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笹生優花が自ら受付に立つ“手弁当”のレッスン会開催 父・正和氏が日本のジュニア大会で「ひどくショックを受けた」こととは?
全米女子オープン2勝を誇る笹生優花(さそう・ゆうか)が日本のジュニアを指導するレッスンイベント、第4回「YUKA MEET & GREET 2024」が12月14日に飯能ゴルフクラブ(埼玉県飯能市)で開催され、中学1年生から3年生までの腕自慢のジュニア22名が参加した。
舞台裏の秘話を知るほど誰もが笹生ファンになる
全米女子オープン2勝を誇る笹生優花が日本のジュニアを指導するレッスンイベント、第4回「YUKA MEET & GREET 2024」が12月14日に飯能ゴルフクラブ(埼玉県飯能市)で開催され、中学1年生から3年生までの腕自慢のジュニア22名が参加した。
著名なプロゴルファーがジュニアを指導する催し自体はさほど珍しくはないのだが、この「YUKA MEET & GREET」には、笹生ならではの特徴があらゆる面に散りばめられていて、驚かされることの連続だった。
日本のゴルフ界においては、現役時代に活躍した選手が引退後「レジェンド」と呼ばれるようになってからジュニア指導に尽力するケースが多いのだが、笹生は23歳の現役バリバリでありながら、短いオフの間の貴重な1日を日本のジュニアのために費やすことを自身の喜びだと捉えている。
また、有名選手によるジュニアイベントの多くは契約先のスポンサー主導で企画運営され、イベント費用もスポンサーから拠出され、当日はすべてがセッティングされた場所へ選手がやってきて「出演する」パターンだが、笹生のイベントは自身の想いを存分にジュニアに伝えたいという意味で、ある意味、「笹生主導」の形が取られている。
運営や進行こそ専門会社に委託されてはいるものの、大会主催者「DREAM CHASERS MANAGEMENT」は笹生の母・フリッツィ―さんが代表取締役を務める会社とされており、大会協賛も1社による冠大会にはせず、笹生サイドの意向に理解を示してくれる複数企業に依頼することで、スポンサー色をできるだけ抑える形が維持されている。
そのぶん、笹生サイドが費用の多くを自己負担しているそうで、まさに「笹生&笹生ファミリー」が身を削るような形で開催されたジュニアイベントだったが、凍えるような寒さの中、子どもたちも笹生自身も、心の底から笑顔を輝かせた1日となった。
そして、舞台裏の秘話や裏話を知れば知るほど、誰もが笹生ファンになるに違いないと、あらためて実感させられた。
参加するジュニアの受付開始は午前8時20分とされていたが、誰よりも早く飯能GCにやってきたのは笹生で、7時すぎにはドライビングレンジで1人で球を打ち始めた。
その姿勢は、ジュニアに良い指導を行なうためには、まず自分自身の調子を整えるべく準備すべきと考える笹生のプロ意識の高さとこだわりの表れだった。
ウォーミングアップを終えた笹生はすぐさまクラブハウスへ戻り、ジュニアの受付ブースに自ら立った。1人1人に「おはよう」と声を掛け、その場でサインを入れた参加賞のキャップを手渡して朝の挨拶を交わす。
開会式後、全員でドライビングレンジへ移動。笹生がデモンストレーションを行った後に、ジュニア1人1人の個別指導に入った。進行上は「1人3分×22名=66分」という計算で予定が組まれていたが、笹生の熱心な指導は3分ではまったく足りず、どんどん延長されていった。
その後にチッピングレッスン、ランチ休憩を挟んで9ホールのラウンドという流れだったが、時間は押せ押せになっていった。
「ジュニアのレッスンでは、優花はいつもこんな感じで延びるんですけど、あの子は、自分は昼食も休憩もいらないから、その時間をレッスンに回したいって言うんです」とは、フィリピン出身の母フリッツィーさんの言。
「この時期はオフなんて呼ばれていますけど、この2週間、優花の休みは1日だけで、全然オフじゃないんです(笑)」
どんなに忙しくても疲れていても全力で子どもたちの指導に当たっていたところにも、笹生の高いプロ意識とこだわりが見て取れた。 そして、その「こだわり」には、楽しさと愛が溢れ返っていた。
母は娘がかわいそうに思えて「もうやめて」と何度も
「YUKA MEET & GREET」は、今年が4回目の開催だった。2022年12月に飯能GCで第1回が開かれ、第2回と第3回は静ヒルズCC(茨城県常陸大宮市)で開催。そして今年、再び飯能GCに戻ってきた。
その合間に国内で1度、そして今年11月には米テキサス州ヒューストンでもジュニアイベントを開いたため、笹生のジュニアイベントとしては、通算6度目の開催となった。
笹生がまだ幼かったころ、以前から交流があった飯能GC所属の鈴木寛プロから「飯能のロゴをパンツの後ろポケットに付けてプレーしてくれるなら飯能で練習してもいいと言っていただいて、大変お世話になった。だから、このジュニアイベントは飯能で開きたいと思いました」とは、父・正和氏の言。
「日本のジュニアの大会で、親が子どもを激しく叱りつけたり、親に怒られたくない一心で子どもがズルをする姿を見て、ひどくショックを受けました。ゴルフは楽しむことが第一。親は子どもにゴルフを楽しませてほしい」
そんな父・正和氏の言葉を聞くと、「そう言っているお父さんも、かつて娘を厳しく鍛えたではありませんか?」と首を傾げる方々も少なくないのではないだろうか。
かつて父・正和氏が笹生の足首に錘(おもり)を付けて走らせた下半身強化のための超ハードなトレーニング風景が、笹生が2021年に全米女子オープンを初制覇した直後にメディアで紹介され、大きな反響を呼んだ。
「あれは優花が13歳のころに世界ジュニアや全米ガールズジュニアに出て、年上の有名ジュニアに飛距離で置いていかれて、もっと強くしてほしい、飛距離を伸ばしてほしいと泣きながら言ったから、やったんですよ」
父・正和氏が「つらくなるぞ。それでもいいのか」と念を押すと、笹生は「いい」と答えたそうだ。しかし、父親には娘から嫌われたくないという複雑な想いもあり、「『指導しているときは父親と娘は思いません。でも、どんなに厳しく指導されても絶対にお父さんを嫌いになりません』と記した誓約書を作り、優花にサインさせたんです」と、苦笑しながら明かしてくれた。
当時、母・フリッツィーさんは娘がかわいそうに思えて、「もうやめて」と何度も言ったそうだが、そのたびに父・正和氏は「娘が夢を追いかけるのを母親が邪魔するのかって言い返していました」。母・フリッツィーさんも「ずいぶん喧嘩しました」と懐かしそうに振り返っていた。
しかし、そんなハードトレーニングのそもそもの発端が笹生本人の自主性、自発性にあったこと、そして一方的に厳しく指導するのではなく、父と娘の双方が想いを共有し続けていたことは、傍目には超ハードに見えたトレーニングを、楽しくスリリングなゲームに変えていたのだろう。
「1年後の大会で、優花は以前はかなわなかった年上の選手たちに飛距離で勝ち、『仇を打った』と言って大喜びしました」
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