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- エプソンがスポンサーとして手を差し伸べた米女子下部ツアー転戦の厳しい現実【舩越園子の砂場Talk】
エプソンが米女子下部ツアーのスポンサーとなった。エプソンは向こう5年間、同ツアーのタイトルスポンサーを務める契約を結びましたが、その内容が「ゴルフ愛」にあふれているとゴルフジャーナリストの舩越園子氏は語ります。
米女子下部ツアーが今季からエプソンツアーに名称変更
今年1月末に、米女子ツアー(LPGA)の下部ツアーの名称が、これまでのシメトラツアーからエプソンツアーに変わったことが発表された。
言うまでもなく、ツアーの名称変更はスポンサー企業が変わったことを意味しており、エプソンは向こう5年間、同ツアーのタイトルスポンサーを務める契約を結んだ。
その発表が、米国のみならず世界のゴルフ界で、なかなかのビッグニュースとなったことには、それなりの理由がある。
ただ単にスポンサーがある企業から別のある企業へ変わっただけなら「ふーん」と頷くだけかもしれないが、エプソンが示したスポンサードの姿勢には、金銭的な支援のみならず、若き女子選手たちとゴルフ界への「愛」が感じられる。
だからこそ、エプソンツアーの名が冠された米女子下部ツアーの新たな船出に大きな期待が寄せられている。
米女子プロゴルフ界の歴史をちょっぴり振り返ってみると、いわゆる「1軍」のLPGAで戦うことを目指し、腕を磨くための下部ツアーが創設されたのは、驚くなかれ、今から42年も前のことだった。
とはいえ、最初は下部ツアーではなく、草の根のミニツアーだった。1981年、フロリダ州で立ち上げられた「タンパベイ・ミニツアー」が、その始まりだった。
同ツアーは2年後にはフューチャーズツアーと改名され、LPGAとはライセンシー契約を結んだ。
99年、フューチャーズツアーはLPGAの下部組織的な位置づけへ格上げされ、同ツアーの賞金ランキングでトップ3になったグレース・パークなど3人が、下部ツアーからLPGA出場権を手に入れた史上初の選手となった。
正式にLPGA傘下の下部ツアーとなったのは2007年からで、その後、同ツアーは名称をさらに2度ほど変更した後、12年からはシメトラツアーの名で親しまれてきた。
試合ごとに支払う500ドルのエントリーフィーが大きな障壁
それから10年が経過した今年1月、新たなタイトルスポンサーになったのがエプソンだが、それがビッグニュースとして扱われた最大の理由は、エプソンが示したゴルフとゴルファーへの「愛」である。
エプソン・アメリカのキース・クラツバーグCEOをはじめとする同社の役員たちは、女子選手たちの現実や実情をしっかり拾い上げた上で、こんな言葉を口にした。
「下部ツアーで戦うことは、とてもお金がかかること。若き女子選手たちのニーズに応え、ともに歩むことは、私たちエプソンの誇りであり、喜びでもある」
「ただ単にツアーにエプソンの名前を冠するだけではなく、私たちは女子選手たちの夢の実現のために投資したい」
日本のプロゴルフ界には「所属」というシステムがあるが、米国に「所属」というものはなく、プロ転向したばかりで知名度も実績もない選手たちの立場は非常に脆弱だ。貯金もなく、スポンサー契約もない若い選手たちにとっては、下部ツアーで試合に出るたびに支払う500ドルのエントリーフィーが大きな障壁になっている。
そんな現実を知ったエプソンは、各大会の賞金総額をほぼ倍増させ、20万ドルまで引き上げると同時に、まずはエントリーフィーをどこまで引き下げられるかに挑んでいくという。
当面は10%引き下げて450ドルになる予定だが、エプソンは「あと4社と協力して調整中」とのことで、近いうちに、ほぼ半額の250ドルまで引き下げられる見込みだそうだ。
下部ツアーでの下積みを終え、いざLPGAへランクアップできたとしても、最初のうちは全米規模の転戦費用といった高額経費が賄えず、困窮するヤングプレーヤーも多いと知ったエプソンは、「エプソンツアー・アンバサダー・プログラム」を立ち上げ、下部ツアーの賞金ランキングでトップ10に入った選手には、LPGAで戦うためのスタートアップ費用、つまりは「支度金」として1万ドルを授けるという。
選手たちが何に困り、何を求めているか、どうしたら本当の意味で助けになることができるかを、具体的に探り、しっかり考え、実行に移してくれている。
それは、とてもありがたいことであり、「愛」がなければできないことでもある。だからこそ、エプソンが下部ツアーのタイトル・スポンサーになったというストーリーは、ビッグニュースとなって世界を駆け巡ったのだと私は思う。
金メダリスト、ネリー・コルダも下部ツアー出身
下部ツアーを経てLPGAにデビューし、大きく花開いた選手は枚挙に暇がない。かつての女王、メキシコ出身のロレーナ・オチョアも下部ツアーで腕を磨いた時代があった。韓国出身のインビー・パークも、オーストラリア出身のハンナ・グリーンも、そうだった。
これまで下部ツアー出身者がLPGAで勝ち取ったタイトル総数は、実に458タイトル。通算600人が勝利に輝いた。昨季だけを見ても、下部ツアー出身選手9人が合計12のタイトルを射止めた。
今をときめくネリー・コルダもその1人だ。シメトラツアーで過ごした下積みの日々があったからこそ、彼女は昨季4勝と東京五輪の金メダルを手に入れるまでに成長することができたのだろう。
そういう選手たちを、もっと下部ツアーから輩出するためにはどうしたらいいのかと考えたとき、エプソンはツアー全体を資金面で支えつつ、個々の選手の現実的なニーズに応えるべく、きめ細かな支援を申し出た。
「未来のゴルフ界の担い手を育てる」「プロゴルファーを育成する」とは、こういうことなのだと頷かされる。
“エプソン育ち”の若き女子選手たちが、やがてLPGAで活躍し、素晴らしきチャンピオンとなって輝く日は、きっと近いうちにやってくる。
その日が、今から楽しみでたまらない。
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