ツアー2勝の大ブレークからもうすぐ10年 堀奈津佳の現在地 | e!Golf(イーゴルフ)|総合ゴルフ情報サイト

ツアー2勝の大ブレークからもうすぐ10年 堀奈津佳の現在地

2013年、20歳で国内女子ゴルフツアー2勝を果たした堀奈津佳。絶頂期もつかの間、15年にシードを落としてからは、長らくスポットライトから遠ざかっている。来年で30歳を迎える堀奈津佳の今を追った。

再起をかけて2年前に都内へ拠点を移動

「昔は30歳でゴルフをやめようと思っていたんです。来年30歳になるので、まだまだ先ですね(笑)」

「かわいそうな人みたいに見ないでください」と笑顔でインタビューに答える堀奈津佳

 堀奈津佳はそう言って笑っていた。2年前に都内に越してきたが、徳島県生まれで、兵庫にもいたことで「おいしいうどん屋が東京にはなかなかないんですよ!」とまた笑う。

 シーズンが一段落してホッとしているのもあるだろう。ただ、長らく表舞台から遠ざかっていることもあり、久しぶりの対面でどんな表情を見せるのかが心配だった。

「かわいそうな人みたいに見ないでくださいよ!(笑)。私は元気にやっています。それに少しずつゴルフはよくなってきているんですから」

 少しずつ自分のゴルフに光が見えてきたことは、その明るい表情からよく伝わってきた。

 堀は今季(2020-21年)、下部のステップ・アップ・ツアーを主戦場にしていたが、出場権を持たないJLPGA(レギュラー)ツアーに10試合に出ている。すべてスポンサー推薦枠での出場だ。

「プロ入りしてからも変わらずスポンサードしてくれている会社が多く、今も私に期待してくれていることにはすごく感謝しています。だからこそいい姿を見せたい。プロセスも大事ですが、やっぱり結果でしか恩返しできないと思っているので……」

 プロゴルファーである以上、成績と結果で自分の存在を示すしかないことは、ツアーで優勝している立場だからこそよく分かっている。堀は2013年にツアー2勝して以来、優勝から遠ざかり、15年にシードを落としたあと浮上のきっかけをつかめずにいる。

「ボールが曲がるのを許せなかった」

 アマチュア時代はナショナルチームにも選ばれ、11年にはプロテストに一発合格。レギュラーツアー本格参戦となった12年はシードこそ獲得できなかったが、ステップ・アップ・ツアーで2勝。13年には年間2勝して、賞金ランキング10位に入ると一気にスポットライトを浴びた。

 実は1992年生まれの女子プロゴルファーには堀をはじめ、成田美寿々、葭葉ルミ、福田真未、香妻琴乃、東浩子などツアー優勝者とシード選手がひしめいていた。

 そんなライバルたちの中で堀は、プロ入り後すぐに頭角を現した一人だった。しかし、13年に年間2勝した翌14年からゴルフがおかしくなった。同年は賞金ランキング44位でシードを保持したが、15年は30試合に出場して予選落ちが23試合と棄権が1試合でシードを落としている。

 堀はその原因についてこう切り出した。

「もっとゴルフを良くしたい。もっとショットの精度を上げたいっていう欲が出てきたんです。もっとうまくならなきゃダメだって思い始めると、練習もストイックな方向に向き始めるんです。曲がることも許せなくなったというか……。周囲の選手にも負けたくないってずっと思っていました」

「コーチのアドバイスも聞こえなくなっていた」

 初優勝、2勝目を手にしたのが20歳の時。勢いと負けん気の強さが若手の持ち味とも言えるが、それが前面に出ると少しのミスも許せなくなってしまった。

 技術の向上を追及するがあまり、スイングが狂い始めると、ドライバーからアイアンまで、ショットが右へ左へと飛び始めた。

「周囲ではたくさんの方や中島敏雅コーチもアドバイスをしてくれたのですが、そうした声も聞こえなくなっていたんです。なんとかしなきゃいけないって焦りはじめると、もうどうすればいいか分からない状態になっていました。ボールが曲がるので一緒にプレーしている人にも申し訳ない気持ちになって、その日の試合が終わってホテルに戻ると本当に動けなくなっていました」

 そんな日々を過ごしていくうちに、堀はこんなことを思うようになった。

「あ、もう自分はプロゴルファーではなくなってしまったのかな。もう辞めなければいけないんだなって……」

 朝、起きて試合会場に行きたくないと思ったことも1回や2回ではない。

「数カ月クラブを握らなかった日もあったし、人前で我慢はしても、部屋に帰って一人で泣いていたこともありました」と辛い日々を送っていた。

 それでもゴルフを辞めるという決断には至らなかった。

「試合に出ることをやめたら二度と出られないような気がしたんです。私を試合に出るように支えてくれる人たちには、調子が悪いながらも、1打でもいいスコアで上がれるようなパフォーマンスをするべきだと思うようにしたんです」

3年11カ月ぶりの予選通過を果たした2021年

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