- ゴルフのニュース|総合ゴルフ情報サイト
- 記事一覧
- ツアー
- 岩井明愛が “片手打ち”を選択した理由とは? 遊び心から生まれた歴史に残るチップインバーディー
多くのツアープロのコーチとして活躍している石井忍(いしい・しのぶ)が、“ここはスゴイ”と思った選手やプレーを独自の視点で分析します。今回注目したのは、「ニチレイレディス」で単独2位に入った岩井明愛(いわい・あきえ)。
片手打ちをを選択した決断力と実行力は見事
6月16~18日の期間、千葉県の袖ケ浦CC・新袖Cで「ニチレイレディス」が開催されました。通算17アンダーで優勝したのは、山下美夢有選手です。初日から首位を守り続ける完全優勝で今シーズン4勝目、ツアー通算では節目となる10勝目を挙げました。
そんな山下選手と最終日最終組でプレーしたのが岩井ツインズでした。姉の明愛選手は、今シーズンの「KKT杯バンテリンレディスオープン」でプロ初勝利を挙げたほか、今シーズンは2位が3回と好調で大会終了時点でメルセデス・ランキングは4位。
昨シーズン2勝の妹・千怜選手は、今シーズンもすでに2勝を挙げメルセデス・ランキングでは山下選手に次ぐ2位につけています。ちなみに、山下選手と岩井姉妹のペアリングは、「RKB×三井松島レディース」のプレーオフと同じ顔ぶれ。このときは千怜選手が優勝を飾っています。

さて、3人が最終日最終組でプレーした「ニチレイレディス」で話題になったのが、明愛選手の“片手チップインバーディ”でした。
歴史に残るミラクルショットが生まれたのは8番パー4。明愛選手の2打目は、グリーン奥のラフに転がってバンカーの縁に止まりました。スタンスをとりづらいこの状況で、明愛選手は「バンカーに足を入れて短く持って打つか、片手打ちか」と考え、片手打ちを選択。54度のウェッジを右手で持ち、体を開いて構えて打ったボールは、14ヤード先のカップに吸い込まれていきました。
優勝争いの中、片手打ちをイメージした想像力とこの打ち方を選択した決断力、そしてイメージ通りに打った実行力は本当に見事でした。片手打ちを選んだ理由について、彼女は「いつも練習の前に右手、左手の片手打ちをしているので」と語っていました。
たしかに、練習を始める前にドリル的な感覚で片手打ちをする選手は多くいます。実際、明愛選手も練習前に片手打ちをしているのでしょう。しかし、体を開いて構え、右手首だけで手前にかき込むような打ち方は、練習前のドリルからインスピレーションを得たというよりも、普段の“遊び”からひらめいた発想のように感じました。
遊びの打ち方を試してクラブ力学や体の使い方を学ぶ
私はジュニアたちにレッスンをする際に、「7番アイアンで誰が一番低い球を打てるか競争してみよう」などということがあります。
すると、彼らは「どうすれば一番低い球を打てるのだろう」と、試行錯誤しながらその打ち方を探します。実際のラウンドでは使うことのない技かもしれませんが、こういった“遊び”をすることで、クラブ力学や体の使い方を学ぶことができるわけです。明愛選手も、普段からそんな“遊び”をしていたからこそ、あのミラクルショットが生まれたのだと思います。
例えば、ボールを右寄りに置けば低い球が出やすくなりますが、「右寄りに置いて、逆に高い球を打つにはどうすればいいか?」など、みなさんも遊んでみてください。真っすぐ構えて真っすぐ打つ練習をすることも大切ですが、どのレッスン記事にも載っていないような打ち方を試すことで新たな発見があるはずです。
岩井 明愛(いわい・あきえ)
2002年7月5日生まれ、埼玉県出身。双子の妹・千怜(ちさと)とともに、高校ゴルフの名門・埼玉栄高のダブルエースとして活躍。同校を8年ぶりの全国高等学校ゴルフ選手権・団体戦優勝に導いた。21年にプロテスト合格。JLPGAツアーに本格参戦した22年はメルセデス・ランキング40位でシード獲得。23年「KKT杯バンテリンレディスオープン」で待望の初優勝を果たした。「RKB×三井松島レディス」では、山下美夢有と妹・千怜の3人による「ツアー史上初の双子でのプレーオフ」を実現した。Honda所属。
【解説】石井 忍(いしい・しのぶ)
1974年生まれ、千葉県出身。日本大学ゴルフ部を経て1998年プロ転向。その後、コーチとして手腕を発揮し、多くの男女ツアープロを指導。「エースゴルフクラブ」を主宰し、アマチュアにもレッスンを行う。
最新の記事
pick up
ranking