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コラム

なぜ韓国選手は日本女子ツアーに来なくなったのか 海外挑戦を阻む“三重の壁”の正体【シリーズ・韓国女子ゴルフの現在地】

2026.01.30 キム・ミョンウ
シリーズ・韓国女子ゴルフの現在地 韓国

日本ツアーを目指す韓国選手が減少。制度の厳格化、日程の現実、拡大したKLPGAの成功が海外挑戦の必然性を薄めた。意欲低下ではなく構造変化が背景にある現状を探る。

 韓国女子ゴルフは、かつて「海外へ出て勝つ」ことで世界の中心に躍り出た。だが近年、その“挑戦の空気”が変わりつつある。米ツアー参戦者が減ったという現象だけではない。実はもう一つ象徴的な変化がある。かつて韓国選手がこぞって目指した「日本ツアー」へ、いまはあまり渡らなくなったことだ。

 なぜ韓国選手は海外へ行かなくなったのか。その背景には制度の壁、日程の現実、そしてKLPGAの成功が生んだ“国内回帰”がある。(文・キム・ミョンウ)

「日本参戦を希望する選手はそこまで多くない」

“キューティフル”ことパク・ヒョンギョン
“キューティフル”ことパク・ヒョンギョン

 2025年5月。国内メジャー初戦「ワールドレディスサロンパスカップ」に出場したパク・ヒョンギョン。韓国ツアー通算8勝の実力者で、「キューティー」と「ビューティフル」を合わせた“キューティフル”の愛称でも知られる屈指の人気選手だ。

 日本ツアー初参戦ながら8位タイでフィニッシュ。難セッティングにも対応し、記者との掛け合いを自然に楽しむ姿から“イ・ボミ2世”の呼び声もある選手が、堂々と結果を残した。

 当然、こうした選手が日本ツアーへ本格参戦する未来も想像しやすい。実際、本人も「KLPGA大賞(年間女王)の目標を達成したら、いつでも日本に行きたい」と話していた。しかし一方で、「日本参戦を希望する韓国選手はそこまで多くない」とも語っている。ここに時代の変化がある。

「プロテストに合格しないといけない」

 韓国選手の日本挑戦が減った理由として、最も分かりやすいのが制度の壁だ。パク・ヒョンギョンは、日本ツアー参戦の難しさについてこう説明した。

「今は日本ツアーの会員になるためにプロテストに合格しないといけないし、合格したあともツアー出場権を得るためにQT(予選会)も受けないといけない」

 2018年までは、日本のプロテストに合格していない「非正規会員」でもQT出場が可能だった。しかし2019年以降は正会員のみがQTを受験できる制度に変更された。非正規会員でQTからツアー出場権を得た韓国選手は、18年のペ・ソンウが最後。19年のアン・シネ、22年のジョン・ジユのように「プロテスト合格→QT」という正攻法を通るしかなくなった。

 これは裏を返せば、日本ツアーが「実力があれば誰でも入れる舞台」から、「入り口の時点で極めて狭い舞台」へと姿を変えたことを意味する。遠征費以前に、挑戦権そのものが得にくいのだ。

「日韓を行ったり来たりする難しさ」

 もう一つ大きいのが日程の問題だ。パク・ヒョンギョンは制度面だけでなく、現実として「KLPGA後半戦を欠場して日韓を行き来する日程調整の難しさ」も理由に挙げた。

 KLPGAは重要大会が集中する時期があり、ポイント争いも激しい。そこを欠場してまで日本のプロテストを受けに渡るのか――。

 国内スポンサーとの関係、露出、ランキング、そして「大賞」という分かりやすいタイトルもある。選手の価値を最大化するなら、韓国内で戦い続ける方が合理的になりやすい。

 かつての韓国選手にとって、日本は“出稼ぎ先”でもあり“最高峰への足場”でもあった。しかしいまは違う。KLPGAツアー自体が巨大化し、国内でスターになれる環境が整ったことで、海外に出る優先順位が下がってきていると言えるだろう。

「海外進出を考える選手は減っている」

 この点について、パク・ヒョンギョンははっきり言う。

「KLPGAツアーはすごく盛り上がっていて、賞金も上がっています。大会も増えているので、一昔前よりも海外進出を考える選手は減っているかもしれません」

 連載第1回ではKLPGAの規模拡大、第2回では競技環境の“易化”に触れた。そして第3回の論点は、その充実が「海外へ行く理由」そのものを弱めているという現実である。

 さらにパク・ヒョンギョンのマネジメント担当者は、日本で試合を視察した上で、「仮に韓国選手がプロテストに合格して日本ツアーに来ても、そう簡単には勝てないだろう」とも語った。日本の若手の技術レベルの高さを実感したからだ。

 挑戦のハードルが高く、勝てる保証も薄い。これでは“コストに見合わない”という計算が働いても不思議ではない。

 韓国女子ゴルフは弱くなったのではなく、“成功”したのだ。その成功が挑戦の必然性を薄め、制度の壁が入り口をさらに狭めた。

 韓国選手が「海外へ行かなくなった」のは単なる意欲低下ではなく、成功モデルの変質――そう捉えるべきだろう。

 次回は、では当事者たちは“日本の強さ”をどう見ているのか。サロンパス、そして日本のメジャー大会で語られた韓国4選手の証言から、日韓の差を現場目線で掘り下げていく。

キム・ミョンウ

1977年生まれ、大阪府出身の在日コリアン3世。新聞記者として社会・スポーツ取材など幅広い分野を担当。その後、編集プロダクションを経てフリーに転身。2010年、サッカー北朝鮮代表の南アフリカW杯出場決定後、日本メディアとして初めて平壌で代表チームを取材し、『Number』に寄稿。2011年から女子プロゴルフの取材も開始し、日韓の女子プロとも親交を深める。現在は女子ゴルフとサッカー、アスリートインタビューなどを中心に雑誌やWEB媒体に寄稿。著書に「イ・ボミ 愛される力」(光文社)。

【動画】これが韓国版“非常識ゴルファー”の実態 実際の映像です
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