フォージドだからと言って打感が柔らかいとは限らない
特に男子プロはたいてい使っている「フォージドアイアン」。タイガー・ウッズや松山英樹選手もフォージドアイアン一筋の選手です。

フォージドアイアンと言うと、イコール軟鉄鍛造のアイアンだと思い込んでいる人も多いのですが、実は違います。
フォージドとは「鍛造」という意味で、「軟鉄」の部分まで指す言葉ではありません。アイアンの製法には鍛造と鋳造があります。鍛造というのは、金属素材を加熱してプレス機やハンマーで叩いて仕上げる製法。一方、鋳造というのは金属素材を完全に溶かしてから鋳型(いがた)に流し込み、最終的に冷やして取り出す製法。鍛造がフォージドと呼ばれるのに対して、鋳造アイアンはロストワックスやキャストと呼ばれています。
鍛造のメリットとしては製造過程からもわかるように、アイアンが完成してからも変形しやすく、ロフトやライ角の調整がしやすいこと。プロゴルファーがフォージドアイアンを選ぶ理由の一つに、微妙な角度や形状の調整をしやすいということもあります。
一方、鋳造アイアンは鋳型さえできてしまえば複雑な形状のアイアンも作れます。最近はキャビティ部分でもトゥ側とヒール側でキャビティの深さを変えているアイアンもありますが、それは鋳造アイアンだからできる形状です。
軟鉄鍛造の柔らかい打感に憧れている人は、フォージドではなくて、軟鉄素材のフォージドアイアンを探さないといけません。ただし、最近は軟鉄素材を作ったアイアンにも色んなタイプがあり、ボディは軟鉄でもフェースにはステンレス素材を使ったアイアンも増えています。
例えば、最新モデルで人気のフォージドアイアンのフェース、ボディーの素材を調べると下記のようになっていました。
主なフォージドアイアンの素材
APEX (キャロウェイ) フェース/ステンレス ボディー/軟鉄 製法/鍛造
Xフォージド(キャロウェイ) フェース/軟鉄 ボディー/軟鉄 製法/鍛造
P770(テーラーメイド) フェース/クロモリ鋼 ボディー/軟鉄 製法/鍛造(フェースのみ)
P7 MB(テーラーメイド) フェース/軟鉄 ボディー/軟鉄 製法/鍛造
ミズノプロ221(ミズノ) フェース/軟鉄 ボディー/軟鉄 製法/鍛造
ミズノプロ225(ミズノ) フェース/クロムモリブデン鋼 ボディー/軟鉄 製法/鍛造
スリクソンZX5(ダンロップ) フェース/クロムバナジウム鋼 ボディー/軟鉄 製法/鍛造
スリクソンZX7(ダンロップ) フェース/軟鉄 ボディー/軟鉄 製法/鍛造
201CB(ブリヂストン) フェース/軟鉄 ボディー/軟鉄 鍛造
202CBP(ブリヂストン) フェース/クロムモリブデン鋼 ボディー/軟鉄 製法/鍛造
表を見ても分かるように、大手メーカーはフェースもボディーも軟鉄素材のアイアンと、フェースだけ違う素材を使ったアイアンの2タイプをラインナップしているところが多いです。その理由としては、あくまで軟鉄鍛造アイアンに打感の柔らかさを求めるならフェースもボディも軟鉄のアイアンを、打感も求めるが飛距離も欲しいという人のためにフェースにステンレスやクロムモリブデン鋼を使ったアイアンを選んでもらうためです。
またタイトリストの最新アイアン「Tシリーズ」の「T100」は3番アイアンから7番アイアンまではヘッド素材にSUP-10(バネ鋼)を使っていますが、8番アイアンからPWまでは軟鉄と番手によって素材を変えています。
アイアン選びにこだわりが強いゴルファーは多いと思いますが、フォージドアイアンを購入する際には細かくフェースやボディの素材まで確認するようにしましょう。