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コラム

渋野、古江が挑戦する米女子ツアーを、単純に「アメリカすごい」とは言えない理由【舩越園子の砂場Talk】

2021.12.01 舩越園子(ゴルフジャーナリスト)
古江彩佳 渋野日向子 砂場Talk(バンカートーク)

12月2日から始まるQシリーズ(米ツアー最終予選会)。日本からは渋野日向子と古江彩佳が計8ラウンドに及ぶ出場権の過酷な争奪戦に挑戦するが、勝ち抜いた先にあるのは本当に“夢舞台”なのか、はたまた“厳しい戦場”なのか、在米ゴルフ記者歴25年の舩越園子氏が考える。

米女子ツアーの盛り上がりはようやく戻ってきたところ

 日本の女子ツアーは稲見萌寧が初の賞金女王に輝き、僅か約845万円差で女王の座に手が届かなかった古江彩佳は、これから米女子ツアーの予選会に挑むという。その予選会には渋野日向子もチャレンジする予定。

今年の全米女子プロ出場時の渋野日向子 写真:Getty Images

 果たして、彼女たちの目には、目指している米女子ツアー(米LPGA)がどんなふうに映っているのかが、とても気になる。

 スター選手ばかりが集う夢のような場所に見えているのか。はたまた、厳しい戦場のような場所だと感じているのか。

 ともあれ、米LPGAの現状をあらためて確認してみよう。

 つい先日、最終戦のCMEグループ・ツアーチャンピオンシップが終わり、日本人として史上2人目の米女子ツアー賞金女王になる可能性があった畑岡奈紗は、惜しくも1打差で優勝を逃がし、賞金女王の座も逃してしまった。

 大会を制し、賞金女王に輝いたのは韓国のコ・ジンヨン。彼女はロレックス・プレーヤー・オブ・ザ・イヤーにも輝き、華々しい成績で今季を終えた。

 ツアーチャンピオンシップの優勝争いには米国のネリー・コルダやニュージーランドのリディア・コも絡み、エキサイティングな戦いとなって大いに盛り上がった。

 コルダは今季前半戦が好調で、東京五輪では金メダルを獲得し、世界ナンバー1の強さを見せつけた。

 かつて15歳でツアー初優勝を挙げ、ティーンエイジャーのうちから数々の勝利を重ねてスターになったコは、その後は不調に陥っていたが、東京五輪では銅メダルを獲得。そして今季は自身初のベアトロフィー(年間平均ストローク1位)にも輝き、大復活ぶりをアピールした。

 実力も人気もトップクラスのスター選手たちが出揃い、手に汗握る熱い戦いを披露できた状況は「今、ようやく戻ってきた」と表現するのが妥当である。言い換えれば、ここ数年、どうも盛り上がりに欠けていたツアーが、やっと再び盛り上がり始めたと言えるだろう。

コロナ禍でメジャー大会が伝統の地を去らざるを得ない状況に

今年のAIG(全英)女子オープン出場時の古江彩佳 写真:Getty Images

 そんなふうに選手たちの顔ぶれが向上してきた一方で、気になるのはツアーの運営状況だ。この11年間、米LPGAを率いてきたマイク・ワン氏が今年、コミッショナー職を退き、USGA(全米ゴルフ協会)へ移籍した。ワン氏といえば、女子ゴルフのメジャー大会を5つに増やし、人気低迷が著しかった米女子ツアーの立て直しに尽力してきた立役者だ。

 そのワン氏が退き、新たにコミッショナーに就任したのは、モリー・マーコックス・サマーン氏。彼女はゴルフ界の出身者ではないが、スポーツビジネスには明るい人物だ。これからサマーン氏がどんな采配を振るうのか次第で、米LPGAの未来は様変わりする。

 言うなれば、米LPGAは今は不安定な過渡期にあり、これから先の将来未来がどうなっていくのかは未定の状態だ。しかし、未定ということは、未知数ということでもあり、ポジティブに眺めれば、多大なる可能性を秘めていると見ることもできる。もちろん、その逆も起こりうる。

 メジャー5大会の1つ、シーズン最初のメジャーとして親しまれてきたANAインスピレーションは、来年からはシェブロン選手権に変わり、戦いの舞台は来年までは従来通り、カリフォルニア州ランチョミラージュのミッションヒルズCCで開催される予定だが、2023年以降はシェブロンのお膝元であるテキサス州ヒューストンへ移されることが決まっている。

 ミッションヒルズの18番グリーンの池に優勝者が飛び込むあの儀式を見ることができるのは来春が最後。ミッションヒルズでの51年の歴史に幕を下ろすことは、米女子ゴルフの長年のファンにとっては、さびしく感じられる出来事であろう。

 なぜ、そんなさびしい出来事が起こるのかと言えば、最大の原因はコロナ禍によるさまざまなダメージだ。昨年、米LPGAの大会はアジアで開催予定だった3試合が中止となり、そのダメージが米国開催の試合にもさまざまな影響をもたらした。

 そもそも米LPGAを立て直す段階で、ゴルフに熱狂的なアジア市場とアジアンマネーに大きく依存してきた米LPGAにとって、アジアがコロナ禍で窮することは、そのまま米LPGAが窮することを意味しており、ANAインスピレーションが大会名も戦いの場も変更せざるを得なくなったことは、その典型例と言っていい。

米国より恵まれた環境の日本をあえて出る意義をどう考えるか

 そんなふうに米LPGAは日本やアジア諸国の経済に大きく左右される状態であり、しかもトップ交代劇で揺れ動いている。その一方で、日本の女子ツアー(JLPGA)は、スポンサー獲得に苦悩することもなく、試合数も賞金額も増え、次々にスター選手が出現し、ファンも増大中で、何から何まで、いいことづくめだ。

 技術レベルだって、日本の女子選手のそれは米ツアーの選手たちと遜色ないどころか、上回っている部分が多々あると私は思う。

 試合会場におけるツアーや大会側の気遣いや配慮も、米女子ツアーのそれを間違いなく上回っており、選手たちは何不自由なく快適に過ごせているはずだ。

 強いていえば、米女子ツアーにあって日本の女子ツアーに無いのは、デイケア(託児所)だけではないだろうか。

 それほど恵まれた良き環境である日本の女子ツアーをあえて離れ、米女子ツアーを目指すのであれば、選手には、それ相応の自分なりの意味や意義をしっかり見出した上で、覚悟を決めて臨んでほしい。

 在米25年を経て日本に戻った私だからこそ、あえて言わせてもらいたい。もはや今は「アメリカならスゴイ」「アメリカだからスゴイ」というわけでは決してない。むしろ日本の女子ツアーのほうが「スゴイ」ところは多いと言っても過言ではない。

 それでもなお、今後、米女子ツアーを目指すという選手には、「なぜ、それでもアメリカなのか?」を熟考してから決断してほしいと、あらためて思う。

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