高価なクラブセットは車上荒らしのターゲットになる
多くのゴルファーが抱える悩みとして、「ゴルフバッグ置く場所問題」が挙げられます。

一般的なゴルフバッグは、クラブを入れた状態で130~140センチ程度、幅の最も大きい部分で40~50センチになり、小学生の子どもくらいのサイズになっています。そのため、都心部の狭小住宅や一人暮らし用のワンルームマンションなど、収納スペースが十分でない家では、ゴルフバッグの置き場所に困ることも少なくありません。
そこで多くのゴルファーが利用するのが、クルマのラゲッジスペースです。ゴルファーであれば、ゴルフバッグを積む想定でクルマを選んでいるでしょうし、子供やペットによるいたずらを防ぐという意味でも、絶好の収納場所のように見えます。
しかし、ゴルフバッグを車内に積みっぱなしにしておくことは、本来おすすめできることではありません。なぜなら、「車上荒らし」に遭う可能性が高くなるからです。
車上荒らしは、「車上狙い」とも呼ばれ、駐停車しているクルマから金品を盗むことを指します。日本損害保険協会が2020年に行った調査では、車上荒らしの被害にあった金品で最も多いのは、バンパーやミラーといった「外装部品」、次いで「バッグ類」「金銭・カード」などになっています。
この年は、新型コロナウイルスによる外出自粛の影響もあり、ゴルフバッグなどの「スポーツ用品」は8位となっていました。しかし、17年や18年の調査では2位となっており、車上荒らしの対象になりやすいものであることが分かります。
実際、22年1月にも、車内にゴルフバッグを積んでいた兵庫県の男性が車上荒らしにあい、約80万円相当のクラブセットが盗難されるという被害にあったことが報道されています。
近年は「イモビライザーカッター」と呼ばれる特殊な道具を使った車上荒らしが増加しています。
現在、販売されているクルマの多くに、「イモビライザー」と呼ばれる盗難防止装置が搭載されています。これは電子キーと連携して、車両のロックやエンジン始動を制御するものですが、この連携を解除するのが「イモビライザーカッター」です。
本来は、自動車整備工場などで使用される道具だったのですが、インターネットで購入できたこともあり、車上荒らしに悪用されてしまいました。現在では、一部の県では条例によって所持が制限されたりしています。
「イモビライザーカッター」を使うと、およそ1分でロックが解除されます。窓やボディを破壊するわけではないので、大きな音を出すこともなく、車内の金品を奪われる危険があるわけです。
防犯意識があることを伝える工夫が大事
車上荒らしを防ぐ上で最も大切なのは、何よりユーザー自身の防犯意識です。
警視庁では、車上荒らしを防ぐ最善策として、「車内に貴重品を残さないこと」を推奨しています。そもそもゴルフバッグなどをクルマに積みっぱなしにしないことが、最善なのは間違いありません。
しかし、住宅環境などによって、それが困難な人もいるでしょう。
たとえば、シャッター付きのガレージにクルマを駐車するといった対策もあるにはありますが、大きな費用がかかってしまうため、現実的ではありません。比較的安価に対策を講じるには、犯人目線で考えてみることが大切です。
まず、車上荒らしの犯人は、どんなクルマを狙うでしょう? たとえば高価な金品が「あるかもしれない」クルマよりも、高価な金品が「確実に社内にある」クルマをターゲットにするはずです。
そう考えると、高価なゴルフバッグが中にあると見せない工夫が大切になります。セダンのようにトランクが独立したクルマはまず防犯的に有利になりますし、SUVやハッチバックのクルマであれば、トノカバーを使って、ラゲッジルーム内の荷物を見えないようにする必要があります。
その他にも、「監視カメラ動作中」といったシールを貼るだけでも、効果があると言えるでしょう。ダミーであっても、本物である可能性が少しでもあれば、犯人が警戒すると考えられるからです。
ある警察関係者は「重要なのは、防犯意識があるということを犯人に伝えること」と話しています。
大きな費用をかけたりしなくても、ちょっとした工夫で車上荒らしの被害に遭うリスクを抑えることができます。大切なゴルフバッグや荷物を守るために、いま一度、防犯対策を見直してみると良いかもしれません。