渋野日向子の3番ウッドでの2オンは偶然の1打ではない
■渋野日向子(しぶの・ひなこ)/1998年生まれ、岡山県出身。2019年のAIG全英女子オープンでメジャー初制覇。同年は国内ツアーでも4勝をマークし、賞金ランキング2位と躍進した。2020-21シーズンは、スタンレーレディスゴルフトーナメントと樋口久子 三菱電機レディスゴルフトーナメントで勝利。国内ツアー通算6勝。サントリー所属
12月21日にJLPGAアワード2020-21が開催されました。
古江彩佳選手が受賞した年間最優秀選手賞や稲見萌寧選手が受賞した賞金ランキング第1位など、全12部門が発表されましたが、私が注目したのはメディア賞「ベストショット部門」です。
受賞したのは、樋口久子 三菱電機レディスを制した渋野日向子選手。同大会プレーオフの18番(パー5)でのセカンドショットです。今回は、この1打を振り返りたいと思います。

通算9アンダーで並んだペ・ソンウ選手とのプレーオフ。
ティーショットでフェアウェイセンターをとらえた渋野選手は、残り220ヤードの状況で3番ウッドを手にし、2オンを狙います。
ピンはグリーン左サイドに切ってあり、グリーン左手前にはバンカーが配置されています。狙い所は、グリーンセンターから右サイドということになります。
ポイントは、2打目地点のライ。微妙な左足下がりでした。ここでターゲットに対してスクエアに構え、スタンスなりに振ると、球が上がり切らなかったり、左方向にミスする可能性があります。しかし、だからといって無理に球を上げに行くのは、もちろんNGです。
渋野選手はこのシチュエーションで、打ち出す方向よりもやや左にスタンスを向けました。このセットアップをすることで、傾斜に沿ってヘッドを動かしやすくなり、スムーズに振り抜くことができます。
結果、グリーン左手前バンカーの右サイドにキャリーしたセカンドショットは、ピン方向にキックして3メートルにピタリ。これを沈めてイーグルを奪い、優勝を決めました。
「打球が少し左ならバンカーだったし、ピン左のあのポジションへオンさせるショットは、一生打てないかもしれない」と渋野選手はコメントしていましたが、このショットは決して偶然生まれた1打ではありません。
微妙な左足下がりにしっかりと対応し、スタンスを左に向けるというリスクヘッジをしたことで劇的な1打が生まれたのだと思います。
フェアウェイでもライの見極めが大切

アマチュアゴルファーの皆さんの中には、「絶好の位置からグリーンを狙ったのに、なぜかダフリ、トップが出た」という経験がある人もいるのでは?
このミスは、“微妙な傾斜”に対応せずスタンスをとったことが原因かもしれません。フェアウェイから打てる状況でも、フラットなライとは限りません。
自分自身の記憶に残るようなベストショットを打つために、しっかりとライを見極めてセットアップをしましょう。
■石井 忍(いしい・しのぶ)/1974年生まれ、千葉県出身。日本大学ゴルフ部を経て1998年プロ転向。その後、コーチとして手腕を発揮し、多くの男女ツアープロを指導。「エースゴルフクラブ」を主宰し、アマチュアにもレッスンを行う。