リブゴルフの“闇と謎” 来年からは不透明な「降格」「解雇」にビクビクする選手が続出!?

何かと話題には事欠かないリブゴルフ。第3戦の開幕直前、マスターズ2勝のバッバ・ワトソンがリブゴルフに加わることが発表された。来年のフォーマットも発表されたが、不透明な部分が多く、決して選手にとって“楽園”とは言えない実態も見えてきた。

マスターズ2勝のバッバも慌てて“椅子取りゲーム”へ

 米ニュージャージー州のトランプナショナルGCベドミンスターで開催されたリブゴルフ第3戦の開幕直前、マスターズ2勝のバッバ・ワトソンがリブゴルフに加わることが発表された。

中央のグレッグ・ノーマンと肩を組む日本人のみ(左から谷原秀人、木下稜介、稲森佑貴、香妻陣一朗)で結成された「トルクGC」のメンバーたち。日本企業のスポンサーを獲得しやすいという配慮だろうか 写真:Getty Images
中央のグレッグ・ノーマンと肩を組む日本人のみ(左から谷原秀人、木下稜介、稲森佑貴、香妻陣一朗)で結成された「トルクGC」のメンバーたち。日本企業のスポンサーを獲得しやすいという配慮だろうか 写真:Getty Images

 膝を故障しているワトソンは、今年5月の全米プロ以降は欠場を続けており、世界ランキングは先週の時点で86位まで後退。2018年以来、優勝からも遠ざかっている。そんな状況下でリブゴルフへの移籍を決意したのは、言うまでもなく、リブゴルフの“椅子取りゲーム”に焦りを感じたからだろう。

 ワトソンは肉体が「100%回復してからプレーしたい」とのことで、実質的には2023年からになる見込みだそうだが、9月2日からの第4戦にはチームキャプテンとして参加するとのこと。

 そのノン・プレイイング・キャプテンというものの具体的な参加方法や意味さえ不明な中、23年のリブゴルフの実施要領が先日、発表された。

 初年度の今年は年間8試合だが、23年は当初予定されていた10試合が上方修正され、14試合に増える。年間の賞金総額も今年の2億2500万ドルから4億500万ドルへと大幅アップされ、試合開催地も北米、南米、アジア、オーストラリア、中東、欧州という具合にワールドワイドになる。

 リブゴルフを率いるグレッグ・ノーマンは「新しい才能を惹きつけ、次世代のスター選手たちへ前例のない新たな道を拓いていく」と誇らしげだが、「前例のない新たな道」は、本当に選手たちにとって魅力的なものなのだろうか。

選手にビジネスを強いる「フランチャイズ」制度

「椅子取りゲーム」と書いたように、創設されたばかりのリブゴルフの今年の大会は、1試合につき48の出場枠が、ある意味、早い者勝ちで埋められている。

 しかし、今年の全8試合が10月末で終了したら、その後は、来年の14試合に出場する48名が固定され、年間を通じてその48名の顔ぶれは「変わらない」とされている。

 48名は4名1組のチームとなり、各チームは1名のキャプテンと3名のチームメンバーで構成される。そして、合計12チームが毎試合、個人戦と同時進行でチーム戦を戦うというフォーマット自体は、すでに実施されている今年と同様である。

 しかし、来年から大きく変わるのは、各チームが「フランチャイズ化」されるという点だ。それぞれのチームが独自のスポンサー企業を募り、ビッグなスポンサー、さらなるスポンサーを得るために、魅力的なプレーやパフォーマンス、ファンサービスなどを披露し、人気を高め、露出を増やすなどの努力をしていくことが求められる。

 ゴルフそのものの向上のための努力と「我がチーム」というフランチャイズを売るための営業努力やビジネス努力も求められることになる選手たちは、その分、多忙になり、ビジネスにまつわるあれこれにわずらわされる機会は間違いなく増える。

下位4名は「降格」と言ってもスター選手は安泰!?

 23年からはリブゴルフ独自のポイントシステムが導入され、毎試合、48名中の上半分に当たる上位24名にポイントが付与され、全14試合終了後、やはり48名中の上半分に当たる24名に翌年の出場資格が付与されるという。

 そして、ポイントランキングの下位4名はリブゴルフから「降格」となり、新設される「プロモーションイベント」と名付けられる予選会に挑んでリブゴルフへの敗者復活を図るか、すでにノーマン傘下となっているアジアツアーの「インターナショナルシリーズ」を主戦場とすることになる。

 たとえば、日本人選手が下位4名に入ってリブゴルフ降格となった場合は、母国の日本ツアーに出戻るという選択肢がある。だが、欧米ツアー出身の選手で母国ツアーの資格を停止されている場合は、残される選択肢はアジアツアーだけになる。

 ランキング上位24名が翌年の出場資格を得て、下位4名が降格するとなると、残りは20名という計算になる。しかし、そういう明確な計算は、どうやらリブゴルフにおいては成り立たない様子である。

 というのも、フィル・ミケルソンやダスティン・ジョンソン、ブルックス・ケプカ、ブライソン・デシャンボーといったスター選手たちは、あらかじめリブゴルフに参加する複数年契約を結んでおり、こうしたスター選手たちは、たとえランキングで下位の4名になったとしても「降格」されることはない。

 とはいえ、ミケルソンやジョンソンが4年契約と言われている以外には、誰が何年契約を結んだのかも、複数年契約を交わした人数も公表されていないため、ポイントランキングで下位4名に入ったとしてもリブゴルフに居残ることができる人数は不明のままだ。

 各チームのキャプテンも「降格」処分からは除外されると言われている。

 となると、複数年契約を結んでいるスター選手たち数名とキャプテン12名、そこにランキング上位24名、もしこれらのカテゴリーがかぶらない事態が発生した場合、出場資格が得られる人数は限りなく全員に近づいてしまう。

 つまり、ポイントランキングの意味はほとんど見い出せないということ。世界ランキングやフェデックスカップ・ランキングを意識して、せっかくリブゴルフ独自のポイントランキングを新設しても、相変わらず、リブゴルフへの参加資格にオープン性や公平性は創出されず、闇と謎に包まれ続けそうである。

自由を求めてリブに渡ったのにかえって束縛される?

 とはいえ、ポイントランキング下位の4名が「降格」となり、降格となった選手たちが、新設される「プロモーションイベント」なる予選会に参加して、リブゴルフへの復活に挑むという点だけは定かになった。

 しかし、各チームのキャプテンは降格処分から除外されるから、どんなにプレーが振るわなくても立場は安泰。一方、チームメンバーの3名はポイントランキングによって降格になるリスクを意識しながら戦う必要がある。

 だが、留意すべきは、この点だ。チームメンバーは、ポイントランキングで下位4名に入って降格されるより、もっと大きなリスクを常に意識する必要性に迫られることになる。

 年間の全14試合終了後、ポイントランキングで下位4名に入ることなく生き残ったとしても、チームのキャプテンやチームメンバーたちから「キミは我がチームにはいらない」と戦力外通告を出されたら、その通告はフランチャイズとしてのビジネス判断とみなされ、通告を受けた選手は翌年からの出場資格を失うことになるという。

 逆に、ポイントランキングで下位4名に入って降格になっても、どこかのチームから「ウチは1枠、空きが出たから、ウチに来い!」などと勧誘されたら、その選手は予選会に行かずとも、翌年は新たなチームの一員としてリブゴルフに復帰できるそうだ。

 言い方を変えると、キャプテンの胸先三寸、あるいはチームメンバーたちの合議、いや「ビジネス判断」によって、一人の選手の翌年以降が大きく変わることになる。

 4名1組のチームは「フランチャイズ」というビジネス組織となり、スポンサー企業との契約等々、各選手の収入に直接的に関わってくるため、キャプテン以下、チームが下すビジネス判断はどんどんシビアでシリアスになっていくことだろう。

 そんな環境下、各選手はわずか4名の狭い組織の中で、常にキャプテンやチームメンバーたちの顔色をうかがい、チームに貢献し、チームとともに年間全試合を戦い抜く重い義務を負うことになる。

 自分の意思で気ままに欠場することは決して許されず、試合中に大叩きして「腹が立った」「やる気が失せた」などという自分勝手な理由で途中棄権することは決してできなくなる。

 すでに移籍した選手たちは「リブゴルフにはPGAツアーでは得られなかった自由や楽しさがある」「余裕や時間が得られる」などと口を揃えており、初年度の今年は、お祭り状態ゆえ、そう感じられるのだろうと思う。

 しかし、年間全14試合出場の義務に縛られ、戦いの場がどんどんワールドワイドに拡大されてもすべて出場する義務を負い、さらにはフランチャイズの運営というプロゴルファーには不慣れなビジネス、チームという名のビジネス組織にも縛られることになる23年以降、彼らはどんな気持ちを抱くようになるのだろうか。

 もちろん、そのときが来れば分かることではある。だが、なにごとも、やっぱり石橋は叩いて渡るべきではないだろうか。

文・舩越園子
ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。百貨店、広告代理店に勤務後、1989年にフリーライターとして独立。1993年に渡米。在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続け、日本の数多くのメディアから記事やコラムを発信し続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。

【動画】リブゴルフ第2戦王者の仰天チップイン

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セルヒオ・ガルシア(ファイアーボールズGC)
フィル・ミケルソン(ハイフライヤーズGC)
ブルックス・ケプカ(スマッシュGC)
ダスティン・ジョンソン(4エイシーズGC)
谷原秀人(トルクGC)
ブライソン・デシャンボー(クラッシャーズGC)
ルイ・ウーストヘイゼン(スティンガーGC)
中央のグレッグ・ノーマンと肩を組む日本人のみ(左から谷原秀人、木下稜介、稲森佑貴、香妻陣一朗)で結成された「トルクGC」のメンバーたち。日本企業のスポンサーを獲得しやすいという配慮だろうか 写真:Getty Images
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