“19番ホール”は飲み会の意味だけじゃない! 海外のゴルフ場で“リアル19番”が珍しくない深いワケ

最近ゴルフを始めた人にはあまり馴染みがないかもしれませんが、ベテランゴルファーはラウンド後の飲み会や集う店のことを「19番ホール」と言ったりします。でも、海外のゴルフ場では実際にプレーできる「リアル19番ホール」も珍しくないようです。その理由とは?

もともとは「クラブハウス」の別称

 最近は耳にする機会がめっきり減りましたが、ゴルフには「19番ホール」という隠語、スラングがあります。20年ほど前までは、ゴルフにアルコールは付き物、プレー後の飲酒は当たり前のように考えられていました。

ジュンクラシックCCのレストラン「田舎家」には「十九番穴」の別称が
ジュンクラシックCCのレストラン「田舎家」には「十九番穴」の別称が

 そこで使われた隠語が「19番ホール」で、例えば「最後はいつもの19番ホールで」というように、プレー後に飲食を楽しむ場、お店を差す言葉でした。

 実は、もっといかがわしい意味の隠語でもあるようですが、ここではスルーします。

 ちなみにネットで「19th hole」を画像検索すると、冒頭に1995年、セントアンドリュースで行われた全英オープンの画像が現れます。それは、18番グリーンに闖入(ちんにゅう)した男性ストリーカーの後ろ姿で、背中に自分のお尻を差す「↓」(矢印)と「19th HOLE」の文字が書かれています。

 話を元に戻します。

 日本では、ゴルフ場からの帰りに再度集うお店を「19番ホール」と呼んだり、実際にそれを店名やキャッチフレーズに付けるお店もありました。

 一方、ゴルフの故郷・スコットランドでは、「19番ホール」はもともとクラブハウスの別称でした。同地では、プレー後はクラブハウスで飲酒し、語らうのが一般的で、「真のラウンドは19番ホールで終わる」という言葉があるほどです。

 また、コースやその周辺にある、ゴルファーが利用するパブやバー、レストランも「19番ホール」と呼ばれているようです。

 日本でも、国内最古のゴルフ倶楽部である神戸ゴルフ倶楽部(兵庫県)はホームページで、ハウス内の飲食スペース(バー、レストラン、テラス)を「19番ホール」と総称して紹介しています。

 同じく長い歴史のある川奈ホテル(静岡県)では、メインバーを通称「37番ホール」(川奈ホテルのゴルフコースは大島コースと富士コースの計36ホールあるため)と呼称。また、趣向を凝らしたリゾートコースとして知られるジュンクラシックCC(栃木県)のレストラン「田舎家」には、「十九番穴」の別称が掲げられています。

「リアル19番=エクストラホール」でマッチの決着をつける

 ところが、世界には18番ホールのあとに、リアルにプレーできる19番ホールを設けたゴルフ場が少なくありません。

 最近では、タイガー・ウッズがアメリカ・ミズーリ州に設計したパブリックコース「ペインズバレー・ゴルフコース」の「19番ホール」が世界的に注目を集めました。

 2020年、その開場記念イベントとして、タイガー&ジャスティン・トーマス対ローリー・マキロイ&ジャスティン・ローズによるチャリティマッチが開催されました。マッチプレーによる両チームの対戦は18番ホールでもオールスクエアで、決着はアイランドグリーンの19番ホール(123ヤード、パー3)へ。

 結局、そこでトーマスがバーディーを奪い、タイガー&トーマス組が勝利したのでした。

 この例から分かるように、リアルな19番ホールは、18番ホールを終えてもオールスクエア(マッチイーブン)のときに決着をつける。あるいは、マッチプレーで負けた側が「プッシュ」(掛け金を倍にして、最後のひと勝負を挑むこと)をするために用意された、距離の短いホールなのです。

日本ではなかなか根付かない「リアル19番ホール」

 日本でも、最近の例では横浜CC(神奈川県)が人気設計家チームのビル・クーア&ベン・クレンショーが西コース改造を依頼したした際に、10番ホールとアプローチ練習場の間に「リアル19番ホール」を新設しています。

 また、今年の日本女子オープンを開催した紫CCすみれコースでは、同じくアメリカの著名な設計家ダミアン・パスクーツォとスティーブ・ペイトのチームが、改造の際に18番ホールとクラブハウスの間にある池の横に19番ホールを設けました。パスクーツォは「どうして日本には19番ホールがないんだ?」と、不思議がっていたそうです。

 その疑問も含め、19番ホールに関して、日本ゴルフコース設計者協会の理事長であり、ゴルフの歴史や文化に詳しい川田太三さんに話を伺いました。

「スコットランドではゴルフのあと、仲間と近くの行きつけのバーでお酒を飲みながら、わいわいやる文化がありました。それがクラブの始まりで、その後、それぞれがコース周辺に自分たちのクラブハウスを建て、その中のバーで楽しむようになったのです。ですから、カーヌスティーには3つのクラブハウスがあり、セントアンドリュースでは9つのクラブがそれぞれクラブハウスを持っているわけです。そのハウスのことを洒落て19番ホールと呼ぶようになったのです」と、事の始まりを教示してくれました。

 実際のエクストラホールを19番ホールと呼ぶようになったのは、そのずっとあと、とのことです。

 実は、川田さんは自身がコースを設計・監修したイーグルポイントGC(茨城県)に70ヤードほどの19番ホールを造ったそうです。しかし、利用者は少なく、間もなく姿を消したとのこと。

「日本には、エクストラホールで勝負の決着をつけたり、ベット(ニギリ)でプッシュするという遊びの文化がないからで、仕方ないですね」(川田さん)

 歴史上、英米では大きな額や財産を賭した賭けゴルフが横行。スコットランドで過去たびたび「ゴルフ禁止令」が発令されたのは、賭けゴルフによる社会秩序の乱れを抑えるためだったそうです。

 しかし、そうした伝統は今も軽いベットとして一般に楽しまれ、そのためにリアルな19番ホールを用意。そして、ベットの報酬としてクラブハウスの19番ホールでご馳走する文化も定着しているのだそうです。

「19番ホール」は、個人のスコアをつけることが中心の日本には根付きにくいゴルフ文化と言えるかもしれません。

【写真】“最恐打ち下ろし”19番ホール! フィニッシュでよろけるのは厳禁の400ヤード・パー3
1 2

最新記事