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- 【ざっくり解説】 PGAツアーとリブゴルフの統合話 なぜ大騒ぎになっているの?
衝撃的に報じられたPGAツアー、DPワールドツアー連合とリブゴルフの統合話。ふだん海外ゴルフをあまり見ていない人にとっては、「何をそんなに大騒ぎしているの?」という感じなのではないでしょうか。なぜ、この統合話がゴルフ界を揺るがす大ニュースとして扱われているのか、その疑問に“ざっくり”答えます。
これまでの関係性、経緯を知る人にとっては“青天の霹靂”
衝撃的に報じられたPGAツアー、DPワールドツアー(欧州ツアー)連合とリブゴルフの統合話。ふだん海外ゴルフをあまり見ていない人にとっては、「何をそんなに大騒ぎしているの?」という感じなのではないでしょうか。なぜ、この統合話がゴルフ界を揺るがす大ニュースとして扱われているのか、その疑問に“ざっくり”答えます。
米国時間の6月6日、PGAツアー、DPワールドツアー、PIF(パブリック・インベストメント・ファンド/リブゴルフ出資者)により、三者共同で新たに団体を設立し、それぞれが持つ事業や権利を新団体に移管する旨が発表されました。
普通に考えれば、より大きな世界規模の団体ができることで、プロゴルフツアーの存在感が高まり、ファンとしてもよりハイレベルな試合が観戦できる機会が増えそうなので、いいことづくめのようにも思えますが、PGAツアーら既存勢力とリブゴルフのこれまでの関係性、経緯を知っている人にとっては、まさに“青天の霹靂”なのです。
主にPGAツアーとリブゴルフは、後者が昨年6月にスタートしてから、もっといえば、水面下で新ツアー構想が進行中であると噂されてから、とにかく敵対関係にありました。その理由は大まかにいって以下のようなリブゴルフに対する批判や懸念によるものです。
1.お金で選手を強奪するかのようなリクルート活動
リブゴルフは昨年6月9~11日のロンドン大会からその歴史をスタートさせました。この初戦での賞金総額は2500万ドル(当時のレートで約32億円)、個人優勝400万ドル、団体優勝300万ドル(チームに支払われる金額)と、賞金自体が破格でしたが、有力選手については1億ドル単位の契約金で引き抜いたとされていました。
豊富な資金力をバックに、PGAツアーをはじめとした既存のプロゴルフ団体が育てた選手を強引に奪い去るようなリクルート手法に批判が集まり、リブゴルフの誘いに応じた選手に対しても、既存のツアーに残る選択をした選手やファンから「金で転んだ」といった軽蔑が浴びせられました。
2.サウジアラビアによる“スポーツウォッシング”なのではないかとの懸念
リブゴルフに潤沢な資金を提供しているのはサウジアラビアの政府系ファンド「PIF(パブリック・インベストメント・ファンド)」です。サウジアラビアは人権問題をたびたび指摘されており、リブゴルフの設立は“スポーツウォッシング”(スポーツを利用したプロパガンダ的イメージ戦略)なのではないかと懸念されてきました。
PIFのトップは、サウジの国営石油企業「サウジ・アラムコ」会長のヤセル・アル・ルマイヤン氏。PIFは世界最高峰のサッカーリーグ、英プレミアリーグの中堅クラブであるニューカッスル・ユナイテッドを傘下に収め、アル・ルマイヤン氏がクラブの会長に。2022-23シーズンはチャンピオンズリーグ出場圏内である4位にまで躍進させました。
3つのツアーを統合する新団体では、アル・ルマイヤン氏が「会長」のポストに収まり、PGAツアーコミッショナーのジェイ・モナハン氏がCEOとして舵を取る体制になると報じられています。今度はモナハン氏が“スポーツウォッシング”批判の矢面に立たされる可能性があるわけです。
3.しばしば“エキシビション的”と揶揄される大会フォーマット
リブゴルフの大会フォーマットは3日間54ホールで予選落ちなしというもの。その他、選手が全ホールに散らばって同時にスタートする「ショットガン方式」であることや、個人戦と並行してチーム戦が行われることも既存のツアーにはなかった点です。
この中で最も問題視されているのが“予選落ちがない”という点。WGCを含むPGAツアーにも予選落ちのない試合はありましたが、リブゴルフに関しては年間の全試合です。まったく成績が振るわない選手でも出場しさえすれば毎試合、高額な賞金がもらえる仕組みは、まるでエキシビションマッチであり、真剣勝負としては見られない、という声がゴルフファンから上がりました。
この点が一番のネックとなって、リブゴルフの大会に世界ランキングのポイントが付与されるまでは遠い道のりと見られていました。
また、リブゴルフの選手は予選落ちがないだけに少数精鋭。基本的に48名のツアーメンバーが固定で、参入のハードルが高いことも問題になっていました。現状、下部ツアーが整備されているなど、実力さえあれば這い上がれる仕組みがないためです。
ただし、予選落ちがない、54ホールと短いといったシビアさの欠如によりリブゴルフ移籍選手は競技力が低下するのではないかとの懸念は、度重なる同ツアー選手のメジャー上位進出、ブルックス・ケプカの全米プロ優勝により、払しょくされた感があります。
4.PGAツアー対リブゴルフの争いが法廷闘争に発展していたこと
最後に、PGAツアーとリブゴルフの争いが法廷にまで持ち込まれていたこと。リブゴルフがPGAツアーを反トラスト法(独占禁止法)で提訴し、PGAツアー側も反訴するなど泥沼の様相を呈していました。
裁判は24年の1月から開始される予定でしたが、準備段階ではリブゴルフが圧倒的に不利な状況と報じられており、少なくともPGAツアー側は最後まで強気で戦い抜くと見られていたからです。
この裁判も統合契約の締結により、すべて取り下げられることになりました。
※ ※ ※
以上の他にも、リブゴルフの発案者であり現CEOであるグレッグ・ノーマンのエゴイスティックな態度、エキセントリックな人柄や言動といった面も対立構造に拍車をかけたかもしれませんが、もはや個人のパーソナリティーに帰する規模の問題ではなくなっていたでしょう。
大まかに以上4つの問題が解消される気配がないため、大半のゴルフ関係者やファンは、「この敵対関係、いつ、どんな形で“軟着陸”させるつもりだろう」と思っていたのではないでしょうか。それが、まさかの“統合”という180度の急転回ともいえる発表がなされたため、“青天の霹靂”“急転直下”といった言葉が飛び交っているわけです。
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