パッティングのストロークにこだわらなくなった
直近の2試合で5位タイ、3位タイと調子を上げてきた木下稜介が、ついに単独首位に躍り出た。初日はなんと7バーディ、ノーボギーの65をマーク。ラウンド後は自ら「完ぺきです」と認めるほどの内容だった。
奈良県大和郡山市出身の木下にとって、今回の開催コースである城陽カントリー倶楽部は比較的身近なコースだという。実家から車で1時間かからず、大阪学院大時代には大学の試合を開催することもあったという。
「プロになってからもオフシーズンには月に1度は来させていただいて、コースはよく知っています」と、ほぼホームコースといえる。
当然、攻め方も知り尽くしているが、最も気をつけたのがフェアウェイキープだった。グリーンが硬いため、ラフから打つとボールが止まりにくいからだ。「その意味では今日はフェアウェイキープができていたのでよかったですね」と満足げな表情を浮かべた。
今年の日本ツアーゴルフ選手権森ビルカップでツアー初優勝を飾り、続くダンロップ・スリクソン福島オープンでツアー2勝目を飾った木下。
その要因はアイアンショットの向上だ。今年から本格的に師事している奥嶋誠昭コーチと共に、その精度を上げる努力をしてきた。その結果、昨シーズンは65.11%(40位)だったパーオン率が、今シーズンは72.13%(3位)まで上がったのだ。
初日に65をマークできたのはティーショットでフェアウェイキープしたことも大きいが、確実にグリーンに乗せる技術があったからではないか。事実、この日のパーオン率も77.78%と高い数字を残している。
さらに、フジサンケイクラシックを終えた後、奥嶋コーチとパッティングについて話し合ったことも功を奏した。
「これまではヘッドをボールと目標を結んだラインに対して真っすぐ上げて、真っすぐ下ろすことにこだわっていましたが、それを意識しないようにしました。出球が思ったところに出ていればいいというイメージです」
結果、パッティングに対するストレスが減り、この日は15パットでホールアウトできた。
賞金王のタイトルは夢であり憧れ
奥嶋コーチといえば、女子ツアーで今季9勝を挙げ、賞金ランキングトップにいる稲見萌寧も門下生である。
現在、賞金ランキング2位につけている木下にしてみれば、奥嶋門下生で賞金王、賞金女王を独占したいところだが、悩ましい問題が浮上してきた。
「石川遼選手の記事を見て知ったんですが、ブリヂストンオープン終了時で賞金ランキング5位以内なら、米下部ツアーであるコーンフェリーツアーの来季出場権を賭けた予選会にファイナルステージから出場できるんですよね。仮に行くとしたら、終盤の3、4試合を欠場しなければいけません。そうなると賞金王は難しいかなと」
木下にとってみれば、賞金王は夢であり、憧れでもある。同学年でもある松山英樹、石川も獲得したタイトルだ。しかし、今年の全英オープンに出場し59位タイに入ったことで、海外ツアーへの思いがますます強くなった。たとえ、米下部ツアーであろうと、それが世界に通じる道ならば進んでみたいと思うのも無理はない。
今のところはどちらを選択するのか半々だが、その意味でも今大会に賭ける思いは強いという。「優勝すれば、賞金王の可能性もぐっと高くなりますからね」と、気合いが入る。
コースを熟知し、ショット、パットが好調と勝つための要素はすべてそろっている。あとは、賞金王に対する思いがどれだけ強いか次第だろう。大きな夢をつかむためにも残り3日間をフルスロットルで駆け抜けるつもりだ。