たくさんのギャラリーが見ている中、バーディーフィニッシュ
◆米国男子プロゴルフ〈ZOZOチャンピオンシップ 10月13~16日 アコーディア・ゴルフ 習志野カントリークラブ(千葉県) 7079ヤード・パー70〉
PGAツアー・ZOZOチャンピオンシップ最終日、18番パー5で松山英樹がようやくギャラリーを盛り上げるゴルフを見せた。
ここまで1バーディー、3ボギーとスコアを2つ落とし、自分が描いた青写真とは真逆のゴルフとなっていた松山。最終ホールのティーショットも左の林に打ち込み、グリーンを真っすぐ狙えない状況だった。
やむを得ず2打目はフェアウェイに出すだけかと思われたが、果敢にも手にしたクラブは3番ウッドだった。グリーン右の林に向かって打つことになるが、しっかりとフックがかかればグリーンをとらえるチャンスはある。

「状況が状況なので、2オンを狙うことに迷いはありませんでした。どれぐらい曲げるかは考えず、とりあえず右の林を狙って打てば乗るかなと」。フックの度合いが小さければ、右のガケ下までボールが落ちることも十分あり得ただけに、多少強引な攻め方にも思われた。
しかし、あえて2オンを狙ったところに、ディフェンディングチャンピオンとしての意地が垣間見られた。
激しいインパクト音とともに打ち出されたボールはイメージどおりにグリーン右の林に向かって飛んでいく。しかし、左へは曲り始めたものの、曲がりが小さく、右のガケ下へと落ちると思われた。ところが、わずかに木の枝をかすめたことで軌道が修正され、グリーン手前のラフに落ちる。
そこから3打目をピタリと寄せたいところだったが、予想以上にボールが転がらず、約5メートルのパットを残す。初日から松山にとってはパッティングが課題となっていただけに心配されたが、見事にこれを沈めて、この日2つ目のバーディーを奪った。
「やっとタッチとラインが合い、自分の思ったストロークができました」と松山。ギャラリーからの大歓声と拍手を浴び、この日一番の笑顔を見せた。
「たくさんのギャラリーが見ている中、バーディーで終われて良かったかな」と、最後まで自分を応援してくれたギャラリーに感謝の意を表した。
14番でこの日の最長飛距離351ヤードを記録
もちろん、最後にバーディーを奪ったからといって、松山の気持ちが完全に晴れたわけではない。
「これだけ良くないゴルフをしていても“頑張れ”と声援してくれたのはうれしかったです。だからこそ本当にいいプレーを見せたかったのに、できなかった自分が悔しいです」とラウンド後に振り返った。
確かにこの日、松山らしからぬプレーは多かった。ティーショットでフェアウェイをとらえたのはわずかに3回。2打目以降ではスピンコントロールをうまくできず、パーオンしたホールでベタピンにつくことは一度もなかった。さらにパッティングも思うように決まらず、ストレスが貯まる1日だったのは間違いない。
ただ、随所にギャラリーを湧かせるプレーもあった。1番パー4ではティーショットを右のラフに入れながら、2打目をピン左1.5メートルにつけたし、3番パー3ではグリーン左のラフから打ち上げの難しいアプローチをロブショットでピンそば10センチにピタリとつけた。
さらに9番パー4でもグリーン右手前のバンカーから高い球でピンそば10センチに止める。14番パー5ではこの日のドライバーショット最長となる351ヤードを記録した。大会連覇を達成できなかったのは残念だが、ギャラリー的にも十分楽しめた18ホールだったのは確かだ。
松山英樹(まつやま・ひでき)
1992年2月25日生まれ、愛媛県出身。2013年にプロ転向し、同年は4勝を挙げてツアー初のルーキー賞金王に。14年から米ツアーを主戦場に戦い、21年のマスターズで日本人男子初の4大メジャー制覇を達成。同年は日本開催のZOZOチャンピオンシップを制し、22年ソニー・オープンでアジア勢最多タイのPGAツアー8勝をマーク。日本ツアー8勝、PGAツアー8勝。レクサス所属。