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- 「鉄拳制裁でジュニアを指導」は大昔の話じゃない!? 強制的にゴルフをさせられている子どもがプロになれない理由とは?
鉄拳制裁を伴うようなジュニアゴルファーへの指導は、令和になった今でもなくなっていないといいます。しかし、「ゴルフは楽しくないもの」と感じながら競技を続けていても、なかなかプロとして大成することはないようです。
親から受けた鉄拳制裁をゴルフ雑誌が徹底追求
ゴルフ雑誌の週刊ゴルフダイジェストが2024年11月26日号から短期隔週連載を開始した「ありがとうの闇」が話題になっています。
「ありがとうの闇」は現在ツアーで戦う小斉平優和選手と金子駆大選手がジュニア時代に親から受けた鉄拳制裁について赤裸々に語っています。小斉平選手は1998年5月22日生まれの26歳で大阪府出身。金子選手は2002年9月4日生まれの22歳で愛知県出身。2人とも3歳からゴルフを始めています。

第1話の見出しは「殴られたら上手くなるんですか?」です。金子選手は小学1年生のときから父親に手を上げられていたそうです。腕を蹴られ、包帯しながらパター練習をやらされていたこともあると衝撃の事実を告白しています。
小斉平選手はジュニア時代を振り返って「ボクも結構やられたからゴルフが楽しかった記憶すらないかもしれない」「普通じゃないかも思われるかもしれないですけど、本当に覚えていないんです」という言葉を発しています。人間の脳は防衛機制で嫌なことを忘れるようになっています。小斉平選手の脳は心の平穏を保つために鉄拳制裁の苦い記憶を忘れる防衛システムが発動したのでしょう。
ジュニアゴルフの世界を取材していると、鉄拳制裁まで行かなくても、試合でスコアが悪かった子どもに罵声を浴びせたり、子どもの年齢に応じた適切な練習量をはるかに超える練習を強制したりする親がいるという話を聞くことがあります。
野球やサッカーなどの団体スポーツであれば、親の指導が過熱しすぎたとき周りの大人が止めに入ることができますが、ゴルフは個人スポーツですから、よほど悪質な児童虐待でない限り「うちの家庭のしつけに口を出すな」といわれると、周りはそれ以上踏み込めません。
ゴルフは楽しくやらないと長続きしない
個人的にものすごく印象に残っている出来事があります。東日本大震災が発生した2011年にゴルフ場やゴルフ練習場の被災状況を取材するため宮城県を何度も訪れました。その際、被災地でお金を使うことが復興支援につながると思い、東北最大の繁華街である国分町(仙台市青葉区)でよく飲み歩きました。
国分町で働いている女の子たちと話すとき、ゴルフ雑誌の取材で東京から来たことを伝えると「私も昔ゴルフをしていました」という子がものすごく多かったのです。でも、その後に続く言葉は「今はやめちゃいました。自分がやりたかったわけではなく、親にやれといわれて始めただけですし、スコアが悪いと怒られるから、あまり楽しくなかったな」でした。
どうしてそういう女の子が多かったかというと、2003年9月に東北高校3年生の宮里藍選手が女子プロゴルフトーナメントの「ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープンゴルフトーナメント」でアマチュア優勝の快挙を達成したことが関係しています。宮里選手の快挙を目の当たりにした親御さんたちが、小学生の娘にこぞってゴルフをやらせたのです。
でも、ゴルフに限らずどんなスポーツでも、本人のやる気がないと長続きしません。せっかく子どもたちが自分からゴルフを始めるきっかけになったかもしれないのに、親が強制するなんてもったいないと感じました。
子どもにゴルフを強制している親御さんに伝えたいのは、連載第2話で小斉平選手が語った言葉です。
「ゴルフって球を打つのが得意なだけじゃ強くなれないんです。大人になってから気付いたんですけど、ボクは自分の気持ちややりたいことを上手く伝えることが苦手だなと」
「伝える順番とか、どこを強調するかとか。小さいころにもっと友だちとたくさん話をできてたら違っただろうなって思っています」
令和の時代になっても自分の意思ではなく親の意向でゴルフをしているのではないかと感じるジュニアゴルファーがいます。でも今は自分の意思でプロゴルファーを目指す選手が増えているので、親に強制されてゴルフをしている選手は将来プロになれない可能性が高いです。
そもそも野球やサッカーや他のスポーツは、プロになるのを諦めても、大人になってからも続けることが多いですし、60代や70代になっても元気に楽しんでいる人がたくさんいます。ゴルフも本来そういうスポーツですから、ジュニアからゴルフを始めた子たちが心から楽しめる環境を周りの大人たちが整えていかなければなりません。
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