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- R・マキロイがカーボンニュートラル実現のために払う「お金」の意味【舩越園子の砂場Talk】
今やワールドクラスのトッププレーヤーにとって欠くことのできない移動手段となっているプライベートジェット。多用する1人でもあるローリー・マキロイは常々少人数で乗ることに罪悪感を持っていたという。そんな彼が“できること”として選んだ環境への取り組みとは?
「僕がプライベートジェットに乗るたびに、これまで以上にたくさんお金を払う」
欧州ツアー最終戦、DPワールド・ツアーチャンピオンシップ最終日。単独首位に立ちながらも終盤に崩れて勝利を逃がした北アイルランド出身のローリー・マキロイは、悔しさを抑えきれず、着ていたゴルフシャツを着たまま引き裂くという驚きの行動に走り、プロ意識の欠如を指摘される事態になった。
思わず取ってしまったその行動は、もちろん褒められるものではない。だが、それとてマキロイの人間性のすべてを物語るものではない。むしろマキロイは、日ごろから自分がトッププレーヤーとしてどうあるべきかをあれこれ考え、行動している選手の筆頭である。
そして、このDPワールド・ツアーチャンピオンシップが、スコットランドのグラスゴーでCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)が開催された直後だったこともあり、大会開幕前の会見ではマキロイに「カーボンニュートラルをどう思うか?」という質問が投げかけられ、周囲は固唾を飲んでマキロイのリアクションを見守った。
すると、マキロイはまるで準備していたかのように、彼なりの考えを饒舌に語った。その内容が、大きな話題になっている。
今さら説明する必要はないと思うが、カーボンニュートラルとは「温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させること」。平たく言えば、地球を汚した分だけキレイに戻し、プラマイゼロに戻すこと。それができたなら「カーボンニュートラルを達成できた」という表現になる。
マキロイがカーボンニュートラルを意識したのは2年前。2019年の世界選手権シリーズ、HSBCチャンピオンズ優勝後、上海から米フロリダ州の自宅へ戻る帰路のプライベートジェットの中だった。
「乗っていたのは僕1人だけで、これって途轍もなく(地球環境に対して)悪いことをしている気がして大きな罪悪感に襲われた」
思い悩んだマキロイは、英国に本拠を置くサステナブルなゴルフのための環境保護団体、GEOファウンデーションに相談し、自分には何ができるのか、どうしたらいいかを一緒に考えたそうだ。
そして、マキロイが見い出した解決策は「お金」だった。
「僕がカーボンニュートラルを達成するためにできることは、プライベートジェットに乗るたびに、これまで以上にたくさんお金を払うこと。それが真剣に考えて得た『僕にできること』だ」
米ゴルフダイジェスト誌によれば、マキロイは年末までに15万ポンド(約2300万円)を支払うことで「僕は今年、カーボンニュートラルを達成できる」と試算しているという。
世界を転戦するトッププロにとってプライベートジェットは不可欠
これを聞いて、「なんだ、お金で解決かい?」と眉をひそめた方々もいるようだ。しかし、何もしないことに比べれば、お金は立派なソルーションの1つだと評価されて然るべきだ。
折りしも、COP26で議長国を務めた英国は、カーボンニュートラルへの取り組みが大幅に遅れている南アフリカに、まさに「お金」を渡し、そのお金で南アがさまざまな技術を導入してCO2を削減できるよう支援することを発表。英国が「お金」で南アを支援することが「英国のカーボンニュートラルへの貢献」とカウントされることも参加国の間で確認された。
これは、100点満点の完璧な解決策を模索することに時間と労力を費やすより、まず確実にできることを行なうことで前進していこうという姿勢であり、おそらくマキロイは、英国が示したこのソルーションをヒントにしたのではないかと私は思う。
理想と現実には往々にして大きなギャップがあり、「言うは易し、行なうは難し」だ。プライベートジェットに単身で乗ることが地球環境を汚染している、破壊につながると思うのなら、「プライベートジェットを使用することをやめればいい」というのは理想論だ。
タイトなスケジュールの下で世界各国を転戦し、大きな時差もある中で、心身を酷使しながら熾烈な4日間72ホールを戦うトッププレーヤーにとって、プライベートジェットでの移動は、もはや不可欠と言っていい。それなのにプライベートジェットを使うことをやめて民間の航空会社の飛行機を使い始めたら、体力的にもスケジュール的にも大きな影響が及ぶことは明らかだ。
本業にダメージが出ることを無理に行なうのでは本末転倒。自分にできることをできる範囲で行なうことでカーボンニュートラルを達成するためには、どうしたらいいかと考えたとき、マキロイは「それは、お金を払うことだ」という答えを見つけた。
そういう「お金」は、彼なりの立派な解決策だと言えるのではないだろうか。
第一歩をマキロイが踏み出したと考えれば、意味のある「お金」
マキロイのカーボンニュートラルへの貢献度を、私なりにポイント評価させていただくなら、自分がプライベートジェットを使用すること等で自分の行動がもたらす地球へのネガティブ効果を意識したところは30点、そのネガティブをポジティブに変えるために「お金」を払うという解決策を実行に移したところは30点というところだろうか。
望むらくは、せっかく支払うお金をプライベートジェット代に上乗せするのみならず、「あれに使ってほしい」「これを購入してほしい」という具合に、具体的な使途まで提案できたら、さらに30点追加して合計90点ぐらいの高評価になるのだと思う。
マキロイ1人が無理して100点満点を取ろうとする必要は、おそらくない。ゴルフ界におけるカーボンニュートラルの先駆けという意味では、60点でも十分素晴らしく、それが90点ぐらいまで高まれば、もはや言うことなしだ。
マキロイの取り組みに刺激を受け、これまで考えたこともなかったカーボンニュートラルへの取り組みを意識する選手が、今後、仮に10人現れてくれたら、30点×10人で300点分の貢献になる。
いつしか、その点数が何千点、何万点、何百万点になれば、それこそがゴルフ界全体のカーボンニュートラルへのビッグな貢献となって広がっていく。
そのための第一歩をマキロイが踏み出したと考えれば、彼が払おうと決めた「お金」は「素晴らしいお金」になる。
できることから始めよう――ゴルフ界でも、このフレーズが合言葉になってくれたらいいなと思う。
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