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ミケルソンが札束でキャディーを“強奪”!? 大金持ちなのに“ハングリー”なリブゴルフの13人はマスターズを征服するか
いよいよ1週間後に迫ったゴルフの祭典、マスターズ。特別招待のホアキン・ニーマンを含めて13名のリブゴルフ選手が出場する。うち7名は過去のチャンピオンに絶好調のニーマンという豪華な布陣で、リブゴルフ勢はマスターズを征服するのだろうか。
マスターズチャンピオン7名を擁するリブゴルフ勢
いよいよ、あと1週間で賑やかなマスターズウイークがやってくる。そんな今、今年のマスターズに出場する合計13名のリブゴルフ選手が、どんなゴルフを見せるのかが少々気になっている。
13名のうちの12名は、合計20項目にわたる「マスターズ出場資格」を自力で満たした選手たちだ。12名のうちの7名(ジョン・ラーム、ダスティン・ジョンソン、パトリック・リード、セルヒオ・ガルシア、バッバ・ワトソン、チャール・シュワーツェル、フィル・ミケルソン)は、過去のマスターズチャンピオンゆえ、マスターズにはライフタイム(生涯)出場が可能である。
また、過去5年以内のメジャー優勝や世界ランキングによって今年のメジャー4大会すべてに出場できる資格を有する選手は、12名中6名いる(ラーム、ブライソン・デシャンボー、ティレル・ハットン、ブルックス・ケプカ、エイドリアン・メロンク、キャメロン・スミス)。
そして、13人目のホアキン・ニーマンだけは、既存のマスターズ出場資格を1つも満たしていないのだが、彼が昨年から今年にかけて“出稼ぎ”的に世界へ出て積み上げてきた実績がオーガスタナショナルから評価され、特別招待を授かり、2024年マスターズに出場するリブゴルフ選手は合計13名になった。
13名の中でゴルフ界の最大の注目を集めているのは、先週のこのコーナーでご紹介した昨年大会覇者のジョン・ラームだが、今週はラーム以外の注目選手の話をお届けしよう。
米メディアの多くがマークしているのは、2020年のマスターズ覇者、ダスティン・ジョンソンだ。あの年、ジョンソンはマスターズの大会記録を更新する通算20アンダーをマークして圧勝した。
マスターズ優勝スコアのそれまでの記録は、1997年のタイガー・ウッズと2015年のジョーダン・スピースによる通算18アンダーだったため、あの年のジョンソンは一気に2打も記録を更新し、世界を驚かせた。
実を言えば、ジョンソンはその3年前の2017年大会を「キャリアで最高」と自ら豪語するほどの絶好調の中で迎えながら、戦うことすら叶わずに終わってしまったことがあった。
開幕前夜に宿舎として借りていた民家の内階段から足を滑らせて転落。腰を強打したジョンソンは、翌朝、初日の1番ティーに一度は向かったものの、途中で足を止めてクラブハウスへ引き返し、そして棄権を表明した。
あの朝のジョンソンの悔しそうな表情は、今でも私の脳裏に焼き付いている。だが、もしかしたら、あの悔しい出来事を経たからこそ、彼は3年後の2020年に勝利を手に入れることができたのかもしれないとも思う。
22年にリブゴルフへ移籍したジョンソンは、同年にリブゴルフで初優勝を挙げ、昨年も年間1勝、今年も開幕早々の2月にラスベガス戦で勝利を挙げた。
「毎年少なくとも1勝以上」をPGAツアー時代にも目標に掲げ、実践してきたジョンソンは、リブゴルフでも文字通り毎年1勝を挙げ、今回も好調な状態の中でマスターズを迎えようとしている。
「僕は、本当ならグリーンジャケットを2着、手に入れることができていたはずだった」
言うまでもなく、棄権を余儀なくされた17年と勝利した20年のことを指しているのだが、済んだことは終わったことだ。今年のマスターズで2勝目を挙げて「本当の2着目」を羽織ってもらいたい。
絶好調のホアキン・ニーマンは優勝に“きっと絡む”
公の場に出れば、良くも悪くも必ず注目されるのは、米国のかつての国民的スター、ミケルソンだ。
すでにシニア年齢の53歳。しかし、21年全米プロで史上最年長優勝を果たし、昨年のマスターズでは2位タイ、今年1月のリブゴルフのジェッダ戦では6位タイに食い込むなど昨今も活躍しており、今年のマスターズでも「まだまだ行けるのでは?」と見る向きはある。
しかし、22年に移籍したリブゴルフでは一度も勝利を挙げられずにいる。つい先日は、8年もの長きにわたってミケルソンの相棒を務めてきた実弟ティムがキャディー業から引退することが報じられたばかりで、どうも身の回りが落ち着かない様子だ。
弟ティムの引退の理由は、ミケルソンによれば「ティムが家族を持ったことで、独身時代とは事情や環境が様変わりしたから」とのこと。
新たな相棒が必要になったミケルソンは、急遽、PGAツアーのベテランキャディー、ジョン・ヤーブロウを「信じられないほどの高額」で「強奪」することに成功。
ヤーブロウは、かつてPGAツアーのゲーリー・ウッドランドやビル・ハース、LPGAのモーガン・プレッセルといった有名選手の相棒を務めてきた熟練キャディーで、最近はPGAツアーのスコット・ストーリングスのバッグを担いでいたが、ミケルソンからの高額オファーに心を動かされてミケルソンの相棒キャディーへ転身したと見られている。
突然、相棒を奪われたストーリングスは、先週のPGAツアーのヒューストンオープンでは、大慌てでスイングコーチを臨時キャディーとして登録しつつ、新キャディー探しに追われるなど、とんだとばっちりを受けた。
ともあれ、今年のマスターズでは、オーガスタナショナルで3勝を挙げているミケルソンとヤーブロウの新コンビがどんな戦いぶりを披露するかに注目が集まっている。
今年のマスターズに出場する13名のリブゴルフ選手の中で、優勝争いに「きっと絡む」と見られているのは、オーガスタナショナルからの特別招待を受けて出場するホアキン・ニーマンだ。
25歳のニーマンはチリ出身。19歳でプロ転向し、PGAツアーにデビュー後は、わずか8試合目で初優勝を遂げた。
22年ジェネシス招待を制して2勝目を挙げ、トッププレーヤーの仲間入りを果たしたが、同年シーズン終了後にリブゴルフへ移籍。以後、彼の世界ランキングは下降の一途をたどっている。
しかし、マスターズ出場を切望するニーマンは、昨年12月にオーストラリアンオープンを制し、今季はDPワールドツアーでトップ5に3度も食い込むなど、リブゴルフ以外の場所へ出向いては好成績を重ねてきた。
そんなニーマンの自己アピールがオーガスタナショナルの目に留まり、日本の久常涼らとともに特別招待を授かった。
戦えずに獲りそこなったグリーンジャケットを3年後にしっかり手に入れたジョンソン。長年の相棒キャディーを失った直後に次なる相棒キャディーを高額で奪い取ったミケルソン。リブゴルフでビッグマネーを稼ぎつつも、世界へ“出稼ぎ”に出向き、自分を売り込み、オーガスタへの切符を手に入れたニーマン。
欲しいモノは、どんな手を使っても自分のモノにする――そんな意欲と姿勢が溢れ返る彼らは、今年のマスターズで必ずや注目を集めるはずである。
文・舩越園子
ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。百貨店、広告代理店に勤務後、1989年にフリーライターとして独立。1993年に渡米。在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続け、日本の数多くのメディアから記事やコラムを発信し続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。
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