「ベストスコア」を意識しているうちはまだまだビギナー!? 上級者ほど「平均スコア」を重視するって本当？

　スコア100切りを達成したことがある人は、ゴルファー全体の3割ほどとも言われているので、ビギナーであればまずは「100」、その先は「90」を切ることを目標に腕前を磨いてラウンドを重ねていくでしょう。

　一方、80台を何回も出しているような上級者になってくると「ベストで70台を出したい」という目標こそ持っていますが、それよりも平均スコアに意識が向くようです。上級者になると、どうして平均スコアを重視するようになるのでしょうか。

　現役のシニアツアープロでゴルフスクールも経営する梶川武志プロに話を聞きました。

「例えば、平均スコア81以下のハンディキャップがシングルの人がいたとしましょう。この人のベストスコアがアンダーパー（71以下）であれば、さらに少ないスコアを出すのはかなり難しいと言えます」

「このような上級者は、ベストスコアよりもハンディキャップを一つでも下げたいという気持ちのほうが圧倒的に強くなります。そのためには悪いスコアを出さないようにして、平均スコアを下げることのほうが重要になるのです」

「プロもベストが出せればもちろんうれしいですが、それよりも悪いスコアを出さないほうが大切です。そのために自分の苦手な部分を改善しようと、日々練習に取り組んでいるのです」

　では、上級者と同じようにビギナーや中級者もベストスコアの更新や100切りなどの目標より、平均スコアを重視したほうがいいのでしょうか。

「ビギナーがベストスコアを出すこと、ある程度の経験者が100切りを目指すことなど、自分自身の目標に向けて頑張ることはとても大切です。その目標があるからこそゴルフを継続できますし、達成できれば大きな喜びを得ることができます」

　しかし梶川プロは、ベストスコアの更新や100切りだけを目標にしたラウンドは「上達に悪影響を与えてしまう可能性もある」と指摘し、以下のように話を続けます。

「序盤で大叩きをしていまい目標の達成が限りなく不可能な状態になると、ラウンド後半までメンタルを維持できなくなってしまいます。ミスショットや3パットが続くと『もう無理だ…』と心が折れてしまい、調子が悪いなりに何とかしようという意識が薄れてしまうのです」

「ゴルフはメンタル面が大きく影響を与えるスポーツなので、『もういいや』という気持ちでプレーをするとスコアはどんどん悪くなってしまいます。最悪の場合、ラウンドすること自体が苦痛になってしまう可能性もあるでしょう」

「そうならないためには、自分の中での『最低限の目標』も設定しておくといいのです。例えば、100切りを目指しているゴルファーなら『110以上は叩かない』、ビギナーなら『ワーストスコアだけは出さない』などといった目標です」

　さらに梶川プロは、ラウンド中の“切り替え”がゴルフの上達に大きく作用するとアドバイスを送ります。

「ゴルフは季節や天候によってもスコアは大きく変わるので、風がものすごく強い日にベストスコアを出すことは不可能に近いです。そのような環境では『ベストを更新』ではなく、『最低限の目標はクリアする』といった気持ちに切り替えてプレーするといいでしょう」

「この考えはラウンドの途中であっても大切です。例えば、午前中は調子が良かったのに午後になってOBを連発してしまった場合、自分の中での最低限の目標に気持ちを切り替えるのです。そうすることで、その後もどうすればいいかを考えながらゴルフをします。これがゴルフの上達につながるのです」

　ベストスコアの更新や100切りを目標にすることも大切ですが、一方で悪いスコアを出さないという意識も非常に重要。ゴルフは技術だけでなくメンタル面がプレーに影響を与えるスポーツでもあるので、梶川プロがアドバイスをしているように自分自身の「最低限の目標」も設定したうえでラウンドに挑む心構えが上達に結びつくと言えそうです。