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タイガーの求心力で一致団結しつつあるPGAツアー 足並みの乱れや焦りが見えるリブゴルフ

2022.08.23 舩越園子(ゴルフジャーナリスト)
ジャスティン・トーマス タイガー・ウッズ リブゴルフ(LIV Golf) ローリー・マキロイ 砂場Talk(バンカートーク) 米国男子ツアー

リブゴルフの札束攻勢に押されっぱなしだった米PGAツアーだが、ここに来て巻き返しの気配が見える。その中心にいるのはタイガー・ウッズ。タイガーの求心力によってPGAツアー選手たちがまとまる一方、リブゴルフ選手たちは……。

「僕らにはタイガーがいるが、彼らにはいない」

 今週のPGAツアーは、プレーオフシリーズ最終戦のツアー選手権開幕を控え、フェデックスカップ年間王者のタイトルと18ミリオン(1800万ドル=約24億6300万円)のビッグボーナスを目指す選手たちが火花を散らしている。

今年の全英オープン本戦に先立って行われた第150回大会記念のラウンドを終え、ガッチリと握手を交わすタイガー・ウッズとローリー・マキロイ 写真:Getty Images
今年の全英オープン本戦に先立って行われた第150回大会記念のラウンドを終え、ガッチリと握手を交わすタイガー・ウッズとローリー・マキロイ 写真:Getty Images

 リブゴルフに絡む騒動に振り回されてきたPGAツアーだが、プレーオフ最終戦を迎えつつある今、ようやく世界一のプロゴルフツアーらしい輝きを取り戻しつつある。

 その転機となった1つは、8月8日の審問で、原告のリブゴルフ側が完敗し、PGAツアーに残っている選手たちが「やっぱり僕たちは正しかった」と確信できたこと。

 そして、もう1つは「やっぱり僕らにはタイガー・ウッズがいる」と確認できたことだ。

 プレーオフ第2戦のBMW選手権開幕前、ウッズは出場選手ではないにもかかわらず、プライベートジェットを飛ばし、フロリダ州の自宅からデラウェア州のウィルミントンCCへ駆けつけた。ちなみに、プライベートジェットには、自宅近くに住む“隣人”で“親友”のリッキー・ファウラーも同乗していた。

 ウッズは選手たちの諮問委員会のミーティングに続いて開かれた「特別な顔ぶれ」による緊急会議に出席。ウッズ以外には、世界ランキング上位15名などが参加したと言われている。

 議題はもちろん「リブゴルフ対策」。具体的な内容や結論といった詳細が公表されることはなかったが、この緊急会議の後、選手たちの表情に明るさが戻ったことは明らかに見て取れる。

 伝え聞いた情報によれば、会議の冒頭、ローリー・マキロイは「すごい助っ人が、ここに1人いる。僕のことではない。タイガー・ウッズだ」と高らかに紹介し、選手たちに向かって、こう呼びかけたそうだ。

「タイガーは誰もが尊敬するヒーローだ。彼の声はゴルフの世界では誰よりも響く。彼ら(リブゴルフ)にはタイガーはいない。でも僕らにはタイガーがいる。そして、僕らはどんどん様変わりしていく時代へ突入していくのだから、考え方や姿勢も時代に即して変えていく必要がある」

 だからPGAツアー選手であることに自信と気概を抱こうとマキロイは声高に叫んだ。

 ファウラー同様、ウッズの親友と呼ばれているジャスティン・トーマスは、こう語った。

「タイガーはZoomやテレコンファレンスでも事足りるところを、あえてジェットを飛ばし、会議の場に自分で足を踏み入れた。そうすることで、彼は自分のゴルフへの愛情やPGAツアーへのパッション(熱情)を僕たちみんなに示したかったんだと思う。そうやってタイガーが熱い想いを示してくれたことで、僕らがみんな自信やプライドを取り戻すことができた。タイガーは、そうするために、わざわざ飛んできてくれた。僕らがやるべきことは、自分たちを向上させること。いいプレーを心掛けること。それだけだ」

 それから数日後、緊急会議の内容が漏れ出し、ウッズがPGAツアーにリブゴルフ同様の予選落ちのない賞金2000万ドル級の上位60名限定の新規大会を年間18試合創設することや、PGAツアーを非営利法人から企業体へ転換することを提案したと、一部の米メディアから報じられた。

 その信憑性はさておき、ウッズが求心力となって、PGAツアー選手たちがまとまろうとしていることは確かだ。

訴訟開始の遅れで1年間は宙ぶらりんのリブ選手たち

 そんなふうにPGAツアーの選手たちが活気を取り戻しつつある一方で、8月8日の審問で完敗したリブゴルフ側には、明らかに焦りの色が目立ち始めている。

 そもそも、リブゴルフを率いるグレッグ・ノーマンは、PGAツアーの選手たちを勧誘する際、「移籍後も、PGAツアーにもメジャー大会にも出られるし、世界ランキングのポイントも稼げる」といった誘い文句を自信たっぷりに掲げてきた。

 しかし、8日の審問で3名の選手のプレーオフ第1戦への出場が否定されたことは、その後に控える法廷闘争の「本番」、つまりPGAツアーの反トラスト法(独占禁止法)違反を問う裁判の行方にも暗雲が垂れ込めたことが暗示されたと言えなくもない。

 これまでは次々にスター選手を引き込んで勢いづいていたノーマンだが、歯車がほんの少しでも狂い始めると、そこから先は狂っていく一方となるのではないだろうか。

 世界ランキング対象ツアーとしての認定に関しても、リブゴルフは申請中ではあるが、認定する側に米欧両ツアーやメジャー各団体の会長らが座していることを考えると、申請が通る可能性は決して高いとは言えない。

 世界ランキングのポイントが稼げないとなれば、リブゴルフ選手たちのメジャー4大会出場の道が閉ざされるのは時間の問題だ。

 焦燥感を募らせている様子のノーマンは「われわれリブゴルフのスター選手たちを除外したまま、正当なランク付けなどありえない」と怒声を上げている。

 そして、頼みの綱は法廷闘争の「本番」で勝訴することだと思ったところで、「本番」の公判の日時は、先日の審問でフリーマン判事が言及した「早くても2023年8月」からさらに遅れ、2024年1月8日になることが決まった。

 この決定は、来年1年間、リブゴルフの選手たちが、将来の道が開けるか閉ざされるかも分からないまま、不安な1年を過ごすことを意味している。

「コーヒーカップに至るまで許可を得なければならない」

 リブゴルフは、初年度の今年は試験的稼働ゆえ、リブゴルフと正式契約を結んでいない状態で参加した(している)選手もいる様子だが、来年からは48名全員が正式契約を結び、48名の顔ぶれが「コントラクター(契約者)」として固定され、正式稼働となる。

 そのための契約書のドラフト(草案)の一部が、先日、米ウォール・ストリート・ジャーナル紙によって報じられ、その内容に誰もが驚かされたことと思う。

 メジャー優勝したら100万ドル(約1億3600万円)が贈られるという項目は、相変わらずのマネーによるインセンティブではあるが、勧誘の際にちらつかせた1~2億ドルといった契約金と比べると、100万ドルは大幅グレードダウンのようにさえ感じられる。

 とはいえ、メジャー出場ができるかどうかも決まっていないため、この「アメ」は無意味になる可能性もある。

 驚くべきは、この「アメ」の金額のグレードダウンではなく、統制とも言える「ムチ」の数々だ。

「リブゴルフのロゴ入りのウエアを着用しなければならない」「許可なくインタビューに答えてはならない」「他選手をリブゴルフへ勧誘する手助けをするべき」「大会で使用する物品はコーヒーカップに至るまで許可を得なければならない」

 あくまでもドラフトゆえ、これらがどこまで正式な契約書に盛り込まれるのかは不明だが、リブゴルフの基本的な考え方や姿勢は「推して知るべし」であろう。

「そんな話、聞いてないよ」と驚いたリブゴルフ選手もいたのではないだろうか。

同じ国籍による「仲良しチーム」は近いうちに解体?

 この契約書草案の驚きの項目以外にも、リブゴルフからは寝耳に水のような話が、決定事項として突然発表された例が、すでにいくつもある。

 2023年シーズンからは4名1組のチームがフランチャイズ化され、スポンサー募集などのビジネス営業を求められること。シーズン終了後、48名中4名は降格となること。しかし、複数年契約選手や12名のキャプテンは降格の対象にはならないこと。

 キャプテンやチームから「戦力外通告」を受けた選手もキックアウトされ、他チームが引き取り手になってくれなければ、リブゴルフからは追い出され、降格になる。

 降格になった選手は、新設される予選会を経て、狭き門から復活するか、もう1つ残された道はアジアツアー行きだ。

 しかし、プライドが高く、我が強く、恵まれた環境でスポイルされてきた米欧の「元スター」たちが、厳しい環境のアジアでの転戦に耐えられるのかどうか、いやいや、耐えて戦おうという気になるのかどうか。

 現在は、たとえば谷原秀人ら4名の日本人選手が「オールジャパン」の形でチームを構成しているが、同じ国籍による「仲良しチーム」は近いうちに解体されるという話も聞こえてきている。

 すでに「オールイングランド」チームは、米ニュージャージー州で開催された第3戦からは、英国人キャプテンだったローリー・カンターが新たに移籍したスウェーデン人のヘンリック・ステンソンと入れ替えられた。

 9月2日から開催される第4戦からは、膝を故障中でプレーはできないバッバ・ワトソンがノンプレイング・キャプテンという前代未聞の立場で新規参加することが決まっている。「噂」では、7名のPGAツアー選手が移籍するとも言われている。

 新たに参加するスター選手によって、今度は誰がどこへ押し出されるのか。間違いなく、誰かに突然の「異動」命令が下されることになる。

「仲良しグループ」で楽しく戦い、「リブゴルフは理想郷だ」と言っていられる日々は、そろそろ終わりに近づいているのではないだろうか。

 折りしも、法廷闘争「本番」の公判日時が「2024年1月8日」と発表された際、原告のリブゴルフ側の人数が当初の11名から9名に減っていることがわかった。8月の審問の際にカルロス・オーティスが訴えを取り下げ、今回また1人、パット・ペレツが抜けた。そういえば、「リブゴルフは理想郷だ」と言ったのは、ペレツだったことを思いだした。

 裁判のみならず、リブゴルフからも「移ったけど、やっぱり抜けたい。PGAツアーに戻りたい」と言い出す選手が、今後、現れたりはしないだろうか。

 余計なお世話ながら、ついつい心配してしまう。

【写真】率先して全身に「リブゴルフ」のロゴをつけるマスターズ覇者パトリック・リード
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