害をもたらした2019年の台風15号。その台風被害の象徴として扱われたのがゴルフ練習場・市原ゴルフガーデンです。災害の初期から現場に入って取材を行った日本ゴルフジャーナリスト協会会長の小川朗氏が、同練習場の跡地の今を取材しました。
鉄柱倒壊から2年2か月、そこには新しい街ができつつあった
「最初は困り果てましたけど、時間につれて新しい建物も出来てきて、今はホッとしています。でも、ゴルフ練習場を一生懸命やっていた頃を思い出して、一抹の寂しさを感じることもありますね。常連さんもいましたから」
千葉県市原市五井にあったゴルフ練習場「市原ゴルフガーデン」の元オーナー・渡邉陽子さんは、ちょうど練習場打席のあったところに建てられたドラッグストアを見つめて、ため息をつきました。
かつては朝6時から夜10時まで営業し、その後に1時間かけてボールを回収。渡邉さんにとっても、その練習場は生活の一部でもあったのでしょう。
しかし渡邉さんは周辺住民に多大な迷惑を与えた練習場の責任者として、厳しく追及される立場でもありました。2019年9月9日、千葉県を襲った台風15号の甚大な被害を伝える上で最も衝撃的であったのが、市原ゴルフガーデンの鉄柱が倒壊した映像でした。
この日、千葉市では観測史上1位の瞬間最大風速57.5メートルを記録しています。30~40メートルの鉄柱13本は、大量の雨を含んで重量を増したネットが強風に引っ張られ土台から倒壊。住宅街の屋根を突き破り、駐車していた複数の車両を押し潰したのです。けが人も出る深刻な状況が、現場では起きていました。
報道を目にした解体会社「フジムラ」が無償で鉄柱の撤去を申し出ましたが、撤去時の2次被害が起きた場合の補償を懸念する声もあり調整は難航します。また、被害者が最初のオーナー側代理人に対して早い段階から不信感を抱き態度を硬化させるなど、難題が次々に噴出。事態の行方は混とんとした状況に陥りました。
それでもフジムラは無償撤去の姿勢を崩さず、最終的には住民側もその方針に賛同。作業は当初の予想を上回るスピードで進み、倒れていた鉄柱を撤去。倒壊しなかった残りの鉄柱と防球ネットもオーナー側が費用を負担する形で取り除かれ更地となりました。
一方、千葉県弁護士会紛争解決支援センターによる災害ADR(災害を原因としたトラブルを弁護士が間に入って解決する手続)も成果を上げ、昨年12月に決着を見ています。最初の弁護士が解任された後を引き継いだオーナー側の秋野卓生弁護士も「千葉県弁護士会の皆様の仕事ぶりが素晴らしかった。こちらとしては感謝してもしきれない気持ちです」と、交渉の結果に胸をなでおろしていました。
「新しい住宅地にいるような、いい感じになってきました」
道に面した約2000坪が商用地として再開発され、すでに美容院がオープン。この後も商業施設が複数開店していくとのことです。
「美容室に続いてドラッグストアと、あと2店舗がほぼ同時期にオープンする予定です」(事情をよく知る関係者)
被害者の一人である松山高宏さんは「周りも新築の家が増えて、新しい住宅地にいるような、いい感じになってきました。美容室もすでにオープンしましたし、ドラッグストアが開くと、もっとにぎやかになって、相乗効果で良くなっていくと思います」と、明るい見通しを話してくれました。
一方で、松山さんは市原ゴルフガーデンを利用していたゴルファーの一人でもありました。
「練習場がなくなり、台風が来ても恐怖感もなくなって住みやすい街並みになりました。でも私にとっては、歩いていける便利なゴルフ練習場だったことも確か。ネットの修理やペンキの塗り替えをしていたのも見ているし、渡邊さんが毎日、遅くまで(受付業務などを)やっていらっしゃったのも知っている。だからこそ、(強風時に)ネットが下せるように改良していれば、まだ何年もできていただろうに、とも思いますね」
今、最も大事なことは“第2の市原ゴルフガーデン”を出さないこと。高い確率でやってくるであろう次の激甚災害に備えるため、今のうちに全日本ゴルフ練習場連盟などゴルフ業界が一丸となって呼び掛けて、設備の再点検と安全対策に舵を切るべきです。
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