「3年前までマスターズを見たことがなかった」16歳が制したオーガスタ女子アマの“すごい可能性”【舩越園子の砂場Talk】

先週行われたオーガスタナショナル女子アマチュアは米国の16歳、アンナ・デービスの史上最年少優勝で幕を閉じた。女子アマチュアがオーガスタを目指せることは、男子も含めたゴルフ界全体にとって非常に画期的なことだ。

16歳のデービスが最年少優勝

 昨年、梶谷翼が優勝したことで、日本でもお馴染みの存在になったオーガスタナショナル女子アマチュア。今年は16歳の米国人、アンナ・デービスが大会最年少優勝を飾り、弾けるような笑顔を輝かせた。

オーガスタ女子アマで最年少優勝を果たしたアンナ・デービス 写真:Getty Images

 デービスはカリフォルニア州のハイスクールに通う2年生。全米ジュニアゴルフ協会の女子ランキング2位につけている彼女は、同大会初出場ながら、初日から首位タイにつける好発進。2日目は悪天候の中、76とやや苦しんだ。

 しかし、首位から2打差で迎えた最終日は、見事69で回り切った。すると、それまで首位を走っていた米国人のラタンナ・ストーンが上がり2ホールで崩れ、終わってみれば唯一のアンダーパーとなる通算1アンダーでホールアウトしていたデービスの逆転勝利となった。

「私は、まだまだ上達の途上にいるのに……。世界一になることは、子どものころからの夢だったので……。びっくりして言葉が出てきません」

 驚き混じりで喜ぶデービスだったが、印象的だったのは、彼女のこんな言葉だった。

「幼いころから、私はマスターズをテレビ観戦したことは一度もなかった。でも2019年にタイガー・ウッズが優勝したマスターズを観て感銘を受けた。このオーガスタナショナル女子アマを知ったのは去年でした。友達が出ていたので知って、次は私も出ようと思い、今年、初めて挑戦しました」

 初々しい女子アマチュアチャンピオン誕生の余韻が漂うオーガスタナショナルで、今週は世界のトッププレーヤーたちが競い合う男子のメジャー大会、マスターズが始まろうとしている。

 女子のアマチュアから男子のトッププレーヤーへと戦いの場が引き継がれること、そこに両者の接点ができていることは、実を言えば、ゴルフ界における画期的な変化であり、大きな前進なのだと私は思う。

みんなに夢を授ける

 オーガスタナショナル女子アマチュアは、マスターズを主催するオーガスタナショナルが「世界の女子の優れたアマチュアゴルファーたちに一流の舞台を提供し、素晴らしい戦いを披露してもらうことで、女子ゴルフの未来を築いていこう」という目的で、19年に創設した新しい大会だ。

 世界各国からやってきた72名は、マスターズ前週の水曜日と木曜日に近郊のチャンピオンズリトリートGCで2日間36ホールの予選を戦い、勝ち残った上位30名が土曜日にオーガスタナショナルで18ホールの決勝を戦う3日間54ホールの試合形式だ。

 特筆すべきは、水木の36ホールの予選と土曜日の18ホールの決勝の間の金曜日がオーガスタナショナルを回る練習日とされており、その貴重な機会は、予選落ちした選手にも授けられるという点だ。

 これは、予選の結果に関わらず、「72名の出場選手全員に夢を授けたい」というオーガスタナショナルの粋な計らいだ。

 今年は悪天候による不規則進行の影響で、オーガスタナショナルを回る練習ラウンドの時間が短くなってしまったが、それでも金曜日の午後には、全員がオーガスタナショナルにやってきて、夢のようなひとときを過ごした。

 これまでオーガスタナショナルは、未来のプロゴルファーを夢見る男子ジュニアや男子アマチュアにとっては憧れの場所であっても、女子ジュニアや女子アマチュアにとっては、自分がプレーしたり目指したりする場所ではないという意味では「遠い存在」だった。

 だが、オーガスタナショナル女子アマが創設され、出場者全員が必ずオーガスタナショナルでのラウンドを体験できる機会が設けられたこと、そこで決勝を戦えることは、これからの女子ジュニアや女子アマチュアたちがオーガスタナショナルを夢見ることへとつながっていく。

 少年少女が同じ場所を夢見てゴルフクラブを振ることで、そこには自ずと共感や親近感が生まれ、団結力や絆も生まれるだろう。

 そうやって芽生えた感覚や力が、やがては米ゴルフ界、ひいては世界のゴルフ界の統一感にもつながっていく。

 そして、オーガスタナショナルの存在が、男女の枠を超越して強まり、高められ、ゴルファーのシュライン(聖堂)となってそびえていく。

 オーガスタナショナル女子アマには、そうやってゴルフ界の未来を静かに、しかし広く大きく拓いていく効果が期待できそうで、「よく練られ、よくできた大会だな」と、つくづく感心させられる。

秘められたパワー

 ティーンエイジャーのデービスが最終日にバケットハットを被ってプレーしていたことも、ちょっとした話題になった。

 バケットハットとは、文字通り、バケツ型の帽子のこと。デービスは昨年7月の全米女子ジュニアPGA選手権に出場した際、あまりにも陽射しが強かったため、試合会場のショップで購入したバケットハットで顔をすっぽり覆うようにして戦ったところ、2位に7打差を付けて圧勝した。

 以来、バケットハットはデービスの「ラッキーハット」となり、「どの試合でも、試合中に1度はバケットハットを被ってプレーしています。家には、すでにバケットハットのコレクションがあります」。

 今大会では、両親がオーガスタナショナルのショップで数種類のバケットハットを購入。その中から一番気に入った白いバケットハットを被って最終日を戦い、見事、チャンピオンに輝いた。

 興味深かったのは、そんな彼女の姿を見たPGAツアー選手のジョエル・ダーメンがその後に取った行動だった。

 バケットハットがトレードマークのダーメンは、デービスの優勝を祝福する動画メッセージを送り、こう語りかけていた。

「優勝おめでとう。素晴らしいね。そしてキミもバケットハット軍団の仲間入りだ。これからの幸運を祈る。そして。どこかで会える機会を楽しみに待っているよ」

 この大会が創設され、素晴らしい女子アマチュア選手たちがオーガスタナショナルという特別な場所で熱い戦いを繰り広げることが、こうして男子のトッププロたちの興味関心や視線をも引き付け、女子アマチュアとの接点が生まれている。それはゴルフ界にとって、画期的な変化であり、大きな前進である。

 折りしも、デービスが今大会で優勝した翌日、プロの世界のメジャー大会、シェブロン選手権で勝利した24歳の米国人、ジェニファー・クプチョは、19年の第1回オーガスタナショナル女子アマを制した初代チャンピオンだった。

 少年と少女を同じ夢でつなぎ、男子プロと女子アマチュアとの接点を作り出し、そして才能ある女子アマチュアを未来のメジャーチャンピオンとなるべく世に送り出し、そうしたすべてが、女子ゴルフ界と世界のゴルフ界の未来へつながっていく。

 そんなふうに壮大な仕掛けが組み込まれているオーガスタナショナル女子アマチュアは、知られざるパワーを秘めた素晴らしい大会であることを、あらためて実感させられた。

【写真】“昭和”な「バケットハット」を被ってプレーする高校2年生、デービスの写真を見る

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