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渋野日向子らも無縁ではない! もはや米・欧の女子ツアーはリブゴルフに「100%イエス」!?
リブゴルフの話題ではどうしても米PGAツアーとの勢力争いにばかり目が行くが、実はノーマンらは女子ツアーにも食指を伸ばしている。欧州女子はすでにサウジ・マネーによって手なずけられ、米女子も時間の問題との見方も……。
PGAツアーは政界へのロビー活動で「ノー」を働きかけるも…
PGAツアーの選手たちがグレッグ・ノーマン率いる新ツアー「リブゴルフ」へ次々に移籍している真っ只中、PGAツアーがロビー活動を行なっていることが米メディアによって報じられた。
とはいえ、ロビー活動を行なうこと自体は、PGAツアーであれ、一般企業であれ、珍しいことではない。
だが、順調あるいは好調なビジネスの維持や向上を願って行なう「念押し」や「余裕」のロビー活動であれば、わざわざメディアによって報じられることはない。
しかし、今回に限って、あえてニュース化されたのは、そのロビー活動周辺から尋常ではない空気が伝わってきているからだろう。
米・ビジネスインサイダーのレポートによると、PGAツアーは世界的な多国籍法律事務所「DLAパイパー」にロビー活動を依頼し、すでに19万ドル(約2600万円)ほどを支払っているという。
もちろんDLAパイパーは、この件に関する米メディアからの問い合わせにはノーコメントだそうだが、ビジネスインサイダーによれば、依頼内容のリストの中に「サウジアラビアのゴルフリーグについて」という項目が含まれているとのこと。
米国大統領やその周辺、米国議会や政界の面々に対し、サウジアラビアのオイルマネーをバックにつけて創設されたリブゴルフについて説明し、なんらかの反対行動をお願いするという依頼なのだろうと推測される。
NBAレジェンドのバークレー「目の前のチャンスには100%イエス」
振り返れば、今年の春ごろまでは「リブゴルフへ移る選手はいるのだろうか?」と言われていた。
リブゴルフ移籍の噂が出回り始めたスター選手たちは、次々に噂を否定する声明を出し、「僕が戦う場所はPGAツアーです」と記してPGAツアーに忠誠を誓った。
3月のザ・プレーヤーズ選手権では、ジェイ・モナハン会長が選手会の場で「リブゴルフへ行く選手は、あそこから出ていけ!」と、部屋の出口を指さしながら声を荒げたほどだった。
だが、蓋を開けてみれば、6月のリブゴルフ初戦にはフィル・ミケルソンを筆頭にPGAツアー選手が17名も出場。忠誠を誓ったはずのダスティン・ジョンソンらも前言を翻してリブゴルフへ移籍し、6月末の第2戦では、ブライソン・デシャンボーやブルックス・ケプカらも、みな手のひらを返してリブゴルフへ加わった。
7月末に開催される第3戦からは、ポール・ケイシーらがさらに加わり、2023年ライダーカップの欧州キャプテンであるヘンリック・ステンソンまでもが、その責務を放り出す形でリブゴルフへ移る。
そんなふうに選手たちが五月雨式に移籍する傍らで、ノーマン側は試合中継を盛り上げるための「役者」も揃え始めている。
長年、PGAツアーやメジャー大会の中継でキャスターやレポーターを務めてきたデビッド・ファハティは、先週の全英オープンまでは米NBC局のTV中継の20名体制の現場クルーの1人としてセントアンドリュース入りして仕事をしていたが、全英オープン終了直後にリブゴルフへの移籍が報じられた。
さらに驚かされたのは、ゴルフ以外のスポーツのスター選手をリブゴルフの中継の文字通りの「役者」として登場させようとしていることだ。
元NBAのスター選手であり、プロバスケットボール界のレジェンドであるチャールズ・バークレーは、すでにリブゴルフから熱烈なラブコールを受け、契約書にサインする寸前だと米メディアが報じている。
バークレーいわく、「私に具体的に何が求められているのかはよく分からないが、私は目の前にチャンスがあれば、100%イエスと答える」。
欧州女子の選手の一部は「ゴルフ・サウジ」のロゴをつけてプレー
「100%イエス」というフレーズは、ノーマンの口からも聞かれた。
リブゴルフを立ち上げたことで、男子のプロゴルフ界を大揺れさせているノーマンは、米メディアから「女子のプロゴルフ界にも、いずれは手を伸ばすつもりか?」と問われ、「100%イエスだ」と答えた。
その言葉通り、というより、その質問を受ける以前に、すでにノーマンと“サウジアラビア勢”は女子ゴルフ界にもビッグマネーを投入する形で手を伸ばし始めている。
その手始めは、欧州女子ツアー(LET)だ。資金不足で倒産寸前だったLETはサウジのオイルマネーを得たことで息を吹き返し、今季はアラムコ・シリーズと名付けられた男女混合戦(チーム戦含む)を年間6試合も創設した。
それらの賞金総額は、いずれもLETの従来の試合の3~4倍に当たる100万ドル級とあって、シード権確保や自身の生活維持のためには、選手たちは政治的・宗教的な意見や信条はさておき、「アラムコ・シリーズ6試合への出場は絶対に不可避だ」と口を揃える。
だが、「不可避」と言いながらも、嫌々出場している雰囲気はほとんど感じられず、高額賞金の大会が創設されたことを喜ぶ空気と笑顔が広がっている。
すでにLETの女子選手たち数名がウエアや帽子に「ゴルフ・サウジ」のロゴマークを付けており、「サウジ・マネーが私たちの人生を変えてくれた」と感謝している様子だ。
米女子の試合会場でも「リブゴルフの話題一色になっている」
そんな欧州女子ゴルフ界の実例を傍目にしているからなのだろうか。米LPGAを率いるモーリー・マーコックス・サマーン会長はロンドンタイムスの取材に応え、今後リブゴルフから接触があれば「すべてのチャンスを生かすのは会長である私の責務です」と語り、ノーとは言わない姿勢を示したという。
「リブゴルフには、私たちの現在のゴルフとすり合わせて検討すべき点が多々ある。でも、選手たちがLPGAから離反してリブゴルフへ行ってしまったら、私たちLPGAは男子のPGAツアーのように対抗して持ちこたえる体力はない。バラバラに分解してしまうより、私はリブゴルフと協調したい」
米LPGA選手たちの中からも、同様の声が聞こえてきている。
クリスティ・カーは「自分の人生が様変わりするほどの大金を手に入れるチャンスに遭遇したら、LPGAの選手は全員、リブゴルフを選ぶはず」。
マリア・ファッシも「今、試合会場でもレストランでも、私たちの話題はリブゴルフ一色になっている。それぞれの価値観は異なるけど、ビッグマネーのオファーに対しては誰もがノーとは言い難い。だからと言って、LPGAに背を向けたいとは誰も思っていない。だから、LPGAがリブゴルフを協力して、誰にとっても良い方向へ動いてくれることを、みんなが望んでいます」と言う。
女子ゴルフの世界では「ノーとは言えないし、言わない」ことが、すでにコンセンサスとなりつつある様子。
一方、男子のPGAツアーは決してリブゴルフに「イエスとは言わない」構えを一層強め、「ノーと言ってね」と、ロビー活動も行なっている。
そんな「イエス」と「ノー」は、最終的にどう収束するのか。騒乱はまだまだ続きそうである。
文・舩越園子
ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。百貨店、広告代理店に勤務後、1989年にフリーライターとして独立。1993年に渡米。在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続け、日本の数多くのメディアから記事やコラムを発信し続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。
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