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ゴルフライフ

実は日本発祥 ゴルフ場でおなじみの樹脂製えんぴつ「ペグシル」の「ペグ」は何をかけている?

2022.03.12 野上雅子
ゴルフ場 トリビア

ほとんどのゴルフ場でスコア記入用に無料配布されているクリップ型の樹脂製えんぴつ。実は日本のメーカーが開発したものが元祖です。今では年間1億本以上を出荷するという「ペグシル」はどのように生まれ、名前の「ペグ」とは何なのでしょうか?

ペグシル登場前は短く切った普通のえんぴつを使ってた

 ゴルフのスコアカードに挟む、クリップ型のプラスチック製携帯えんぴつを「ペグシル」といいます。「そういう名前があったんだ」と初めて知る方もいるかもしれませんね。

「pegcil」「OKAYA」と凸刻印があるのが“元祖”の岡屋製

 もし今、手元にスコアをつけるえんぴつがあったらクリップ部の少し下を見てください。平たい部分に「pegcil」、それより下の細い柄の部分に「OKAYA」と凸刻印があれば、それはホンモノのペグシル。凸刻印のないものは類似の簡易えんぴつです。

「ゴルフを始める前から競馬場でマーク用に使っていました」「アンケート用紙などについているえんぴつですね」「感染防止の観点から、昨年から選挙会場に導入されていますよ」。出会いの場所は人それぞれだと思いますが、実はペグシルは日本発祥、しかもゴルフのスコアをつけるために考案されたえんぴつなんです。

 そもそも「pegcil」は、グリーンフォークのペグ(当時はグリーンフォークのことを「プロペグ」、通称「ペグ」と呼んでいたそうです)とペンシルを一体化した商品名。「OKAYA」はペグシルを1974年に考案、翌年に会社を興して商品化した会社名です。裏側には「pegcil」「JAPAN」と刻印されていることからも、後発の類似品と一線を画すような日本発祥の誇りを感じます。

 ペグシルを考案、商品化して日本のゴルフ界へ、さらに世界へ送り出した岡屋の東京支店長・菊地紀子さんに誕生秘話をうかがいました。

「昔はゴルフのスコアをつけるのに、JIS規格18センチのえんぴつを短くカットしたものが使われていました。ゴルファーにとっては、ポケットの中が真っ黒になる、芯が折れやすい、ポケットから出しにくいといった不便な面もあったそうです。そういう時代に、兵庫県出身の故・井尻保宏初代社長が考案したのがペグシルです」

最初はお尻にクリップでなくグリーンフォークがついていた

 平成生まれの方はご存じないかもしれませんが、昔、牛乳瓶は丸い厚紙のような蓋がついていて、飲み口に薄紫系や薄黄色のビニールカバーがかかっていました。その蓋を外すには、プラスチック製の柄の先に針のついた栓抜きを使っていました。栓抜きの針をなるべく水平に近い斜めの角度で厚紙に突き刺し、てこの原理で針の先端を持ち上げながら厚紙を取るという単純なものです。

「故・井尻社長には、栓抜きの形がえんぴつに見えたのでしょう。針をえんぴつの芯に変えたら……と思いついたのです。とはいえ、1000分の1ミリ単位の精巧さでプラスチック成型された柄に、10分の数ミリのばらつきがあるえんぴつの芯を入れるのには苦心したそうです。また、最初はえんぴつの反対側につけたペグ(グリーンフォーク)の部分は先が2つに割れていましたが、樹脂のためか芝に刺さりにくく折れやすかったことから、ほとんど売れなかったようです。グリーンフォークではなく、スコアカードにはさめるクリップ型に変更して、多くのゴルフ場に受け入れてもらえるようになったのです」

 74年にほぼ今の形が完成。「ペグ」の機能は「クリップ」に変わりましたが、「ペグシル」の商品名は残りました。ちなみに当時はなかなか名前を覚えてもらえず、「テグペン」「テグシル」「ペグミン」などと勝手に呼ばれることも多かったといいます。

 74年といえば、折しもジャンボ尾崎が日本プロ、日本オープン、日本シリーズを制覇。年間6勝を挙げて2年連続の賞金王(獲得額約4185万円)に輝いた年です。ペグシルにもゴルフブームの追い風が吹き始めました。

元祖の岡屋はいまだに年間1億本以上を出荷

「大阪のある名門ゴルフクラブの支配人がアイデアを気に入ってくれて、1000本だけ注文をいただいたんです。当時ペグシルを1本作るのに20円ほどコストがかかっていたのに対して『1本あたり8円くらいしか出せないよ』という厳しい条件でしたが、使ってもらえばペグシルの良さを分かってくれると信じて、その場で受注したそうです」

 名門ゴルフクラブがペグシルを置いたことは口コミで広がり、それまで各地のゴルフ場を営業で回ったときに蒔いた種が芽を出すかのように、あちこちから受注が入るようになったそうです。ほどなくして、岡屋のペグシルは日本の全ゴルフ場の半分くらいのシェアを獲得。日本だけでなく、アメリカ、カナダ、フランスをはじめとするヨーロッパ諸国にも出荷するほどになりました。

 その後、改良を経て約35年前に今の形になってもペグシルは相変わらず日本のゴルフ場の半分ほどのシェアを守り続けています。ペグシルと名乗れるのは商標登録済みの岡屋製だけというのも強みです。冒頭で「凸刻印のないものは簡易えんぴつ」と言いましたが、携帯型えんぴつは「ペグシル」か「それ以外」に分けられると言っていいでしょう。

「特許の期限が切れてからは、ペグシルと似たような他社製品をネットや百均でよく見かけます。価格が安い中国産が一気に出回って売り上げを伸ばしているとも聞きます。それでも今でもゴルフ場で多くの方々に当社のペグシルを使っていただき、ありがたいかぎりです。一方、ゴルフ場以外でも競馬場、コンサート、販促用DM、選挙などの需要も多くいただくようになりました。月間生産本数は約1000万本ほどあります」

 1年で1億2000万本! 日本の人口とほぼ同数という膨大な数になります。ゴルフブームの浮き沈みや景気の荒波にもまれ、50年近くゴルファーに愛用されていることに脱帽です。

 すべての原点は、牛乳瓶の栓抜きを見てひらめいた先代社長のアイデアと熱意にあったのですね。これからは、新たな場所でペグシルに出会ったら誕生秘話を披露してみては?「へえ、さすがゴルファー」と、尊敬の眼差しを向けられるかもしれません。

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