試合数が減少しているのにシード選手の数はほぼ変わらない
ツアープロにとって最低限の目標が何かと言えば、翌年の出場権が与えられる賞金シード獲得だろう。
トーナメントに出場できなければ1円も稼げないわけだから当たり前のことだが、現在、国内男子ツアーで賞金シードを与えられるのは65位までの選手となっている。

ちなみに、2年間に及んだ20-21年シーズンで65位になった小鯛竜也の獲得賞金額は1331万6436円だった。30試合開催されたシーズンだけにその金額となったが、25試合の開催だった19年の65位は1256万4132円だった。
遠征経費を除けば実質1000万円以下の収入となり、お世辞にもプロスポーツ選手として魅力ある金額とはいえないだろう。
もちろん、ツアープロの収入源は賞金だけでなく、一般企業やゴルフメーカーとの契約金もあるので、実質的にはある程度の年収にはなる。
それも試合に出場することが大前提であり、シード権を持っているからこそ企業が契約してくれるわけで、トーナメントに出場できなければ広告塔として成り立たず、わざわざ契約する必要もなくなる。
大半の選手が賞金額よりも翌年の出場権獲得にこだわる理由はそこにある。
ただ、65人もシード選手は必要なのだろうか。国内女子ツアーは年間で40試合近く開催されるが、上位50人しか賞金シードは与えられない。
男子ツアーも始まった当初は30人、83年から86年までは40人にしか賞金シードは与えられなかった。
この間の試合数は40試合前後あったにもかかわらずだ。87年から60人に増えたが、最盛期には44試合と試合数も増えていたことで違和感はなかった。
ところが、33試合だった00年から上位70人となり、30試合以下となってもその数は減らず、逆に14年からは変則だが上位75人に出場権が与えられた。
18年から現在の65人になったとはいえ、年間25試合前後の試合数でしかない。
現在の試合数を考えれば、多くても上位40人ぐらいが適正な数字かもしれない。それならば、40位の獲得賞金額は今年で2481万5657円となり、19年でも2315万7765円まで上がる。
賞金シードの枠が狭くなると、同じ顔ぶれになり、ツアーに新鮮味がなくなるという声もあるが、現在の男子ツアーでは、誰もが知っている選手をつくることのほうが優先されるべきだろう。
国内での競争力を高めなければ海外の試合で上位にいけない
仮に現在の65位から40位に賞金シード選手のラインを上げた場合、余った25人の枠はマンデートーナメントとファイナルQTに回してはどうだろうか。

もしくはトーナメントで15位以内に入った選手には次の試合に出場できるようにする(現在は10位まで)。好調な選手の出場機会が増えれば、白熱した試合も増える可能性は高い。また、ファイナルQTにしても、現在の20人枠は決して多いとはいえない。
1000人を超える選手がファーストQTにエントリーし、その中で上位に入った選手がセカンドQT、サードQT、ファイナルQTへと進んでいく。
その間、途中から各QTへの出場資格を持った選手も加わってくる。まさにファイナルQTで上位に入ることは、激しい競争を勝ち抜いてきた証明でもあるのだから、せめて30位ぐらいまで枠を広げてもいいだろう。
男子ツアーの場合、女子ツアーのようにプロテスト合格者でなければQTに出場できないという縛りはない。
そのため力のある外国人選手がQTの上位を占めたり、シード選手の枠を数多く埋める傾向にある。実際、19年は賞金シードの半数近くが外国人選手だった。
今後、コロナがどのように影響してくるのか分からないが、仮にQTからの出場枠を増やせばツアーで戦う外国人選手がさらに増加するかもしれない。
それでも、現状を維持するよりもあえて賞金シードの枠を狭くして、熾烈な争いを演出したほうが、面白い試合は増えるはず。例年、賞金王争いやシード争いが演じられる終盤戦は白熱した試合が多いことがそれを証明している。
企業との契約金も大切だが、ツアープロである以上、賞金を稼ぐことこそが本分であるはず。国内ツアーで外国人選手に賞金シードを簡単に明け渡すようでは、海外メジャーで上位に行くことはかなり難しい。
幸いにも力のある日本選手の若手が出始めてきた今こそ、競争力を高める方向に舵を切るべきだろう。