手でスイングするのに「手打ちはNG」って何だ!? “手打ち”や“ボディーターン”を正しく理解しよう | e!Golf(イーゴルフ)|総合ゴルフ情報サイト

手でスイングするのに「手打ちはNG」って何だ!? “手打ち”や“ボディーターン”を正しく理解しよう

ちまたでは “手打ち”スイングはダメ、“ボディーターン”でスイングしなきゃ! と言われています。しかし、両手で握っているゴルフクラブをどうすれば“ボディーターン”に出来るの!? そもそも、違いや境界線ってあるのか? 素朴な疑問を、人気インドアレンジのヘッドコーチに質問してみました。

初心者が必ず指摘される“手打ち”スイング

 ゴルフクラブは両手で握っていますが、レッスンでは“手打ち”してはいけないと言われています。プロや上級者のスイングを見てみると、確かに体の回転でクルッと“ボディーターン”をしているような印象があります。

 スイング談義には必ずと言っていいほど“手打ち”と“ボディーターン”の言葉が出てきますが、そもそも両者の違いや境界線はあるのでしょうか?

同じスイングをしたつもりでも、なぜか“手打ち”と言われてしまう。一体どこに違いがあるのだろうか?

 人気インドアゴルフレンジKz亀戸店ヘッドコーチを務める筒康博コーチは、

「巷のゴルファーの間では独特の解釈が多く占めていますが、もとの言葉の意味とは異なっています。また、英語圏では“手打ち”と同じ意味のレッスン用語が見当たらないのです」

 と言います。これって一体、どういうことなのでしょうか?

 日本のゴルファーの皆さんは “手打ち”撲滅運動を推進しているように感じます。

 しかし現実のところ、大体の人がスイングを見た時に「小手先で打ってる」「体で打てていない」くらいの印象で“手打ち”を判断している傾向があります。

 一方“手打ち”を指摘されたゴルファーは、一層“ボディーターン”スイングを心掛けることになります。一生懸命に体を回転させ、なぜかミスショットが増えてしまっている方も多いのではないでしょうか?

 当たり前ですが、ゴルフクラブは両手で握っています。また、テニスや野球などの球技も道具を手で持っています。確かに小手先だけでボールを打つスイングではパワーが出づらくミスも多いですが、“手打ち”そのものが悪いわけではありません。

 そもそも本当に手を全く使わないスイングが正しいのであれば、極端な話クラブを腰やベルトにつけて身体の回転だけで遠くに真っすぐ打てるはずです。

 昔と違い、現在は様々なスイング解析が進んでいます。(クラブの)ヘッドスピードが速いゴルファーほど、基本的に両手(グリップ)のスピードが速い傾向がある事がビッグデータから確認されています。

 つまり、両手のスピードがクラブを速く動かすために必要なのですが身体の回転スピードのみで生まれる事はありません。

ヘッドスピードが速いゴルファーほど、グリップ(両手)のスピードも速いことが最新のスイング解析で確認されている

“ボディーターン”は和製英語!?

 日本における“ボディーターン”の言葉は、1990年頃から流行しました。しかし、世界ではボディーを一つの塊としては考えず「上半身」「下半身」など各部を分け、回転を含む運動動作“ローテーション”を使うことが多いです。

「もっとボディーターンしなさい!」のようなレッスンをする事は、まずありません。

“ターン”の英語には「回転」の他にクルマの右折左折など「向きを変える」の意味もある。英語圏では上半身・下半身に“ローテーション”の言葉を使うことが多い

 日本ではゴルフスイングにおいて「ターン=回転」の意味が強いですが、車の右折左折のように「ターン=向きを変える」の動きの意味に近いと思って下さい。クルクル速く回転する事を目指す“ボディーターン”は、日本特有のもの。

 むしろ速すぎるカラダの回転は「スピンアウト(速すぎ・開きすぎ)」のミスと考えられています。

 そのため、どのタイミングでどの方向を向くべきか? の意味で「ローテーション」の言葉がよく使われます。「アッパーボディー(上半身)ローテーション」「ローワーボディー(下半身)ローテーション」など、人間の体を部位に分けて個別に動きをみるレッスン&チェック方法です。

 日本人にとって英語圏のスイング用語はすごく難しいですが、カタカナばかりの言葉遊びだけではスイングの実践にはつながりません。

プロが“手打ち”に見えないのは手と体のバランスとタイミングが適正だから

 プロや上級者のスイングが“手打ち”に見えないのは、身体の動きと腕の動きのバランスとタイミングが適正だからです。

 例えば、アドレスから体を全く動かさずに、腕だけでトップの位置まで行こうとしてしまうと「手打ちのバックスイング」になってしまったり、トップからダウンスイングに向かう時に下半身が止まったまま腕とクラブだけが動き出してしまうと「手打ちのダウンスイング」になってしまいます。

先に体から動き出し、後から手と腕でクラブを動かす「つもり」で実際には“手打ち”ではなくなる

 ヘッドだけがボールに向かって振り下ろされるダウンスイングは、釣り竿を振り下ろす動作に似ているためキャスティングと言われます。

 では具体的にどうすれば“手打ち”に見えないスイングになるのか? 体の捻転や体重移動を先に行い、後から腕とクラブを動かすイメージでスタートすると、結果として“ワンピース”スイングになります。

 トップからダウンスイングも同様に、先に少しだけ下半身を動かしてから腕とクラブを振るくらいのつもりで“手打ち”が解消されてきます。

パワーとコントロールの両立を目標に

 人間の体の各パーツはバラバラにはできませんが、スイングにおいてうまく役割を与えてあげる事が重要です。

 鈍感な下半身は、体重移動やカラダの回転などパワーを引き出す役割を与えてあげる事で飛距離を生み出しやすくなります。

 一方、手や腕は非常に器用なためクラブのスピードを出すなど、繊細な操作に適しています。

 “手打ち”“ボディーターン”どちらにも偏りすぎる事なく、動画チェックや練習グッズを活用しながら、クラブのスピードとインパクトの正確性アップを目指してみて下さい。

【解説】筒 康博(つつ・やすひろ)

伝説のプロコーチ・後藤修に師事。世界中の新旧スイング方法を学び、プロアマ問わず8万人以上にアドバイスを経験。スイング解析やクラブ計測にも精通。ゴルフメディアに多数露出するほか、「インドアゴルフレンジKz亀戸」ヘッドコーチ、WEBマガジン「FITTING」編集長を務める。

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体の捻転や体重移動を先に行い、後から腕とクラブを動かすイメージを体現している稲見萌寧のスイング。“ワンピース”スイングになっている
体の捻転や体重移動を先に行い、後から腕とクラブを動かすイメージを体現している稲見萌寧のスイング。“ワンピース”スイングになっている
体の捻転や体重移動を先に行い、後から腕とクラブを動かすイメージを体現している稲見萌寧のスイング。“ワンピース”スイングになっている
体の捻転や体重移動を先に行い、後から腕とクラブを動かすイメージを体現している稲見萌寧のスイング。“ワンピース”スイングになっている
体の捻転や体重移動を先に行い、後から腕とクラブを動かすイメージを体現している稲見萌寧のスイング。“ワンピース”スイングになっている
体の捻転や体重移動を先に行い、後から腕とクラブを動かすイメージを体現している稲見萌寧のスイング。“ワンピース”スイングになっている
同じスイングをしたつもりでも、なぜか“手打ち”と言われてしまう。一体どこに違いがあるのだろうか?
ヘッドスピードが速いゴルファーほど、グリップ(両手)のスピードも速いことが最新のスイング解析で確認されている
“ターン”の英語には「回転」の他にクルマの右折左折など「向きを変える」の意味もある。英語圏では上半身・下半身に“ローテーション”の言葉を使うことが多い
先に体から動き出し、後から手と腕でクラブを動かす「つもり」で実際には“手打ち”ではなくなる

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