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“1ドル=240円時代”米ツアー取材の過酷実態とは!? 昭和のゴルフ記者は“命の危険”を冒して岡本綾子を追った【小川朗 ゴルフ現場主義】
輸入品の高騰により生活に大打撃を与えている記録的な円安ですが、今から40年前は1ドル=240円の時代。しかし、1983年には青木功がハワイアンオープンで優勝し、女子でも岡本綾子が米ツアーで活躍。現代の私たちからすればめまいがするほどドルが高くとも、ゴルフ記者は渡米取材を敢行しないわけにはいかなかったのです。
「プラザ合意」はなぜ20分で決したか
経済アナリストの伊藤理さんは、当時の状況をこう解説します。
「プラザ合意を契機にして一気に円高ドル安になって、日本では自動車をはじめとする輸出産業が大打撃を受けました。日本円の場合は1ドル240円だったのが、翌年には一気に150円まで暴騰しました。これによって輸出産業、特に自動車産業が打撃を受けて円高不況になりましたが、この円高は悪いことだけではなく、他方では原材料が安くなって国内消費が促進しました。つまりこの円高は、消費者にとっては好ましいことだったわけです。輸出業は円高になると海外で売れなくなりますから、輸出産業の打撃を和らげるために超低金利政策を取った結果、企業や個人による資金需要が大いに活性化しました。安く借りられる大量のマネーが株式や不動産などの投機市場に流れ込んで、バブルをもたらした後、1990年代初頭に崩壊しました」

伊藤さんは、続けて自らの見方をこう明かしました。
「大蔵大臣の竹下登氏がプラザホテルに呼び出された蔵相会議ですが、歴史に残る合意がたった20分程度で決まるものなのでしょうか。米国債を買っているのは日本政府だけじゃなく大手生保も同様です。その米国債に膨大な含み損が出て日本生命や第一生命、住友生命などが経営破綻の危機に陥った場合、日本経済が破綻してしまう。含み損と相殺させるために、彼らの株や不動産の価格を吊り上げる必要があって、政府、日銀による長期低金利政策を意図したのではないでしょうか」
大手生保を救うための政策。それが1980年代「昭和の円安」の裏にあったという見方です。一方で現在進行形の「令和の円安」について伊藤さんはこう解説してくれました。
「当時のアメリカ大統領は、共和党のロナルド・レーガン。民主党は金融業とか情報産業が地盤で、共和党は製造業が地盤です。金融・情報産業にとってはドル高が良くて製造業の人たちはドル安にしてほしい。だから民主党政権の時はドル高になりやすくて、共和党政権の時になるとドル安になりやすいという傾向はあるわけです。現在は民主党のバイデン政権。円安に誘導されていくのは自明の理、ということになります。今は株価4万円になって所得格差がすごくつき始めて、アメリカ的になってきているんですよ」
日本のアメリカ化、とは外国人投資家の持ち株比率が50%を超えたことが原因だというのです。
「よく出てくるチャートで、日本だけ実質賃金伸びてませんよ、というのがありますよね。各国が確実に伸びているのに日本だけがずっと横ばい路線を続けている。一般に『失われた30年』と言われるんですけど、これは一面的で本質は突いていないと思う。輸出産業は1ドル100円でも利益が出る体質を作るために人件費を含めた大幅なコストカットをやったんです。で、1ドル100円でも利益が出る体質を作ったのに、それを従業員に還元することは一切やってないんですよね。企業はただひたすら内部留保を積み上げているだけ。これだけ内部留保が積み上がったら、当然給料に還元できたはずなんですよ。日本だってフランスとかドイツとかアメリカとか、英国とかのような路線になったはずなんですよ」
「失われた30年」と「日本のアメリカ化」
しかし、そうはなっていません。先進国と日本の賃金格差は広がるばかりでした。その理由を伊藤さんはこう説明してくれました。
「大きな理由は日本のアメリカ化ということです。というのは、外国人持ち株比率はもう、日本の場合50%超えてますから。企業は言ってみれば外国に乗っとられてるようなもんなんですよ。そうすると、外国人の圧力ってのは、還元なんかしないってことで、言ってみれば『失われた30年』は演出された30年で、日本のアメリカ化をよく表していると思います」
民間銀行貸し出しが増えていないという指摘もありました。「貸しはがし」や貸し渋りをし続けた銀行に嫌気がさして、企業が内部留保を増やし続け、設備投資をするにも銀行から借りる必要がなくなったという側面もあるでしょう。
そうした状況下、伊藤氏は明治時代の“松方デフレ”を例に挙げました。
「日本は長期のデフレを経て令和に入ってからはインフレに転じていますが、明治時代にも“松方デフレ”と呼ばれる長期の景気停滞がありました。この松方デフレっていうのは当時の大蔵大臣だった松方正義による財政政策を通して引き起こされたデフレなんですよ。で、なんでこれが起こったかというと、当時の明治政府は戊申戦争や西南戦争などの膨大な戦費をまかなうために、金とか銀に交換できない紙幣である不換紙幣を大量に発行しました。それが原因で通貨価値、貨幣価値が下落し、インフレが発生して物価が上昇しました」
これを是正するために松方が仕掛けた“官製デフレ”だったというわけです。
「今のインフレは単純にこれ(松方が施策を打つ前の状況)です。要するに、アベノミクスでね。10年間にわたって大量異次元金融緩和政策をやって、マネーを刷りまくったら、そりゃあ、通貨価値、貨幣価値が下落してインフレが発生して物価が急上昇するでしょう。あんなアベノミクスみたいな異次元金融緩和政策のことを10年間もやったら当然こうなります」
「1980年代に共和党の大統領だったレーガン氏が共和党の大統領だったからホワイトハウスがドル安に誘導したかったというのはよく分かります。従って今回、トランプ氏が次期大統領になれば一気に円高ドル安になる可能性はあるとは思っています。そうすると、現在交渉されている日本製鉄によるUSスチールの買収も難しいと思います」
企業だけが儲かり、消費者が苦しめられ続けたのがこの30年。昭和と令和のデフレが異質なものであるものの、日本は相変わらずアメリカから強い影響を受け続けています。
取材・文/小川朗
日本ゴルフジャーナリスト協会会長。東京スポーツ新聞社「世界一速いゴルフ速報」の海外特派員として男女メジャーなど通算300試合以上を取材。同社で運動部長、文化部長、広告局長を歴任後独立。東京運動記者クラブ会友。新聞、雑誌、ネットメディアに幅広く寄稿。(一社)終活カウンセラー協会の終活認定講師、終活ジャーナリストとしての顔も持つ。日本自殺予防学会会員。(株)清流舎代表取締役。
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