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- ゴルフコース設計、対峙する相手が“自然”なのが「英国式」 “設計家”なのが「米国式」 じゃあ「日本式」は?
ゴルフ場によってコースの形はさまざまですが、大きくは英国式と米国式という2つの流派に分けられるそうです。では、それぞれどのような違いが見られるのでしょうか。
元からある地形や自然物をできるだけ利用した英国式
ゴルフ場によってコースの形はさまざまですが、コース設計において大きくは「英国式」と「米国式」という2つの流派に分けられるそうです。どのような違いがあるのでしょうか。ゴルフ場の経営コンサルティングを行う飯島敏郎氏(株式会社TPC代表取締役社長)は、以下のように話します。

「まず、英国式はイギリス・スコットランドで見られる“リンクス”を参考に、元からある地形や自然物をできるだけ利用したスタイル、もしくはそれに近づけた設計がなされたコースをいいます」
「全英オープンでも知られる『セント・アンドリュース・オールドコース』が分かりやすい例ですが、現地のゴルフ場の多くは海岸沿いの荒涼とした土地にあまり手を加えずに作られ、アンジュレーションも風雨にさらされてできた独特な起伏を流用しています。また、“羊が雨除けで掘った穴”を由来としたバンカー形状や、“ギース”や“ハリエニシダ”など元から生えていた低木をそのままブッシュに見立てたりしているのも特徴的です」
「要するに、英国式は『自然の中で行う』という、ゴルフ誕生当初の思想に基づいたデザインをしているといえるでしょう」
「対して、米国式はコース設計家の手によって細かな計算がなされて造形美を前面に出しつつ、競技場の1つとして機能性も兼ね備えたスタイルとなっているコースをいいます」
「プレーヤーがティーイングエリアに立つと、フェアウェイが正面に広がる一方でバンカーや池が行く手を阻むかのごとく横たわっており、そのはるか向こうに目標とすべきピンフラッグが見えるという構図が出来上がります。バンカーも、リップ(縁)を際立たせて芝地との境界線を明確にし、よりゴルファーにプレッシャーを与えるような形状をしています」
「つまり、米国式のゴルフ場は『自然との対峙』ではなく『コース設計家からの挑戦状に応える』ことをメインの思想としているといえます」
また、英国式はなるべく元の地形を生かして作られている関係でブラインドホールが多く、「ブラインドになっている部分を越えた先でどう着弾するか」など、ゴルファーのイメージ力を要求する点も大きな特徴なのだそうです。
反対に、米国式は先述の通りバンカーや池などのトラップをまざまざと見せるレイアウトではあるものの、ブラインドホールは少ないため戦略を立てて打てばビギナーでもちゃんと報酬を得られ、あらゆるゴルファーが楽しめるようになっているのです。
英国式・米国式問わず思想の大元はスコットランドにあり?
さらに、飯島氏は「ゴルフ場の設計家は人それぞれに思想があるが、源流はどれもスコットランドにあるだろう」と話します。
「設計家の中にも、栃木県の『ピートダイゴルフクラブ(ロイヤル・VIPコース)』などを担当したピート・ダイは“英国回帰”をコンセプトとしたことから英国式、千葉県の『カレドニアン・ゴルフクラブ』などを担当したJ・マイケル・ポーレットは米国式と分かれますが、いずれも思想の根本では『セント・アンドリュース』の影響を少なからず受けていると思います」
「かつて、セント・アンドリュースにはオールドトムモリス(本名:トーマス・ミッチェル・モリス)という偉大なグリーンキーパーがいましたが、彼はコース設計においても功績を残しており、以後誕生するさまざまな設計家も揃って敬愛したと言われています」
「また、海外ではコース設計を“哲学”の1つと捉える傾向が強く、設計家同士で『グリーンの形はこうあるべき』や『バンカーの配置はこうすべき』などと、熱く議論を交わす機会もしばしばあったようです。そのような中で切磋琢磨し合い、結果として一人ひとりに明確なコンセプトが生まれたことで、ゴルフ場のデザインはバリエーションに富むようになったのかもしれません」
一方で、日本では井上誠一氏が最も有名なゴルフ場設計家の1人として知られ、彼が編み出した「ベント芝と高麗芝の2グリーン」は年間を通して質の高いグリーンを提供できると、現在でも数多くのコースで採用されています。
一時期は、「高麗芝はボールの転がりが良くなくて不人気」という理由からベントの1グリーン化も進められてきましたが、年々厳しくなる酷暑の影響でグリーン全体が赤く焼けてしまわないよう、最近になって2グリーンが見直されつつあるのも事実です。
時代の流れを受けながらも多数のゴルフ場で採用されている2グリーンは、いわば英国式や米国式と並ぶ、“日本式”のコースデザインともいえるかもしれません。
次にラウンドに行く際は、そのゴルフ場が英国式と米国式のどちらに基づいて作られているか、予想しながら回ると面白いかもしれません。
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