「今でも思い出すと胃がキリキリしそう」
私は今季の日程をすべて終えて、今は韓国にいます。コロナ禍で、なかなか韓国に帰ることもなかったので、とにかく今は夫や母、姉妹たちと楽しい時間を過ごしながらリフレッシュしています。
日本ツアーは今週が最終戦ですよね。私も気になっているのが、稲見萌寧選手と古江彩佳選手の賞金女王争いです。最終戦の結果によって、どちらかが頂点に立つわけですから、見ているファンは楽しいと思います。ただ、選手にとってはすごく緊張しますし、重圧に押しつぶされそうになりながらの戦いを強いられます。
私も賞金女王を期待されていた当時を思い出すと、今でも胃がキリキリしそうです(笑)。私もそうしたプレッシャーがすごく嫌でした。2015年、16年と賞金女王になりましたが、追い抜かれるかもしれないという思いを抱えながら戦っていたので、すごく辛かったのを思い出します。
でも稲見選手を見ていると、そんなプレッシャーを感じている風には見えませんし、自分の持てる実力をすべて発揮できていると思います。古江さんもボギーを打たないですし、落ち着いたゴルフをするので、緊張していないように見えます。
2人とも笑顔をよく見せる選手ですし、最後までいい緊張感を楽しみながら試合をしてほしいです。ツアーがより盛り上がるという意味では、こうした戦いが大事でもあるので、私もすごく気になります。
「賞金女王は意識しない」は本音かウソか
そういえば、稲見選手も古江選手も「賞金女王はそこまで意識していない」と言っていると聞きました。そうは言っても、私の経験上、そこは嫌でも意識させられます(笑)。当時の私はどうだったかなと振り返ると「賞金女王になりたい」と話していたと記憶しています。それが目標だったので、隠すこともなかったです。
私が思い出すのは、14年に一時は賞金ランキングトップに立っていたところ、追い抜かれて最終的に3位になったのですが、そのとき初めて逆転される気持ちを知りました。悔しさを味わったあとは、絶対に手に入れるという強い気持ちがあったので、15年からは「賞金女王になる」という決意を自らよく話していたと思います。
稲見選手と古江選手の2人にとっては、それが本当の気持ちかもしれませんし、一方で見方を変えれば、そうした言葉はお互いの心理戦のような感じに取れたりもしますよね。いずれにしても目の前の試合でいいゴルフをして、結果的に成績が良ければ、賞金女王がついてくるといった感じだと思います。
今でも当時の2年連続賞金女王は、自分でも「思った以上の成績」だったと感じています。15年に7勝したとき、終盤戦の伊藤園レディスと大王製紙エリエールレディスで優勝できたのは、奇跡のようなプレゼントだったと今でも思います。このときは相当な重圧がありましたから、それだけ印象に残っています。
ちなみに15年はテレサ・ルー選手、16年は(申)ジエや笠りつ子選手と賞金女王争いをしましたが、そうした選手たちがいたから「一つも気を抜いてはいけない!」という心構えでプレーできたのだと思います。なので、ライバルはいないよりもいるほうがいい。
自分の技術や集中力を高めてくれる存在なので、稲見選手と古江選手も今週はものすごくいい試合をすると思います。新たなスター誕生に期待しましょう!
【プロフィール】
イ・ボミ/1988年生まれ、韓国出身。2010年に韓国女子ツアー賞金女王となり、11年から日本ツアーに参戦。15年に7勝、16年は5勝して2年連続で賞金女王となる。ツアー通算21勝。19年12月に俳優イ・ワン氏と結婚。愛称は“スマイル・キャンディ”。延田グループ所属