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- 冬でもフェアウェイが緑なのは“着色”してるから!? “見栄え”だけじゃないメリットがあるって本当?
ゴルフ場の芝は寒い時期になると人工的に緑色に着色することがあります。冬でも青々とした芝の上でプレーできたほうが気分がいいのは間違いありませんが、理由はそれだけではないといいます。どのようなメリットがあるのでしょうか。
芝に着色をすることで春の生育を助けるってどういう理屈?
今年は暖かい時期が長かったですが、さすがに冷え込む日も増えてきました。紅葉の時季も過ぎ、植物の色彩もかなり失われてきいます。
しかし、ゴルフ場は冬に行ってもフェアウェイの芝が依然として緑色を保ち元気そうに見えるので、「なぜゴルフ場の芝はあまり枯れないのだろう」と、不思議に思った人もいるかもしれません。
実はゴルフ場の芝は、寒い時期になると種類によっては人工的に着色をすることがあります。では、どのような目的で色を付けているのでしょうか。ゴルフ場の経営コンサルティングを行う飯島敏郎氏(株式会社TPC代表取締役社長)は以下のように話します。
「日本のゴルフ場の大部分においては、グリーンにはベント芝と呼ばれる洋芝を採用し『ペンクロス』を筆頭に品種改良によってさまざまな新しい品種が生まれ、現在は第5世代までつくられています。洋芝の主な特徴としては、寒冷地型で冬の寒さに強いのと1年を通して葉の色が緑色を保つため“エバーグリーン”であることの2つが挙げられます。対して、ティーイングエリアやフェアウェイには高麗芝、ラフには野芝が使われますが、“夏芝”という別名を持つだけあって暖地型に属し、高温多湿になる日本の夏には耐えられる反面、冬になると茶色く枯れる特徴があります」
「まだ青々としている時期はフェアウェイとラフが緑の濃淡で区別できますが、枯れると色が一緒になって、どこが境界線なのか分からなくなってしまいます。そのため、枯れる直前のタイミングを見計らって着色を行っているゴルフ場がとても多いです。初期の段階では、単純に見栄えをよくするためにペイントをしていましたが、現在はそれに加えて葉の表面を緑にコーティングすることによって、春になったときの芽吹きを早める目的でも着色剤を散布しています」
「熱や光には白い物よりも黒い物のほうに集まる性質があるので、人工的であっても芝を緑色に戻してあげると効率的に太陽の熱や光を吸収して光合成を再開させやすくなります。そのため、見た目を良くするだけでなく芝の成長をコントロールする目的も兼ねて色を付けています」
ほかにも、芝が退色した状態のままプレーをすると枯れた葉の色とボールの色が同化し、どこに落下したか分かりにくくなってスロープレーにつながる可能性もあります。着色作業は、芝のみならずゴルファーに対しても良い効果を与えるといえそうです。
それならラフも含めて芝のエリアすべてに着色をしたほうが良さそうですが、作業範囲が広くなり過ぎて時間・費用・手間が膨大にかかってしまうため、ラフは除くなど限られた区画を着色の対象にしているところがほとんどです。
さらに、コスト削減のために色を付ける区域とつけない区域を設けたことで、結果的にコントラストがはっきりして美しくなる場合もあるといいます。
環境にやさしい、シューズに付着しづらいなど着色剤も進化している
では、芝の着色はいつ頃からどのような方法で行われるのでしょうか。全国でゴルフ場を運営する東急リゾーツ&ステイの広報担当者は、以下のように話します。
「気温が低下し始める11~12月くらいから作業を始めます。広範囲を回らなければならないので、基本的には着色剤を入れたタンクをトラックに積み込み、たくさんのスプレーが取り付けられた横に長いアームで散布します。また、機械では届かないような細かい場所については係員がタンクを背負い、手動で撒いていきます」
「1回実施しただけでは雨などで着色剤が落ちてしまうので、ゴルフ場によって頻度は異なりますが、おおよそ1カ月に1回のペースで繰り返し散布します。肥料や殺菌剤といったものを混ぜていますが、環境には影響のないものを使用しているので安心していただければと思います」
かつての着色剤は、葉の表面への乗りが悪く、シューズやウエアに付着して汚れてしまうこともありました。しかし、現在は改良を重ねてすぐに芝に定着するようになったので、そのような心配もありません。
「芝の色を人為的に操作する」と聞くと、どうしてもネガティブなイメージを持つ人は多いかもしれません。ところが、むしろ芝の健康状態をキープしてくれており、来シーズンもきれいなゴルフ場を提供できるようにするには、必要不可欠なものなのです。
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