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- 祝!復活優勝 渋野日向子の100ヤード前後のウェッジがビタビタと決まった理由とは?【石井忍のここスゴ!】
多くのツアープロコーチとして活躍している石井忍氏が、“ここはスゴイ”と思った選手やプレーを独自の視点で分析します。今回注目したのは、スタンレーレディスゴルフトーナメントで約2年ぶりに優勝した渋野日向子のウェッジショットだ。
渋野の遠心力を使ったスイングはウェッジショットにも有効
■渋野日向子(しぶの・ひなこ)/1998年生まれ、岡山県出身。2019年のAIG全英女子オープンでメジャー初制覇。同年は国内ツアーでも4勝をマークし、賞金ランキング2位と躍進した。それ以降、優勝から遠ざかっていたが、スタンレーレディスで1年11カ月ぶりとなるツアー通算5勝目(日米通算6勝目)を挙げた。サントリー所属。
渋野日向子選手が勝ちましたね。「勝てなかった2年間を思い出して……」と試合後にコメントしていましたが、2019年のAIG全英女子オープンを笑顔で制覇した時とは対照的に、優勝が決まった瞬間、涙を流していたのがとても印象的でした。
渋野選手がスイング改造に取り組んでいるのはご存じの方も多いはず。まだ手探りの部分もあるとは思いますが、試合ごとにショットが良くなっている印象です。積み重ねてきたものが、ようやく実を結び始めましたね。
現在のスイングは、体の左サイドでクラブを引っ張り下ろすのが特徴です。しっかりとトルクをかけて体を動かすため、遠心力が生まれて飛距離と方向性を両立することができます。
ショットのクオリティーが上がってきた渋野選手ですが、この試合で注目したのはウェッジショットです。まずは、15番ホール(パー4)の2打目。インパクトでフェースが開く方向に作用してしまい、ボールがすっぽ抜けて右手前のバンカーにつかまってしまいました。このホールをボギーとしましたが、続く16番ホールでチップインバーディーを奪って取り返したのは見事です。
15番と同じような状況が残ったのが、18番ホール(パー5)の3打目でした。100ヤード弱のウェッジショットをピン奥に着弾させ、バックスピンをかけてピン1メートルにピタリとつけました。1打差でトップを追いかけていた渋野選手は、土壇場でバーディーを奪ってプレーオフに進んだのです。
前述のように、渋野選手は遠心力を巧みに使ってスイングしますが、この動きはウェッジショットにも有効です。遠心力をかけてヘッドを動かすと、フェースが閉じる方向に作用しながらインパクトを迎えられるため、ボールとフェースの接地時間が長くなります。つまり、スピンをコントロールでき、キャリーを計算しやすくなるわけです。
「スピンをかける」というと、フェースを開いて構え、開いたまま打つと思っている人もいますが、これではボールをつかまえ切れず、スピン量が不安定になります。フェースを開いて構えても、フェースをターンさせてボールをつかまえることが重要なのです。
さて、18番ホールを使って行われた2ホールのプレーオフの末、渋野選手は勝利を手にしましたが、プレーオフでも精度の高いウェッジショットを見せてくれました。
1ホール目は残り約90ヤード、2ホール目は残り100ヤード強の3打目。いずれもピン奥にキャリーさせてバックスピンをかけ、ピンそばに寄せてバーディーを奪っています。同じミスを繰り返さない渋野選手の修正能力の高さ、ウェッジショットのクオリティーの高さを感じた試合でした。
ウェッジショットは「どこに着弾したか」を意識する
渋野選手は、4本のウェッジをバッグに入れ、状況ごとに使い分けているそうです。これも100ヤード前後のウェッジショットが安定していた要因ですが、やはり一番重要なのはボールをつかまえることです。
スピン量をコントロールすることでキャリーの距離がそろい、ピンに絡むショットを増やすことができます。練習場でもコースでも、ウェッジショットを打つ時は、「どこまで飛ばしたか」よりも「どこに着弾したか」を意識してみてください。キャリーを把握することが、距離感を磨く第一歩になるはずです。
■石井 忍(いしい・しのぶ)/1974年生まれ、千葉県出身。日本大学ゴルフ部を経て1998年プロ転向。その後、コーチとして手腕を発揮し、多くの男女ツアープロを指導。「エースゴルフクラブ」を主宰し、アマチュアにもレッスンを行う。
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