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- 最近のゴルフ場は「1グリーン化」が進んでいるらしいけど… 2グリーンも見直されているって本当?
日本国内には、1ホールにつきグリーンは2つ設けられている「2グリーン」のゴルフ場が多く存在します。ここ数十年、1グリーンへの改修が積極的に行われてきましたが、実は最近になって2グリーン特有のメリットが見直されてきているといいます。
昨今の酷暑を考えると2グリーンは理にかなっている
ゴルフコースは世間一般の認識だと1つのホールにグリーンは1つだけとイメージされがちです。しかし実際のところ日本国内には、1ホールにつきグリーンは2つ設けられている「2グリーン」のゴルフ場が多く存在します。
ここ数十年、1グリーンへの改修が積極的に行われてきましたが、実は最近になって2グリーン特有のメリットが最大限発揮されるようになったともいわれているのです。2グリーンが見直されつつあるのはどうしてなのでしょうか。ゴルフ場の経営コンサルティングを行う飯島敏郎氏(株式会社TPC代表取締役社長)は、以下のように話します。
「まず、1つのホールにグリーンが2つあるというのは日本独特のスタイルで、海外からは比較的イレギュラーに捉えられます」
「グリーンには、“コーライ芝”と“ベント芝”の主に2種類が使われています。前者が暖地型で日本の高温多湿な気候に向いている一方、ゴルファーは葉先が細かくてボールがスムーズに転がる後者を好む傾向が強いです」
「ところが、ベント芝はもともと寒地型なので日本の気候には向いておらず、夏になると傷んだり、病気にかかりやすくなるという弱点がありました」
「そこでゴルフ場設計者の第一人者として知られる井上誠一氏が、『どちらか一方を休ませても、もう一方で営業ができるように』と、グリーンを1ホールに2つ設ける手法を編み出し、それが全国に広がっていきました」
「バブル以降は海外の設計者による造成や、ベント芝が通年使用できるよう改良されたことなどで、新規にオープンしたゴルフ場でははじめから、また元からあったゴルフ場でも改修によって1グリーンとするところが増えていったのです」
「しかし、今度は夏の気温が異常ともいえるほどにまで上昇し、35度以上の猛暑日を記録する日も多くなっていったのが原因で、1グリーンでは対処しきれなくなる可能性が問題視され始めました。よって、現在は2グリーンならではのメリットが見直されつつあります」
2グリーンにはほかにも、「一方の営業を休ませることで農薬の使用量を減らし、環境への影響を最小限に抑えられる」といったメリットも挙げられます。
ただ、一部からは「使用していないグリーンにボールが乗ったら救済措置でボールを人為的に動かさなければならず、“あるがまま”ではなくなる」など、ゴルフの本来あるべき姿からかけ離れてしまう点が、デメリットとして指摘されているのも事実です。
そのため、1グリーン化を行うところと2グリーンの良さを見直そうとしているところの両方が混在しているのが、日本のゴルフ場業界における現状といえそうです。
1グリーン化で失敗したところ、2グリーンのままでも成功したところ
また、飯島氏は「グリーンの改修には失敗例と成功例がある」とも話します。
「2グリーンを1グリーンにする際は、表面の下に積み重なっている盛土や切土の層も全て直す必要があったり、スプリンクラーや暗渠排水管(あんきょはいすいかん)といった芝の管理に欠かせない設備の配置を変えなければならなりません」
「さらに、コースマネジメントを考えると周囲のバンカーや、池の置き方も考え直すことになって非常に大変な作業を要します。そのため、改修や費用に手間をかけたくないゴルフ場の中には、2つのグリーンの間だけを改修して無理やり一つにつなげたようなところも見受けられます」
「一方で、1グリーンに改修しないという選択肢を選びながら、非常にうまくリニューアルしたゴルフ場もあります。今年、日本オープンの開催地に選ばれた『東京ゴルフ倶楽部』は、2018年にアメリカ出身の設計者であるギル・ハンス氏の手によって改修が実施されました。もともと造成時に設計を担当した大谷光明氏の遺志とクラブの伝統を残すため、あえて1グリーン化はせず2グリーンのままとしました」
「ここで特徴的なのが、日本特有の2グリーンでありながら本場スコットランドの雰囲気も醸し出せるよう、工夫が凝らされていることです。グリーン面の傾斜は盛土や切土で人工的に演出するのではなく、本来の地形が持つ高低差を生かしてグリーンの外から連続的に見えるような、不自然さを感じさせないアンジュレーションを実現しています」
なお、もしも2グリーンを単純に繋げたような1グリーンになっている場合、「カップから遠い場所にオンしたらパッティングに何打もかかってしまう」などの弊害が生じるともされています。
気候変動の影響で2グリーンが再認識され始めているのを考えると、井上誠一氏は「大変に先見の明があった」ともいえるかもしれません。
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