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PGAツアーへの4500億円投資は半分を選手が“山分け” もうリブゴルフは羨望の対象ではない!?

2024.02.13 舩越園子(ゴルフジャーナリスト)
リブゴルフ(LIV Golf) 砂場Talk(バンカートーク) 米国男子ツアー

1月31日、PGAツアーのジェイ・モナハン会長から、同ツアーが米コンソーシアム「SSG」とパートナーシップを結び、最大30億ドルの投資を得て「PGAツアー・エンタープライズ」を創設するという発表があった。“結婚相手”がサウジ政府系ファンドではなかったことで、PGAツアーとリブゴルフの関係にも変化が見えてきた。

「ペナルティーなしでPGAツアーに戻すべきではない」

 昨年6月にPGAツアーのジェイ・モナハン会長とリブゴルフを支援しているサウジアラビアの政府系ファンド「PIF(パブリック・インベストメント・ファンド)」のヤセル・ルマイヤン会長が統合合意を電撃的に発表して以来、ゴルフ界ではPGAツアーとPIFが手を取り合って新たな営利法人「PGAツアー・エンタープライズ」を創設することになるのだろうと思われていた。

提携を発表したPGAツアーのジェイ・モナハン会長とSSGのジョン・ヘンリー代表 写真:GettyImages
提携を発表したPGAツアーのジェイ・モナハン会長とSSGのジョン・ヘンリー代表 写真:GettyImages

 そして、マネーパワーをかざすPIFの方がPGAツアーより優位に立っている感は否めず、PGAツアー選手たちはPIFやリブゴルフに対する批判的な言葉をほとんど口にしなくなっていた。

 だが、1月31日にモナハン会長から発表された「重大事項」は、PGAツアーがPIFではなく米コンソーシアム「SSG」とパートナーシップを結び、最大30億ドル(約4480億円)の投資を得て「PGAツアー・エンタープライズ」を創設するという「大どんでん返し」の内容だった。

 今、注目すべきは「これによってゴルフ界に何が起こりつつあるか」「これから何が起こりそうか」ということである。

 すでに見て取れるのは、PIFが放っていた優位性が一気に地に堕ち、ルマイヤン会長にもリブゴルフ選手たちにも焦りの色が色濃く見えるという現実である。

 それとは対照的に、マネーパワーではPIFにはかなわず、言いたいことも言わずに寡黙を通していたPGAツアー選手たちが、SSGのマネーパワーを味方に付けた今は「水を得た魚」のように勢いを取り戻し、「リブゴルフ選手をペナルティーなしでPGAツアーに戻すべきではない」等々、すこぶる饒舌になりつつある。

 PGAツアー選手が失いかけていた自信や誇り、輝きを取り戻した一方で、リブゴルフ選手や関係者の顔色が青ざめ始めた。

 今、そんな空気が漂い始めている。

世界ランキングはデシャンボー167位、DJ218位

 リブゴルフの2024年初戦を制したのは、元PGAツアー選手でチリ出身の25歳、ホアキン・ニーマンだった。

 優勝賞金400万ドルを手に入れたニーマンは「次はメジャー大会で勝ちたい」と大喜びしながら今後の目標を語った。しかし、彼はこんな言葉を続けた。

「でも、その前にメジャー大会に出る資格を得なければならない」

 ニーマンは、これまで合計12のメジャー大会に連続で出場してきた。しかし、彼はすでに世界ランキングのトップ50圏外の74位(2月4日時点)まで下降しており、今年4月のマスターズ出場は、まず無理である。

 米スポーツイラストレイテッドによると、メキシコ出身のカルロス・オーティスは、リブゴルフへ移籍する際に「世界ランキングのポイントは、いずれ必ずもらえると約束されていた」と明かしたという。

「ポイントがもらえるまでに多少の時間がかかることは分かっていたし、ツアーとして一定基準を満たす必要があることも理解している。でも、リブゴルフには世界のベストプレーヤーが集まっているのだから、僕らはポイントをもらえて然るべきだ」

 オーティスのみならず、リブゴルフ選手たちは、みな「僕らはベストプレーヤー」「だから世界ランキングのポイントをもらうに値する」と口を揃える。だが、コトはそれほど単純ではない。

 リブゴルフが世界ランキングの対象ツアーとしての認可を求め、OWGR(オフィシャル・ワールド・ゴルフ・ランキング)に申請を提出したのは22年7月のことだった。審査や討議は遅々として進まなかったが、1年以上が経過した23年10月にOWGRはリブゴルフからの申請を正式に却下した。

 その理由は、予選カットなしの3日間54ホール、ショットガン形式、48名による個人戦と全12チームによるチーム戦の同時進行という独自の競技形式で行なわれているリブゴルフを「世界の他の24のツアーと公正に比較することができない」というものだった。OWGRのピーター・ドーソン会長はリブゴルフからの申請を却下したのは感情論などではなく、あくまでも「テクニカルな問題だ」としていた。

 だが、その「テクニカルな問題」が、今季はより一層の「難題」となりつつある。

 リブゴルフは昨年12月にPGAツアーのスター選手だったジョン・ラームを巨額の移籍料を支払って獲得した。

 しかし、世界ランキング2位のラームをキャプテンに据えるために既存の12名のキャプテンを引きずり下ろすわけにはいかず、新たにチームをつくらざるを得なくなった。

 そのため、今季からはチーム数が13に増え、新たなチームを構成するための人員確保も必要となり、さらにティレル・ハットンや米国のトップアマを勧誘して確保した。

 その結果、リブゴルフ創設時からの「4名×12チーム=48名」体制が崩れ、今季からは「4名×13チーム=52名」となり、さらには遊軍のような不思議で不可解な立ち位置の2名も加わって、個人戦は54名という中途半端な構成で行われている。

 こうなると、他のツアーと公正に比較し、それを数値化していくという「テクニカルな問題」は、これまで以上に難しくなったと言わざるを得ず、リブゴルフ選手が世界ランキングのポイントを得られるようになる日は、一層遠のいたと考えられる。

 昨年の全米プロで勝利したブルックス・ケプカのように、近年にメジャー優勝を果たした選手は当面はメジャー出場資格を保持しているが、それも優勝から5年あるいは10年が経過すれば、効力は失われてしまう。

 最終的に最も頼りになるのは世界ランキングだが、現在(2月4日時点)、トップ100以内に入っているリブゴルフ選手はわずか9名しかおらず、ブライソン・デシャンボーは167位、ダスティン・ジョンソンは218位。このまま進んでいけば、メジャー大会でリブゴルフ選手の姿が皆無になる日がやってくる。

最有力選手36名には7億5000万ドルの大盤振る舞い

 一方、PGAツアー選手には、うれしい「春」が訪れようとしている。米メディアの調べによると、SSGからの最大30億ドルの投資を得ることになったPGAツアーは、そのうちの約15億ドル相当の資本を約200名のPGAツアー選手に分配して付与することを決めたという。

 その第1段階では、合計9億3000万ドルが4つのグループに付与される。第1グループは過去5年間の成績やPIP(プレーヤー・インパクト・プログラム)で上位に入った36名に合計7億5000万ドル。第2グループは過去3年間の成績上位者64名に合計7500万ドル。第3グループはフルシード選手57名に合計3000万ドル、第4グループはキャリアを通じたPGAツアーへの貢献者36名に合計7500万ドルとされている。

 その後も、こうした資本の付与は継続される予定で、第2段階では現役のトッププレーヤーたちに合計6億ドルが付与されるなど、PGAツアーのすべての選手に恩恵がもたらされるよう、最大限、配慮されている。

 こうしたビッグな資本付与の制度は、リブゴルフからのビッグマネーの誘惑を振り切り、PGAツアーに忠誠を誓い続けてきた選手たちへのご褒美的な意味合いがあると見られ、今後もPGAツアーで戦い続ける選手たちにとっての大きなモチベーションになる。

 これまでは「ない袖は振れない」という様子で唇を噛み締め、寡黙を通してきたPGAツアー選手たちは、これからはビッグな旨味を得ていく一方で、大声で高笑いしてきたリブゴルフ選手たちは、喉から手が出るほど欲しているものが相変わらず得られず、我慢の日々となりそうである。

文・舩越園子
ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。百貨店、広告代理店に勤務後、1989年にフリーライターとして独立。1993年に渡米。在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続け、日本の数多くのメディアから記事やコラムを発信し続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。

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