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- “5億円黒字”で順風満帆の日本女子プロゴルフ協会 気がかりは“総会出席10・委任状999”という当事者意識の低さ
3月18日、第62回JLPGA定時社員総会が都内で行われた。「今日はよい報告ができました」と小林浩美(こばやし・ひろみ)会長が満面の笑みで話した通り、23年度は5億円超の黒字とJLPGAは順風満帆に見えるが……。
「テレビの放映権料、ネット配信による収益」
5億円超の黒字で日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)の将来は安泰なのか?
3月18日、第62回JLPGA定時社員総会が都内で行われた。総会後の会見には小林浩美会長と小田美岐、寺沢範美、松尾貴子の副会長3人が出席。事務局から「総会では事業報告と決算報告が行われ、若干の質問の後、承認された」という報告の後、もう少し踏み込んだ話が明かされた。
「今日はよい報告ができました。23年度は過去最高の黒字、5億円超です」と満面の笑みで話す小林会長。新型コロナウイルス感染拡大による試合の中止が続いたことや、新規事業であるツアーのインターネット配信で2020年から3年間赤字だった分を取り返すことができたという。
黒字に転じることができた理由としては「テレビの放映権料、ネット配信による収益」と続けた。主催者と交渉の末、22年から全試合JLPGAに帰属することになったテレビ放映権は、最初の年は移行措置期間として料金がは発生しなかったが、23年からは放映権料を取り、JLPGAの収入となっている。
インターネット配信については21年のシーズン終盤から始め、翌22年から全試合で行っている。赤字続きだったが「もともと3年間の先行投資案件。(予定より)前倒しで黒字になることができた」(小林会長)と、こちらも黒字に転換したという。
「ツアー全体をJLPGAが統括する方向で」という小林会長の言葉に滲むのは、悲願でもある全試合をJLPGA主催で行うこと。一部を除いてそれぞれ大会スポンサーが主催者となっている現在の状態からの転換を目指しているが、これが当初予定の25年から2年延期されたばかりだ。
主催者となれば収入も増えるが支出も増える。これまで企業スポンサーだった主催者の懐から出ていたものを自分たちで払う必要があるからだ。現在の主催者を中心にした特別協賛社からの収入は当然入るが、大きなお金の動きをJLPGAが自分たちでコントロールしていかなくてはならない。5億円超の黒字はその足掛かりでしかない。
全試合JLPGAの主催にすることを2年延期したのは、その準備が整っていないからにほかならない。27年までにどれだけ黒字を出し、金だけでなく自分たちで試合を行う準備ができるのか。課題は山積みだ。
「出席率は上げたいのですが、会員は全国にいるし……」
もう一つ気になるのは、笑顔の執行部とは対照的な一般会員の当事者意識の低さだ。この日の総会に出席したのはわずかに10人。1252人の会員総数に対し、出席10、委任状出席999人というのは、会員の2分の1以上という定足数を満たしているとはいえ、あまりに少ない。
シーズン中という時期ではあるが、ツアーでプレーしているのはウエイティングなどを入れても120名程度。総会日程が月曜日となっているのも、試合の合間に出席できるようにという配慮からだ。試合に出られない会員もたくさんいる。それぞれに事情はあるだろうが、いくらなんでも10人というのは、当事者意識のある会員が少なすぎるだろう。ここまで理事会に丸投げでは、組織としての機能に疑問が残る。
執行部側にも出席者を増やす努力が足りないのではないか。「出席率は上げたいのですが、会員は全国にいるし……」と、小林会長の答えも煮え切らない。リモートでの総会開催など手段を変えたり、定款変更などの措置や日程変更についても「難しいです」というばかり。どっちもどっちという状況だ。
試合数が多く、黒字に転換したのは喜ばしいことだが、ツアー全体を統括するためには、会員全体が将来を考える組織になるのがまず第一歩なのではないだろうか。
取材・文/小川淳子
ゴルフジャーナリスト。1988年東京スポーツ入社。10年間ゴルフ担当記者として日米欧のトーナメントを取材する。1999年4月よりフリーランスとしてゴルフ雑誌やネットメディアなどに幅広く寄稿。
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