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冷静に見れば“自由”も“マネー”もPGAツアーが上!? リブ選手たちの矛盾だらけの主張
11名のリブゴルフ出場選手たちがPGAツアーから科された資格停止処分の取り消しを求め、訴状を提出。うち3名は、8月11日から開催されるプレーオフシリーズへの出場を許可する仮処分まで申請しており、審問は9日に開かれる。
自分の時間が欲しいのに「PGAツアーにも出たい」?
長年の主戦場だったPGAツアーに背を向け、グレッグ・ノーマンが今年6月に創始した新ツアー「リブゴルフ」へ移っていった選手たちは、「戦う場を選ぶ権利は選手にある」と声高に叫んだ。
そもそもPGAツアーのジェイ・モナハン会長は、リブゴルフが創設される以前の段階から、「向こう(リブゴルフ)に出場した選手のメンバーシップは即停止する。剥奪や永久追放もありえる」と何度も警告していた。
だが、フィル・ミケルソンやダスティン・ジョンソンを筆頭とする選手たちは、それでも次々にPGAツアーから去り、リブゴルフへ移籍。
なぜ、リブゴルフを選んだのか。そう問われたとき、彼らが口にしたのは、こんな言葉だった。
「PGAツアーよりリブゴルフのほうが優れていると思ったから、リブゴルフを選んだ」「PGAツアーは独裁的で、選手には自由がない。僕らのパフォーマンスを売り物にして潤っているのに、僕らには還元されない」「PGAツアーはスケジュールが過密すぎて休む間もない。家族と過ごす時間もない」
そして、リブゴルフなら「人間らしい生活ができる」「家族とゆっくり過ごせる」「自分の時間が持てる」「世界中を駆けずり回らなくていい」と口を揃えて絶賛した。
端的に言えば、「より少ない試合数で、より多くのお金が得られる」。だからハッピーだという意味だったのだろう。
それなのに、いざPGAツアーから資格停止処分を科されると、その取り消しを求め、11名の選手が訴状を提出。そのうちの3名は、8月11日から開催されるプレーオフシリーズへの出場を許可する仮処分まで申請しており、審問は9日に開かれる。
リブゴルフへ移ったときは「試合数が少ないから時間的余裕が持てる」と喜んでいたはず。それなのに、PGAツアーのプレーオフ3試合にも「やっぱり出たい」と言う。そして、PGAツアーの資格停止の取り消しが法廷で認められたら、彼らはリブゴルフにもPGAツアーにも「出たい」「出る権利がある」と言う。
そうなると、彼らが望む試合数は、どんどん増えていくことになるが、自分の時間が持てず、家族と過ごす余裕もない過密日程は、彼らの言葉を借りれば、「人間らしい生活ができない」ことを意味するのではないのだろうか。
どこからどう眺めても、リブゴルフへ移った選手たちの主張は、身勝手で矛盾だらけだ。
リブゴルフには出場試合を選択する自由はない
リブゴルフに移った選手たちは「リブゴルフが素晴らしい理想郷」だと言っているが、冷静に眺めれば眺めるほど、本当にそうなのだろうかと首を傾げさせられる。
まず、年間の試合数というアングルから眺めると、リブゴルフは創設初年度の今年は年間8試合ゆえ、「たった8試合しか出なくていいのに何億ドルものビッグマネーが楽に稼げる」効率的な理想郷のように見える。
しかし、2023年は当初の年間10試合の予定がいつの間にか上方修正され、一気に年間14試合へ増えている。8試合から14試合へ増えることは、ほぼ倍増に近いが、そこにリブゴルフ選手たちの意思や意向が反映されたとは考えにくく、一方的に増やされたと見るのが妥当だ。
そして、今年は1試合48名の出場枠が早い者勝ちの椅子取りゲームのような形で埋められつつあるが、来年からは48名の顔ぶれが完全にフィックスされ、1年間は入れ替わることがない。
言い換えれば、フィックスされた48名は、来年の14試合すべてに必ず出場する義務を負うことになる。私生活において何が起ころうとも、心身ともにヘトヘトだから今週だけは休みたいなどと思っても、全14試合に縛られることになる。
個人戦と同時並行で4名1組のチーム戦も行なわれるため、個人の欠場はチーム全体に影響を及ぼすことになり、その意味でも欠場は許されなくなる。言い換えれば、各選手たちはチームという小組織にも縛られることになる。
戦う場も、欧米はもちろんのこと、アジアや中東を含め、ワールドワイドに拡大され、転戦のための移動距離も今年のそれより大幅に長くなる。しかし、リブゴルフ選手たちは「長距離移動が強いられる大会は出たくない」とは、もはや言えない。なぜなら、全14試合に必ず出場することは、リブゴルフ選手に科される義務だからだ。
さらに言えば、ノーマンはアジアツアーを実質的に傘下に入れており、その中に新規に創設した10試合にわたるインターナショナルシリーズへの参加をリブゴルフ選手に早くも推奨している。
今年は年間わずか8試合ゆえ、エネルギーを持て余している様子のパトリック・リードなどは「喜んでアジアツアーにも出る」と今は意気込んでいる。
だが、来年、年間14試合が義務化された上に、アジアツアーにも喜んで出かけていくかどうかは何とも言い難い。
リブゴルフへ移った選手たちは年齢的にピークを過ぎつつある40歳代以上が多いことを考えると、彼らが強いられる来年以降の転戦は体力的に厳しいものになる。
そして、今のところはアジアツアー出場は「推奨」だが、今後は義務化される可能性もないとは言えない。
来年の年間試合数が当初予定されていた10試合から、いきなり14試合に拡大され、「独自のポイントシステム導入」や「ランキング下位4名の降格」など、新たな規定が次々に一方的に定められるリブゴルフでは、不透明で予想外の規定が、いつ湧き出すかわからない状態と言えそうである。
一方、先日発表されたPGAツアーの来季は年間47試合。試合数だけを比べれば、リブゴルフの14試合をはるかに上回っているが、この数字を単純比較する必要はない。
PGAツアーの年間義務試合数は「15試合」。そして、リブゴルフの14試合はフィックスされており、選手が取捨選択することはできないが、PGAツアーでは自分が出る15試合を自由に選ぶことができる。
「何試合出たら何週休む」という自分なりの出場パターンを作り、心身の状態やゴルフの調子と相談しながら、出場・欠場をコントロールしていく自由もある。
そして、体力気力、戦意が有り余っている選手、もっと稼ぎたいと思う選手は、義務試合数より多くの試合に出ることも当然できる。
そうした自由は、PGAツアーには昔も今もこれからもあるが、リブゴルフにはない。
PGAツアーの対抗措置で賞金面では逆転!?
それでは、「マネー」というアングルから、リブゴルフとPGAツアーの来季を見比べてみよう。
リブゴルフは1試合の賞金総額が2500万ドルで、その内訳は個人戦が2000万ドル、チーム戦が500万ドル。来季14試合の年間賞金総額は4億500万ドルだ。
一方、PGAツアーは年間47試合で、メジャー4大会を除いた43試合の賞金総額は4億2860万ドルだが、来季からはリブゴルフと同等の賞金が授けられるビッグ大会が驚くほど増やされる。
プレーオフシリーズ終了後の秋に2000万ドル級のビッグ大会が3つ新設されるほか、ジェネシス招待、アーノルド・パーマー招待、ザ・メモリアルなど合計6大会の賞金総額が各々増額され、1試合平均は2000万ドル級になる。
メジャー4大会もPGAツアーと足並みを揃えて同等の賞金アップを図ることが予想されるため、そうなれば、PGAツアーの選手たちには2000万ドル級が合計13大会も用意され、さらに彼らにはその中から出欠を選ぶ自由もある。
「いやいや、リブゴルフにはチーム戦の賞金もある」と反論されたら、PGAツアーは「いやいや、こっちには魅力的なボーナスがある」と胸を張ることができる。
フェデックスカップ・ボーナスは7500万ドル。コムキャスト・ビジネス・ツアー・トップ10は2000万ドル。PIP(プレーヤーズ・インパクト・プログラム)は5000万ドルで、ボーナス総額は1億4500万ドル。
こうして冷静に比較分析してみると、「どっちが理想郷か?」という問いの答えは自ずと見えてくる。
PGAツアーを自ら去っておきながら、資格停止の取り消しやプレーオフ出場許可を求めて訴訟を起こした11名の選手たちは、今ごろになって「逃した魚は実は大きかった」と感じ始めているのではないだろうか。
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