- ゴルフのニュース|総合ゴルフ情報サイト
- 記事一覧
- コラム
- 「米・欧両ツアーVSサウジ勢力の新ツアー」無益なチキンレースから先に降りるのは?【舩越園子の砂場Talk】
「米・欧両ツアーVSサウジ勢力の新ツアー」無益なチキンレースから先に降りるのは?【舩越園子の砂場Talk】
米・欧両ツアーVSサウジからの新勢力。ゴルフ界を揺るがしている争いが目に見える形で具現化したのが先週だ。高額賞金を背景に有力選手が大挙出場したサウジに対して、伝統のペブルビーチプロアマはやや寂しい大会に。果たして「チキンレース」の行方は?
有力選手がサウジに流れ、寂しいペブルビーチに
「チキンレース」というものを、ご存じだろうか。相手の車に向かって一直線に車を走らせ、激突する寸前で先によけたほうをチキン(臆病者)とするレースのことで、米国では「チキンゲーム」「ゲーム・オブ・チキン」とも呼ばれている。

モノの本によれば、チキンレースとは「相手を屈服させようとして、互いに強引な手段を取り合う争い」(引用:デジタル大辞泉より)と記されている。
昨今の世界の男子ゴルフ界で繰り広げられている争いは「まさにチキンレースだ」。嘆き混じりのそんな声が海の向こう側から聞こえてくる。
莫大なサウジ・マネーをバックに付け、「SGL(スーパーゴルフリーグ)」なる新ツアー創設構想を打ち出しているサウジ勢力は、日々、その動きを加速させ、本格化している。
先週は、欧州ツアーの共催から外されて今年からアジアツアーの大会となったサウジインターナショナルが開催されたが、そこにはフィル・ミケルソンをはじめ、ダスティン・ジョンソンやザンダー・シャウフェレ、それに途中棄権となったもののブラインソン・デシャンボーの姿もあり、そうしたスター選手たちがこぞって不在となった米ツアーのAT&Tペブルビーチプロアマの顔ぶれは、いつになく淋しいものだった。
サウジインターナショナルは、当地の政府系投資ファンドであるパブリック・インベストメント・ファンド(PIF)が大会のタイトルスポンサーに付いたことを開幕直前に高々と発表。それは、欧州ツアーから切り離された同大会が、これからはむしろ拡大成長していくことを世界に告げる戦線布告のようなものだった。
PIFはグレッグ・ノーマンがCEOとして率いるリブ・ゴルフ・インベストメンツ(LGI)の親会社だ。そして、LGIはアジアツアーに総額3億ドル(約345億円)を投入し、年間10試合にわたるインターナショナルシリーズを創設することを発表。そのうちの1試合は、あえて欧州ツアー本部の目と鼻の先であるロンドン近郊のセンチュリオンクラブで開催されるという。
米ツアーの「埋蔵金」はサウジ・マネーに勝てるのか?
そうやって、ぐいぐい攻め込んでくるサウジ勢力に対抗する格好で、米・欧両ツアー側も次々に攻めの姿勢を打ち出している。
まず、米ツアー(PGAツアー)と欧州ツアー(DPワールドツアー)は戦略的提携を結び、ドバイ・マネーをバックに付けて土台固めを行なった。
そして、選手たちの新ツアーへの流出を阻止するために、米欧両ツアー側もマネーパワーに頼る施策を次々に考案、実施し始めた。
昨年、米ツアーにいつの間にか創設されていたプレーヤー・インパクト・プログラム(PIP)なる新ボーナス制度は、その1つだ。選手の人気やメディア等への露出度をランキング化し、トップ10に総額4000万ドル(約46億円)のボーナスを支給するというものだ。
その結果は、いまなお公表されていないのだが、ミケルソンは集計終了前から「1位になったのは僕だ」と公言。米メディアは「トップ2がミケルソンとタイガー・ウッズであることは確かだ」としているが、真偽のほどがいまなお不明というところが、どうもすっきりしない。
いずれにしても、1位には800万ドル(約9億円)、2位には600万ドル(約7億円)という具合に10位までにボーナスが支払われたとのこと。ちなみに、惜しくもトップ10入りを逃がし、11位になったとされるコリン・モリカワには1セントも支払われないそうで、彼は「馬鹿げている」と不快感を露わにしていた。
さらに今年からは、米ツアーに「プレー15プログラム」という新たなボーナス制度が創設されたのだが、その内容には少々驚かされた。「1シーズンで最低15試合出場すれば、5万ドルのボーナスを支給する」というものだが、15試合という基準は大半の選手が当たり前のようにクリアする数字であり、これは選ばれし選手に限定的に支給する特別なボーナスというより、むしろツアーメンバーみんなに配るベタ付けの支給金のようなもので、「ばら撒き」と言い換えても過言ではない。それを配ってでも、1人でも多くの選手を引き留めたいという米ツアーの悲痛な想いがうかがい知れる。
フェデックスカップの年間王者に授けられるビッグボーナスも、以前は1000万ドルだったものが、昨季は1500万ドルに引き上げられ、今季は1800万ドルへ、将来的にはさらにアップすると言われている。
各大会の賞金も一層高額化され、今年のプレーヤーズ選手権の賞金総額は2000万ドルになる。
昔から「米ツアーには埋蔵金がある」と言われており、だから、こんなふうにボーナスや賞金を次々に選手たちに出すことができるのだなあと驚かされる。
しかし、そう思った矢先、今度はサウジ勢力が「我々は選手たちに20億ドル以上を投入するつもりだ」と明かしたことが米メディアによって報じられた。
20億ドルと聞いても、まるでピンと来ないのだが、日本円に換算すると約2300億円。こんな数字を出されると、果たして米ツアーの埋蔵金は、これを上回ることができるのだろうかと心配になる。
よけた側は本当に「チキン」なのか?
このチキンレースは、お互いの車が「お金」という燃料をつぎ込むたびにぐいぐい前進し、そうやってお互いが突進し合っているのだが、そのレースはゴルフそのものを競い合うものではもちろんない。
選手たちは、そのチキンレースを傍から眺め、どっちが勝つか、どっちにしようかと思案している。ファンや周囲の人間は、そうやってチキンレースを眺めて思案する選手たちの姿を、その外側から眺めていることになる。
レースの真っ只中にいる両サイドは、対岸を睨みながら直線上を突進することに必死ゆえ、本来なら見えるはずのものが往々にして見えなくなりがちだ。
損得勘定をしながらレースを見守る選手たちの中には、冷静さを失い、エゴを剥き出しにしている姿も見受けられる。
その筆頭と言えるのがミケルソンだ。彼は長年お世話になってきたPGAツアーのことを「欲深い」と批判するコメントまで口にしており、彼はもはやチキンレースを展開しているサウジ勢力側の車の上で「行け行け!」と声を張り上げているようなものだ。
「1打1打を打っているのは僕なのに、PGAツアーは僕の1打1打を利用して儲けている」
そんなミケルソンの言動を見て、彼こそが欲深いと感じている人は少なくないだろう。
そうやって選手たちを巻き込み、激化しているこのチキンレースは、やがてお互いが激突するのか、それともその寸前でどちらかが一直線上から横へそれるのか。
そうなったとき、横へよけた側は、決してチキン(臆病者)ではないと私は思っている。
最新の記事
pick up
ranking











