一部分だけを注視してグリーン全体の傾斜を読み間違えている
ゴルフ場でプレーしていると、グリーン上で上りのパットだと思ったのに下りだったり、下りのパットだと思ったのに上りだったりすることがあります。スライスと読んだのにフックしたり、フックと読んだのにスライスしたりすることもあります。
ゴルフボールは傾斜の高い位置から低い位置に向かって転がるはずですが、低い位置から高い位置に向かって転がったように見えると「えっ、なんで?」と思います。

あれはグリーンの傾斜の読み間違えなのでしょうか。それとも実際に低い位置から高い位置に向かって転がることもあるのでしょうか。コース管理の専門家に聞いてみました。
「私は基本的に、ベントグリーンは下りが順目で上りが逆目になると思っています。ほとんど傾斜どおりに転がりますから、プレーヤーがグリーンの傾斜を読み間違えている可能性が高いのではないでしょうか」
傾斜の読み間違えは、グリーンの一部分に意識を集中すると起こります。部分的に見たときは上り傾斜だと感じたのに、グリーン全体を見たら下り傾斜だったということはよくあります。
したがって、グリーンの外側で全体的な傾斜を確認してからボールの位置に向かうと、部分的な傾斜に惑わされなくなると言います。
また、グリーンの傾斜とホール全体の傾斜が違っているケースがあるという話を聞くこともあります。キャディつきプレーの際に「このグリーンは上っているように見えますが、ホール全体の傾斜が下っているので見た目よりも速いです」というアドバイスを受けたりします。
でも、セルフプレーではそんなことには気づきませんから、傾斜と逆方向に曲がったように見えたのは目の錯覚で、本当は高い位置から低い位置に向かって転がっているのかもしれません。
プロゴルファーがキャディと2人がかりでグリーンの傾斜を読み、パッティングストロークの精度も高いのにパットが入らないのは、グリーンの傾斜を読むのがそれだけ難しいということでしょう。
芝が長い場合とグリーンを刈る方向が毎日同じ場合は傾斜と逆に曲がる可能性
でも一方で、ベントグリーンでも管理方法によってボールが傾斜と逆方向に曲がる可能性が2パターンあると専門家は指摘します。

「1つは芝の長さです。刈り高が長いと葉っぱが倒れます。普通は傾斜の向きに沿って倒れますが、傾斜と逆向きに倒れることもあります。葉っぱが寝た状態のグリーンだと傾斜と逆方向に曲がるかもしれません」
「もう1つは芝を刈る方向です。グリーンを刈るときは、タテ、ヨコ、右斜め、左斜めといった具合に4通りの方向で1日ごとに向きを変えて刈ると均一に仕上がります」
「だだし、そういう指示を出していないゴルフ場は、たとえばタテ長のグリーンですと、タテに刈ればターン(方向転換)の回数が減り、ヨコに刈ればターンの回数が増えます」
「最近は少ない人数でたくさんのグリーンを刈っているコースも増えています。グリーン刈りは6時ごろから始めて9時ごろまでかかります。お客様は7時ごろにスタートしますから、追いつかれるわけにはいきません。スピード優先で毎日同じ方向で刈っているグリーンは、傾斜とは違う芝目が出てくる可能性があります」
グリーンモア(グリーンを刈る機械)は刈る方向に対してタテに向いている葉っぱは刈り取れますが、ヨコに向いている葉っぱは刈り取れない構造になっているそうです。したがって同じ方向で刈り続けると、横に寝た葉っぱばかり残ることになります。
「そういう現象はグリーンの外周で起こります。グリーンの外周は同じ方向にしか刈れませんから、芝が寝て、傾斜とは関係ない芝目がつきます。もしかしたらそれと同じことが起こっているかもしれません」
そのことを知ったからといって何か対策が取れるわけではありませんが、傾斜と逆方向に曲がる可能性もあることを知識として持っておけば、結果に一喜一憂せず起こった現象を冷静に受け止めることができます。
また、傾斜と逆方向に曲がっても距離感さえ合っていれば次のパットが短くて済みます。パットは方向性よりも距離感が大事ということも学べます。