ルーキーシーズン出場全試合予選通過を達成した金谷拓実
ルーキーシーズンを賞金ランキング2位で終えた金谷拓実。
2013年の松山英樹以来2人目となるルーキー賞金王こそ逃したが、前評判通りの活躍をみせてくれたのではないだろうか。この金谷、実は松山でもできなかった“ルーキー史上初”のある記録を達成していた。

それは、出場全試合で予選通過というもの。金谷は20年9月の全米オープンでアマチュア生活に別れを告げ、同年10月の日本オープンでプロとしてのキャリアをスタートさせた。ここから国内ツアー20試合に出場し、そのすべてで予選を通過したのだ。
内訳は優勝が2回で2位と3位が1回ずつ、トップ10は計15試合を数えた。つまり、出場した試合のうち75%がトップ10だったということである。
最も順位が悪かったのが21年ダンロップフェニックスの31位。恐るべき安定感だ。
シーズンで一度も予選落ち(棄権や失格も含む)しないというのは、至難の業だ。
日本ゴルフツアー機構に各選手の年度別出場試合全成績のデータが残る1985年以降で「シーズン全試合の半数以上に出場」という条件付きで調べるとたったの16例しかなかった。うち日本人選手は以下の7例である。
■年度別出場全試合予選通過記録
選手 年度 出場試合数 賞金ランキング
尾崎将司 1988年 25試合 1位
藤木三郎 1990年 36試合 5位
中嶋常幸 2001年 22試合 9位
伊澤利光 2003年 17試合 1位
星野英正 2006年 23試合 8位
片山晋呉 2009年 19試合 4位
金谷拓実 2020-21年 20試合 2位
日本最強の名をほしいままにしていた尾崎将司ですら1985年以降の全試合予選通過は1度しかない。
安定感抜群の片山晋呉も1度きりだ。そして、7人中ルーキーシーズンで達成したのは金谷だけなのだ。
松山が国内ツアーを主戦場にしたのはルーキーシーズンの2013年だけ。海外にも積極的に出ていたため出場は13試合と少なかったが4勝を挙げて大差で賞金王の座に就いている。
だが、たった1試合、~全英への道~ミズノオープンだけは予選を通過することができなかった。
どんなトップクラスの選手でも、長いシーズンの中には苦手なコースがあったり、体調が整わなかったりと結果を出せないことがある。ましてルーキーであれば初体験の連戦続きで体力的にも厳しくなりがちだし、初めてプレーするコースも少なくない。
経験がある選手に比べてアドバンテージがあるとはいえない状況の中で出場全試合予選通過を果たした金谷のパフォーマンスは恐るべし、である。
守備的要素に圧倒的な強みを見せた金谷
金谷はそれほど飛ぶタイプではない。ドライビングディスタンスは287.11ヤードで部門41位。平均よりやや上という程度だ。
バーディ率は4.13(1ラウンドあたりバーディを4.13個取るということ)で部門5位、イーグル数は5個で部門45位と攻撃的な部分は際立っているわけではない。

強みは守備的な要素だ。パーオンできなかったホールでパーセーブ(チップインバーディも含む)する確率を表したリカバリー率は68.26%で部門1位、パーキープ率も89.32%で部門1位である。
つまり、派手にイーグルやバーディを奪うよりもきっちりとパーをセーブしていく力に長けているということ。これはゲームの組み立てが非常にうまいということでもある。
その結果、平均ストロークは69.73で堂々の1位に輝いた。日本では賞金王ばかりがクローズアップされるが、海外では平均ストロークの評価は非常に高い。
平均ストローク1位こそが実力ナンバーワンだという意見もあるほどだ。
同部門2位の星野陸也の数字は70.24だから金谷との差は0.51になる。
過去10年で2位に0.5以上の差をつけたのは13年の松山と15年の金庚泰だけ。大差と表現していいレベルなのである。
単純に計算すれば、金谷は4日間でほかの選手に約2ストロークの差をつけていたということになるわけだ。平均ストロークはプッツン切れて大叩きした大会があるとガクンと悪くなる。
金谷のデータはどんなコースでも、どんな条件でも、しっかりとスコアをつくり上げてきたことの証明である。