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“療養中”のモナハンPGAツアー会長はこのまま雲隠れ!? リブゴルフ側とともに米議会から召喚される事態に
6月6日に「PGAツアー」「DPワールドツアー」、そしてリブゴルフを支援するサウジアラビアの政府系ファンド「PIF」の3者が手を携えることに合意したことが突然発表されてから、PGAツアー選手たちの怒りはマグマのように溜まってきている。しかし、説明を尽くすべき肝心のジェイ・モナハン会長は体調不良を理由に雲隠れ。このまま職を辞するのではないかという観測すら出てきている。
温和なアダム・スコットが選手会で静かな怒り
「PGAツアー」「DPワールドツアー」、そしてリブゴルフを支援するサウジアラビアの政府系ファンド「PIF」の3者が手を携えることに合意したことが突然発表されたのは、6月6日(米国時間)の朝だった。
水面下で行なわれた交渉に携わったのは、PGAツアー側はジェイ・モナハン会長ら3名のみ。PIF側はヤセル・ルマイヤン会長以外に何人が関わっていたのかは明かされていないが、いずれにしても、わずか4~5名の限定的な人々によって、現状を180度転換するほどの事柄が合意され、電撃的に発表されたことは、その4~5名を除くすべての人々にとって大きな驚きだった。
発表された6月6日はRBCカナディアンオープンの週だった。試合会場では、すぐさま緊急の選手会が開かれ、急遽駆けつけたモナハン会長に選手たちは怒声を上げた。
「PGAツアーに忠誠を誓ってきた僕たちはバカを見たということか?」と怒りを露わにする選手は多く、サウジアラビアやオイルマネー、あるいはリブゴルフの試合形式やグレッグ・ノーマンCEOを批判し続けてきたモナハン会長の手のひら返しに「すっかり裏切られた」と、落胆する選手も見られた。
翌週の全米オープン会場では、これまで先頭に立ってPGAツアーの選手会を率いてきたローリー・マキロイが会見をキャンセル。「もう僕は語らない」という姿勢を示した。
すると、今度はモナハン会長が体調不良による療養を理由に、当面、業務から離れることが発表された。
その翌週は、PGAツアーの今季レギュラーシーズン最後の「格上げ大会」、トラベラーズ選手権だった。そこでも再び選手会が開かれ、モナハン会長不在の間に会長業務を代行するロン・プライスCOOとタイラー・デニス部長が出席。
議事進行役を務めたアダム・スコットは「僕にも思うところはある。PGAツアーを離れてリブゴルフへ行ったら、PGAツアーには2度と戻れなくなると思ったから留まった。それなのに、リブゴルフへ行った選手たちがPGAツアーに戻る道が今になってつくられようとしているなんて……」と、静かな口調に怒りを込めた。
しかし、交渉を直接押し進めてきたモナハン会長が不在では、選手たちの質問や疑問に答えることはできず、「結局、何も分からないという状況は、何も変わらない」という結果に終わった。
PGAツアーのモナハン、PIFのルマイヤン、リブゴルフのノーマンに召喚状
6月6日にモナハン会長が発した声明と、PIFとの交渉役を務めたPGAツアーのジミー・ダン理事のその後の説明を総合すると、「PGAツアー、DPワールドツアー、PIFの3者は営利法人としての新組織を設立する」「PGAツアーは現状と同じ非営利法人として、名称もPGAツアーのまま今後も存続する」「リブゴルフの今後はモナハン会長が統括する」といったことが、3者の間で合意されたと見られている。
この合意内容に対して、PGAツアーの選手たちが「それはおかしい」「そりゃないよ」と怒声を上げているのだが、声を上げたのは選手ばかりではなく、米司法省や米国議会までもが早々にアクションを起こした。
米司法省は、この統合が反トラスト法(独占禁止法)に違反する可能性を指摘して調査を開始している。
米国上院財政委員会は、米国で唯一最大であり続けてきたPGAツアーが、9・11同時多発テロ事件やジャーナリスト殺害事件との関与が指摘されているサウジアラビアと手を携えることが「米国にとって何を意味するのかを米国民は知る権利がある。統合に関わった中心人物たちは、それを公の場で説明するべきである」と声高に叫んだ。
そして、合意発表からほぼ2週間後の6月21日、米国上院常任小委員会はPGAツアーのモナハン会長、PIFのルマイヤン会長、リブゴルフのノーマンCEOの3名に召喚状を送り、7月11日に同委員会に出向いて質疑に応じるよう正式に要請した。
もはや、3者の統合合意はゴルフ界だけの問題ではなく、米国全体を巻き込むビッグスケールの出来事へと発展しつつある。
今週の選手会で「PGAツアーの今後」について話し合われるが…
今週、PGAツアーはミシガン州デトロイトでロケットモーゲージクラシックが開催されるのだが、そこでも再度、選手会が開かれ、「PGAツアーの今後」についての話し合いが行われる予定だ。
しかし、モナハン会長が質疑応答に加わらない限り、コトは何一つ進まないと思われる。
そして、米国議会から召喚されている7月11日の成り行きを見ないことには、この統合が本当に成立するかどうかも定かではない。
だが、「詳細不明の体調不良」とされているモナハン会長が7月11日に議会へ出向き、対応することができるのかどうか。
いやいや、これまでリブゴルフを激しく批判してきた米ゴルフウイーク誌のイーモン・リンチ記者は「果たして、モナハン会長は戻ってくるのかどうか。このままPGAツアーからいなくなることを彼が選んだとしても、それは不思議ではない」とまで書いており、米メディアの間では、モナハン遁走説がじわじわ広がりつつある。
もしも、その説が現実になってしまったら、それこそはモナハン会長の明らかな裏切り行為となる。そんなことは決して起こってほしくないし、そうならないことを願いたいが、「売り払って、とんずら」という話は、残念ながら、この世の中でしばしば見られるリアルなストーリーではある。
とはいえ、そんな話は、今はまだ妄想、推測、いや邪推にすぎず、選手たちは目の前にあるゴルフの試合に集中するしかない。
電撃発表直後のRBCカナディアンオープンでも、翌週の全米オープンでも、その翌週のトラベラーズ選手権でも、見ごたえある優勝争いが披露され、素晴らしいチャンピオンが誕生したことは、ゴルフ界の最大の窮地の中に見て取れる、せめてもの救いである。
文・舩越園子
ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。百貨店、広告代理店に勤務後、1989年にフリーライターとして独立。1993年に渡米。在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続け、日本の数多くのメディアから記事やコラムを発信し続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。
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