宮里藍が歴史を変えた!? 近年増えたアマチュア優勝の歴史を振り返る

　男子ツアーのパナソニックオープンでアマチュアゴルファーの中島啓太が優勝し、女子ツアーのスタンレーレディスでもアマチュアゴルファーの佐藤心結がプレーオフに進出。優勝争いに加わりました。

　若いアマチュア選手たちの活躍は素晴らしいことですが、なぜプロの試合にアマチュアが出場しているのでしょうか？

　それは各試合の主催者が出場権を与えているからです。主催者は出場資格を持たない選手に出場権を与える主催者推薦枠を持っています。対象者はプロゴルファーだけでなく、アマチュアのゴルフ大会で一定の成績を残した選手も含まれます。主催者がアマチュアゴルファーの経験を高めることに力を入れている場合、出場人数が多くなります。

　女子ツアー開幕戦のダイキンオーキッドレディスは、沖縄県在住者または沖縄県出身のアマチュアゴルファーを対象にした主催者選考会を開催しています。

　宮里藍サントリーレディスオープンは、新型コロナウイルス流行以前は日本だけでなくアジアパシフィック各国のアマチュアゴルファーに出場権を与えていました。

　大会名に名前が冠されている宮里藍は2000年大会で当時の史上最年少予選通過（14歳11カ月）を果たし、01年大会から03年大会まで3年連続でローアマチュア（アマチュアの中で最も成績が上位の選手）に輝きました。

　当時はプロの試合でアマチュアが勝つことは想定されておらず、アマチュアの最上位選手を表彰するのが通例であり、それは現在も変わりません。

　ところが彼女は、これらの経験を生かして03年9月のミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープンでアマチュア優勝を達成しました。この快挙によりツアー優勝者はプロテストの実技免除という規定が生まれ、日本のプロゴルフツアーの流れが一気に変わりました。

　女子ツアーのアマチュア優勝は21世紀に入るまで清元登子（1973年トヨトミレディス）ただ1人でしたが、宮里藍以降はキム・ヒョージュ（12年サントリーレディスオープン）、勝みなみ（14年KKT杯バンテリンレディス）、畑岡奈紗（16年日本女子オープン）、クリスティン・ギルマン（18年センチュリー21レディス）、古江彩佳（19年富士通レディース）の5人が達成しています。

　男子ツアーのアマチュア優勝も21世紀に入るまで倉本昌弘（80年中四国オープン）ただ1人でしたが、21世紀に入ると石川遼（07年マンシングウェアオープンKSBカップ）、松山英樹（11年三井住友VISA太平洋マスターズ）、金谷拓実（19年三井住友VISA太平洋マスターズ）、中島啓太（21年パナソニックオープン）の4人が達成しています。

　これほど多くの選手がアマチュア優勝を達成しているのはアマチュアゴルファーのレベルが上がっているからです。ゴルフはかつて経験がモノをいうスポーツと考えられていましたが、97年のマスターズで当時21歳のタイガー・ウッズが2位に12打差をつける圧勝劇を繰り広げ、若手選手でもベテラン選手の経験を上回ることができると証明しました。そこから海外ツアーも国内ツアーも若い世代が躍動を始めました。

　ただ、タイガー・ウッズはアマチュア優勝を達成したわけではなく、プロ転向してから活躍しています。米国男子ツアー（PGAツアー）の直近のアマチュア優勝はフィル・ミケルソン（91年ノーザンテレコムオープン）です。米国女子ツアー（LPGAツアー）の直近のアマチュア優勝はリディア・コ（13年CNカナディアン女子オープン）です。これらの記録と比較すると日本ツアーのアマチュア優勝の多さは際立っています。