「みんながライバル」と言われて育った
職場や組織の中で、仲のいい友達がいたり、ライバルがいたりと人間関係はさまざまだと思います。私にも仲のいい友達やプロになって一緒に戦ってきた同世代の選手たちがたくさんいます。地元の愛知には気心知れた友達がたくさんいますし、年齢の近いツアーの選手たちとは良きライバル関係で切磋琢磨してここまでやってきました。

ただ、基本的にプロツアーで戦う選手たちは競争する相手なので、私には試合では“みんながライバル”という考えがあります。年上とか年下とか、同級生とかは関係なく、これは小さい時からお父さんに教えられてきたことで、いつも「みんながライバルだぞ」って言われ続けて育ったからだと思います。
これは私の個人的な考えですが、基本的に競う相手とは必要以上に仲良くしなくてもいいと思っています。もちろん同世代の選手とは話しますし、仲のいい選手とは他愛のない会話もします。ただ、試合会場に入ったら、他の選手とじゃれ合うような雰囲気を出さない感じはあると思います。
でも、女子ツアーはアマチュアからプロになっても顔ぶれがあまり変わらないところもあるので、仲のいい選手同士が和気あいあいとした雰囲気になりますよね。現場での友達がたくさんいるほうがいいという選手もいますし、人それぞれですよね。少し私の考えは古いんですかね(笑)。
中日・与田前監督からのアドバイス
実際に試合が始まるとプレーに集中するタイプ。仲のいい選手と同組で回っても、ほとんど会話しないんです。そもそも自分のプレーにいっぱいいっぱいで、話す余裕なんてないっていうのもありますけれど(笑)。
実はそういう自分が嫌だなと思ったこともあるんです。でも、今年の3月頃、中日ドラゴンズ前監督の与田剛さんとお話をする機会があったのですが、こんなアドバイスをしてもらいました。
「みんなと仲良くする必要ないんだよ。今の時代はみんなと溶け込んでいれば、自分はイケてるじゃんっていう感じがあって、でも俺はそれは違うと思うよ」
スポーツの世界ってそういうものなんだなと腑に落ちたところがあって、これからも自分らしくいようと決めました。
一匹狼のように戦う人もいれば、今の若い選手たちのように仲間同士でいい雰囲気を作りながら切磋琢磨して、実力を向上させる選手もたくさんいます。スポーツの世界にはいろんな考え方があって当然だと思います。
これからも試合に出ているみんなは良きライバル。周囲の選手たちからたくさん刺激を受けながら、これからもゴルフに一生懸命取り組んでいきたいです。
金田 久美子(かねだ・くみこ)
1989年生まれ、愛知県名古屋市出身。3歳からゴルフを始め、8歳の時には世界ジュニア選手権で優勝。タイガー・ウッズに並ぶ記録で“天才少女”として注目を浴びる。アマチュアとして出場した2002年のリゾートトラストレディスで、12歳9カ月での最年少予選通過記録を樹立。08年のプロテスト初挑戦は1打足りずに不合格も、同年のファイナルQTをトップ通過してツアー出場権を得る。プロ3年目のフジサンケイレディスクラシックで初優勝。愛称は“キンクミ”。その風貌から“ギャルファー”の異名を取った。スタンレー電気所属。