- ゴルフのニュース|総合ゴルフ情報サイト
- 記事一覧
- コラム
- 群馬の“元ゴルフ場” 土砂崩れの危険がソーラー転用で増大!? 温泉街直撃の不安も/シリーズ『ゴルフ場減少時代』
群馬の“元ゴルフ場” 土砂崩れの危険がソーラー転用で増大!? 温泉街直撃の不安も/シリーズ『ゴルフ場減少時代』
本連載で過去3回に渡って取り上げた宮城県加美町でゴルフ場が地元の反対するなかメガソーラー発電所に転用されようとしている問題。2015年に閉場し、メガソーラーに転用された月夜野カントリークラブ(群馬県)が周辺住民を不安にさせている理由とは何なのでしょうか。
「地すべり地帯でゴルフ場も造成しちゃいけない場所だと思ってる」
ひとたび火事が発生したら消火作業ができないこともあるメガソーラー発電所は、土石流の恐怖も生んでいました。そんな状況なら、あなたは台風の夜、安心して眠れますか?

街道筋にいまだ残る「月夜野カントリークラブ」(2015年閉場・群馬県)の案内板に導かれて急な山道に入ると、延々と上りが続きます。わき道に入って下りに差し掛かったとたん、視界が開けました。そこには急斜面にへばりつくように敷き詰められた、おびただしい数のソーラーパネルの波が鈍い光を放っていました。
地元で気になる話を聞きました。
「月夜野カントリークラブの下に住んでいる湯宿温泉の方々が、ソーラーの会社にだいぶ怒っている。勝手に木を伐採したとかで、土砂崩れの危険が増したといって、木を植え直させたらしい」
そこで湯宿温泉に古くから住む方を直撃すると、こんな答えが返ってきました。
「あそこはね、土砂崩れもあったし、もともと地すべり地帯でね。私はゴルフ場を造成しちゃいけない場所だと思ってるんですよ、もともと。だから、あれを造成するときに、私も反対した経緯があるんです」
すでにゴルフ場を造成する段階から反対の声が上がっていたというのです。月夜野カントリークラブが開場したのは1985(昭和60)年。造成時ということは、40年以上前から反対されていことになります。
ゴルフ場は中国系資本の「カナディアン・ソーラー」に売却され、2015(平成27)年11月に閉場。「CS群馬太陽光発電所」として操業していました。「あそこ(月夜野CC)はとにかく危険な場所で、ゴルフ場の5番ホールの一番南側のところで大きな土砂崩れが起きた経緯があるんですよ。そこをそのまま造成しちゃっているわけなんで、またいつ同じことが起こるか分からない。そういう場所なのに、必要以上に木も切っちゃった。それで私どもも問題にして、新しく植林し直せということで、ミズナラを500本植えさせたんですよ。そんなことと排水の問題とかを、毎年チェックしに行ってるんですよ」(前出の地元住民)
実際に今年ソーラー発電所を視察した関係者にも話を聞くことができました。
「(今年視察に行った人数は)10人程度でしたが、皆、普段の生活をしてる人間で(地質学には)素人ですので、植林が何センチ以上に伸びていないとか、地層がどうとか、そういうことまでは分からない。だから整備されているかどうかの確認、あとはゴルフ場だったところが崩れていた形跡がないかとかをちょっと見るくらい。それで安全が100%担保できるかって言ったら、それは分かんないですよね」と、なんとも心もとない答え。
住民サイドはカナディアン・ソーラーに植林を要求したうえで1年に1度の現状チェックも継続中。それでも安心とはいかないようです。
前出の地元住民も「安心? 安心は得られませんよね。これから秋にかけて、雨が降るたびに気が気じゃない状況は続いているんですよね。安全なところなら別ですけど、危険なところなんだから町には条例を作れって言ってるんですよ。もちろん町にも陳情書は出しています」。
「一番心配してるのは操業が止まったとき」
そうは言っても、ゴルフ場から太陽光発電所に変わってしまってからも、町の動きは鈍いようです。

「一番心配してるのは操業が止まったとき、撤去を本当にしてくれるのかどうかということ。カナディアン・ソーラーが撤退してしまった後。あの会社は、どんどん転売している傾向がある。責任のないような形で業者は逃げちゃいますからね。ソーラーを全部撤去してちゃんと廃棄しなきゃいけないと思うんですけど、それも含めて放置されると、また土砂崩れの不安も続くということ。植林をちゃんとしてもらわなきゃいけないんです」
しかし、カナディアン・ソーラーは2020年12月16日に同社のホームページで「群馬新巻太陽光発電所の株式を日本の複数の匿名組合投資家に売却しました。長期契約に基づき、この発電所のアセットマネージャーおよび運用保守(O&M)サービスプロバイダーとして、当社は引き続きサービスを提供します」と発表しました。売却額は68億円。地元住民が危惧している状況が、確実に進行しているように見えます。
さらに、地元の人々は希少生物への影響も心配しています。
「ここは上信越高原国立公園の入り口で、大事な生態系を持ってるところなんですよ。イヌワシやクマタカが生息している有名な地域なんですよね。ゴルフ場として木を残しながらやれば、そういった生物多様性も保全できるんですけどね。メガソーラーじゃどうしようもないですよ」(前出の住民)
この連載で過去3回に渡って取り上げてきた、やくらいサイズゴルフ倶楽部(宮城県)の問題に関係しているカナディアン・ソーラーが、群馬でも住民を不安な状況に陥れていたわけです。同社に取材を申し込みましたが、8月7日現在、返信は依然としてなし。線状降水帯が全国各所で発生している今、住民たちの不安な日々は続いています。
取材・文/小川朗
日本ゴルフジャーナリスト協会会長。東京スポーツ新聞社「世界一速いゴルフ速報」の海外特派員として男女メジャーなど通算300試合以上を取材。同社で運動部長、文化部長、広告局長を歴任後独立。東京運動記者クラブ会友。新聞、雑誌、ネットメディアに幅広く寄稿。(一社)終活カウンセラー協会の終活認定講師、終活ジャーナリストとしての顔も持つ。日本自殺予防学会会員。(株)清流舎代表取締役。
最新の記事
pick up
-
ナイスショット連発で上重アナも仰天!? キャロウェイ「ELYTE」シリーズをラウンドで使用するとアマチュアにとって大きな恩恵が!<PR>
-
【連載コラム】なぜフォーティーンのクラブは人を魅了するのか? 美しいフォルムに宿る揺るぎない性能・その秘密を開発者に聞く<PR>
-
クラブと体の「接点」は重要! テーラーメイドのツアーボール「TP5」「TP5x」と「プレイヤーズ グローブ」は細部までこだわった逸品<PR>
-
もはやゴルフウエアに見えない!? 「& GOLF」が作り出した日常に溶け込める新定番ウエアスタイルでオシャレに街へ!<PR>
-
ゴルファーの9割は勘違いしている!? 超人気パターコーチが語った「モデル別アライメントボール」の正しい活用法
ranking