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“五月晴れ”“ゴルフ日和”が実は危ない熱中症 命を守る「暑熱順化」と「見守り」って?

「熱中症」というと真夏のものと思いがちですが、実は5月くらいから注意が必要です。暑さに慣れていない体には気持ちの良い“ゴルフ日和”のプレーでも熱中症を起こす可能性があるのです。

普段オフィスワークの人は特に注意

 日本気象協会によると、今年の梅雨入りは九州南部の5月27日頃(九州北部は6月1日頃)を皮切りに、関東甲信地方は6月4日頃となる予想です。各地とも例年より数日早まりそうなのです。

ようやく半袖でプレーできるようになり「気持ちいいなー」と感じる気候が実は危ない 写真:AC

 となると、ゴルファーが警戒しなければならないのは熱中症です。

「えっ、夏本番はまだまだ先ですよ? 梅雨が明けてからで十分でしょう」

 多くの方はそう思うかもしれませんが、熱中症にかかるのは真夏にかぎったことではなく、五月晴れや梅雨の合間の「ゴルフ日和」こそ危ないのです。

 本来なら、春から初夏のうちは気温がそれほど高くなく、ゴルフに最適のシーズンです。でも、熱中症は連休前後の五月晴れの日あたりから発生し始め、梅雨の晴れ間に多発。梅雨明けの7月下旬から8月のお盆休みにピークを迎える傾向があります。特に、急に暑くなった日やジメジメして湿度の高い日のゴルフは、体がまだ暑さに慣れていないため熱中症になりやすいのです。

 そこで、予防のための「暑熱順化」が近年注目されています。いったいどんな予防法なのか、東京都内のクリニックで診療する、自らもゴルファーのベテラン内科医に教えてもらいました。

「暑熱順化というのは、体を徐々に暑さに慣れさせることです。例えば、久しぶりにラウンドをした日がたまたま暑くなり、軽い熱中症にかかることがあります。いつもエアコンの効いた屋内で1日中仕事をしている人ほどその可能性は高いのですが、要因のひとつとして、体が暑さに慣れていないため発汗や熱放散による体温調節ができにくいことが考えられます。5月、6月だったら水分補給も不十分でしょう。そうならないように、夏を迎える前から屋外に出て、暑い環境に体を慣らしていくのが暑熱順化です。オススメは毎日30分程度のウォーキング。軽く汗をかいて運動不足解消にもなりますよ。もちろん水分補給も忘れずしっかり行なってください」(以下、カッコ内はすべて内科医のアドバイス)

 ほかにもサイクリング、ストレッチなど無理のない運動や、屋外に出る時間がとれない方には、2日に1回程度、湯船にゆっくり浸かる入浴も有効です。

500mlペットボトルをハーフで2本飲む

 暑熱順化には個人差がありますが、暑い環境で過ごす活動を始めて数日から数週間経つと体が暑さに慣れ、汗をかきやすく体温調整がスムーズにできやすくなると言われます。梅雨の晴れ間や梅雨明けのゴルフを意識して、今から準備しておくのがよさそうですね。

 とはいえ、暑熱順化は有効ですが、あくまでも体を暑さに慣らす準備的なものです。それ以外にも、日常生活面での体調管理やラウンド当日の十分な水分補給など、基本的な予防は欠かせません。

 日本ゴルフ協会の公式HPでは、「新型コロナ対策と熱中症予防(社会福祉法人恩賜財団済生会)」として、日常生活で大事なポイントを6つ挙げていますので、ここでご紹介しましょう。

1.定期的にマスクを外す(10分に1回1分外し、水分を補給する)
2.エアコンと換気(30分に数分程度換気する)
3.暑さに慣れる(適度に運動する)
4.こまめな水分補給(1日1.2~1.5リットルを目安に6~8回に分けてとる)
5.食事をしっかりとる(タンパク質を含んだバランスのいい食事をとる)
6.十分な睡眠で休養をとる(6時間程度の睡眠をとり体を回復させる)

「熱中症の予防として注目すべきは3から6です。3については、先ほどお話ししたとおりです。5、6は、ゴルフ当日の体調に影響しますので、しっかり守るべきでしょう。特に、前夜の睡眠不足、暴飲暴食や深酒は、熱中症のリスクを高めるNG行為ですので、しないように気をつけてください」

 また、4の水分補給については、塩分とセットで実行することが大切です。

「18ホールでどれくらいの量の水分をとればいいですか?と、よく聞かれます。18ホールを回ると、人にもよりますが1~2リットルは汗をかきますので、1時間で500mlの水分補充が目安になります。ハーフで500mlのペットボトルを2本携行したり、持ち運びのできる1リットルのドリンクタンクをカートに積んでもいいんじゃないでしょうか。飲むものは、塩分等が含まれているスポーツドリンクでも、水でもお茶でもOK。毎ホールこまめに、頻回に飲むことが大切です。歩行中にペットボトルを持ち歩いて飲んでもいいと思います」

「同時に塩分の摂取も忘れてはいけません。4時間以上に及ぶゴルフのラウンドでは、血液中のナトリウム濃度の低下が少なからず起こるからです。汗と一緒に塩分も排出されて塩分不足を招くと、軽症では、筋肉痛、筋肉のこむら返り、めまい、異常な量の発汗があり、さらに中等症になると頭痛、吐き気、嘔吐、倦怠感、虚脱感、意識障害の症状が見られます。重症になるとけいれん発作や意識障害を招いて、さらに命を落とすこともありますので、手軽に塩分をとれる塩飴やタブレットを利用することをオススメします。私自身、ラウンド中はハーフで2~3個は塩飴を口に入れるようにしていますよ」

「ハーフで500mlのペットボトル2本と塩飴3個」は、ゴルファーを熱中症から守る“命綱”と言えそうですね。朝、ハーフ分だけでも自宅から持っていったり、途中のコンビニで事前に用意するのがベターでしょう。ただ、18ホール回るにはその倍くらい必要になります。あらかじめ多めに用意していくか、後半は食堂の氷水サービスがあれば利用する、なければコンビニで買うより高いかもしれませんがゴルフ場で買い、不足させないことが大事です。

予防も大事だが「プレーをやめる」勇気が重要

 そのほかにも、帽子、日よけ傘、速乾冷却素材のウエア、ネッククーラー、冷却スプレー、アイスパックなど熱中症対策グッズを積極的に使うことで、体に熱がこもるのを防げます。また、自分の打順がくるまでは、できるだけ日陰や風通しのいいところで待つようにしましょう。

 さて、暑熱順化、水分・塩分補給、冷却グッズなどで熱中症の予防をするのはもちろん大事ですが、それでもいざゴルフ場へ行って熱中症にかかるリスクは誰にでもあります。内科医は、改めて3つの確認をしてアドバイスを締めくくりました。

「1つは、高齢者や基礎疾患のある人は、暑さ指数(WBGT)が赤や橙の時はゴルフを見合わせることです。もう1つは、健康なゴルファーでも立ちくらみやこむら返りといった症状が出たときは熱中症1度(軽症)の可能性があります。ここから急変してあっという間に2度(中等症)へ進んでしまわないよう、体の異変を感じたら無理はせず速やかにプレーを中断する勇気を持つことが大事です。最後の1つは、同伴者が熱中症になっていないか、プレーヤー同士で見守ることです。本人が熱中症だと気づかず、プレーを続けて病状が進行してしまうときもあるからです。他のプレーヤーが熱中症かなと思ったときは、まず名前を呼ぶなど声をかけてください。応答が鈍いときは意識障害の可能性があって危険ですので、途中でもプレーを中断してすぐ応援を頼んでください。ゴルフは個人プレーですが、このときはチームプレーで見守りましょう」

 応援を頼むとともに、日陰に移動して服をゆるめ、体を冷やし(脇の下、首の外側)、水分・塩分を補給します。他のプレーヤーはその場に付き添い、熱中症になった人を早めにクラブハウスへ戻すよう協力してください。

 ゴルフ場が多くある地域の救急医療体制は、市街地とは違います。早めに、無理せず、命を守る行動をシミュレーションしておくことも大事です。

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