最低でも1年間は保管する選手が多数派
トーナメント会場やテレビ中継などで、ツアープロがティーイングエリアやセカンド地点で何やらメモを見ている姿を目にしたことはないだろうか。
これは一般的に『ヤーデージブック』と呼ばれるもので、ホールのレイアウトとグリーンの形状が記されている。主に残り距離を正確に把握することや、グリーンの傾斜を読むために使われるが、各選手はそこに練習ラウンドで気がついたことをどんどん書き込んでいく。

風向きやグリーンの芝目など、本戦で役に立つ情報をプラスすることで、オリジナルのメモが完成するわけだ。
いくらプロといえども、単にピンまでの距離を打っているだけではバーディーを量産することは難しい。万全な準備に加え、綿密な情報と当日の状況を正確に分析してこそ、ビッグスコアを出す土壌ができ上がる。
それでも思い通りにいかないところがゴルフの難しいところだが、気になるのはトーナメントを終えた後、ヤーデージブックをどのような扱いを受けるかだ。
ゴルフクラブと違い、コンパクトなものだけにすぐに捨て去られそうだが、そんなことはないという。男女を問わず、トーナメントは毎年同じコースを使用する大会が多いので、最低でも1年間は保管されることが多い。
といっても、翌年も使用するためではない。あくまでも翌年の大会を迎えたときの参考資料とするためだ。前年のヤーデージブックを持参し、ホールごとにどのように変わったのかをチェックする。同じコースを使用するといえども、細かいところを改造しているケースが意外とあるからだ。
例えば、新たにフェアウェイバンカーがプラスされていたり、ティーイングエリアを下げてホールを長くした場合、ティーショットの落としどころは変わってくる。
例年通りの攻め方をできなくなるが、それを記憶だけでなく、自分のメモで確認する。大会前にコースマネジメントを徹底する意味でも、前年のメモは大いに役立つことが多い。
残り距離を正確に把握するためにも手放せない
ただ、いくらヤーデージブックがコンパクトだとはいっても、年間30試合前後に出場するとなれば保管するのにそれなりのスペースが必要となるため、2年以上前のものは処分するという選手も増えてくる。

実際、必要な情報は前年度分に書き込んであるので、確かにそれ以上前のものは不要になるのだろう。それでも、日本オープンのように数年後に同じコースを使用する可能性のある大会や、優勝したなど思い入れのある大会のメモは残すこともある。
ちなみに、今年からルールが改定され、ヤーデージブックにも規制が入ることになった。
というのも、グリーンの傾斜についての詳細な書き込みが問題となったからだ。グリーン上のポイントごとにデバイスなどで測った傾斜の数字を参考にするのは、プレーヤーのラインを読む技術をアシストするため、それを制限しようという考えだ。
その結果、各大会が承認したヤーデージブックのみが使用可能となり、選手は自分の感覚で得た情報だけを書き込むことができる。さらに、サイズも17.8センチ×10.8センチ以内となった。
国内ツアーで使用されるヤーデージブックは、1996年にサイモン・クラークという一人のプロキャディが作成したもので、それがどんどん進化していって今に至る。
それが新たな局面を迎え、不要論もちらほらと出ているが、今回のルール改定ではグリーン以外に関しては規制されていない。やはり、残り距離を把握する意味でもヤーデージブックが不可欠になるのは間違いないだろう。
ツアープロにしてみれば、ヤーデージブックを保管するスペースはしばらく空けておいたほうがよさそうだ。