見栄え以上に池の環境を守る大事な役目を持っている
ゴルフ場には、いくつかのホールに池が配置されていることがよくあり、戦略的な観点や緑の芝生にワンポイントを付け加えることによる景観のバリエーション、さらには増水時に水の勢いを弱らせて下流域への災害リスクを減らすといった目的があります。

そのような池の中には噴水が設置されているところも見られ、少し疲労が溜まってきたときに水が高く上がるのを見ると癒しを感じる人も多いかもしれません。
では、ゴルフ場の池に噴水が設置されているのには、どのような目的があるのでしょうか。ゴルフ場の経営コンサルティングを行う飯島敏郎氏(株式会社TPC代表取締役社長)は以下のように話します。
「もちろん、噴水があることによって水に動きを持たせて景観をより美しく見せるという目的で設置しているところもあります。しかし、噴水にはさらに重要な役割があり、水を対流させることで水質の維持を図っています。ゴルフ場では、芝の管理を行う際に農薬や肥料を使用しますが、一部は雨で流されるなどして池に流入することがあります」
「ほかにも、池の周りに生えている木から落ちた枯れ葉が集まったり、水中で暮らしている生物の死骸が底に蓄積する場合も考えられます。汚い水がいつまでも排出されない状態が続くと、水中に含まれる栄養分が過剰となる“富栄養化”が起き、プランクトンをはじめとした微生物にとっての恰好のえさ場になってしまいます」
「さらに、アオコなどの藻類が大量に繁殖すると、悪臭の発生や酸素の消費量が増加することによる水の酸欠状態、排水溝の詰まりで最終的には水が腐ってしまいます。噴水は水中から吸い上げた水を飛ばして水面に落とすので、水流が発生すると同時に霧状に放出することで適度に空気が混ざるので、効率よく新しい酸素を取り込めるようにもなります。ほかにも、池の中にポンプを置いて対流させる方法や、スクリューのようなものを回転させて流れを発生させる方法など、噴水以外にも藻の繁殖を防止するやり方はさまざまなものが存在します」
なかには噴水などの対流装置が設置されていない池も見られますが、そのような場合はクリークとつながっているために自然と水の流れができており、ある程度水質の維持ができているケースが多いようです。
しかし飯島氏は「やはり噴水があったほうが藻の発生が抑える効果を期待できる」と話します。
池越えパー3でワンオンした人へのサプライズ演出も
また、まったく異なる理由で噴水を池に設置しているゴルフ場も存在します。例えば、岡山県の作州武蔵カントリー倶楽部美作コースの8番ホールや千葉県の立野クラシック・ゴルフ倶楽部の10番ホールなど池越えのパー3では、ワンオンすると噴水が上がってプレーヤーを祝福してくれる粋なサービスがあるとゴルファーの間では有名です。
仕組みとしては至ってシンプルで、ティーイングエリアの横に手動ボタンが用意してあったりゴルファーの目につかないようなところにスイッチがあったりして、同伴者やキャディーさんがその都度操作してサプライズ演出ができるようになっているようです。
ゴルフは静かな環境でプレーをするのが醍醐味ではありますが、時に噴水が上がっているのを見ると視覚的なアクセントとなって目の保養にもなります。それだけでなく、池の環境保全にも貢献してくれているので、ゴルファーにとってもゴルフ場にとっても噴水から受ける恩恵は実は非常に大きいといえるかもしれません。