ノーマンが欧州ツアーの喉元にあいくちを!?
コロナ禍で最も打撃を受けたゴルフツアーのひとつがアジアンツアーです。2020-21年の2年間で実施されたトーナメントはわずかに7試合。うち1試合はツアー予選会である「Qスクール」ですから、ほとんど“休眠状態”。ここを中心に活動していたプロは途方に暮れたことでしょう。

ところが、今年になってようやく活動を本格的に再開させると、いきなり世界が注目するツアーになっていたのです。
アジアンツアーが再度、世界のゴルフシーンの表舞台に帰ってきたのは昨年10月末のこと。サウジアラビアの政府系ファンドが出資し、グレッグ・ノーマンがCEOを務める投資会社「リブ・ゴルフ・インベストメンツ」がアジアンツアーに今後10年間で計2億ドル(約230億円)を投じ、年間10試合を開催すると発表したのです。
しかし、そもそもノーマンと「リブ・ゴルフ・インベストメンツ」は、米・欧ツアーで活躍する有名、有力選手と契約し(=引き抜き)、新たな世界規模のツアー「スーパーゴルフリーグ」を立ち上げることを画策する組織です。その彼らがアジアンツアーに出資し、ビッグトーナメントを始めるのは新ツアーのための土台づくりと受け取られています。
この発表から3カ月。「スーパーゴルフリーグ」についても、アジアンツアーに設ける10試合についても、新たなアナウンスはありませんでした。
ところが先日の2月1日、アジアンツアーの今季開幕戦「サウジインターナショナル」の記者会見の場で、とても刺激的な概要が発表されたのです。
同ツアーと「リブ・ゴルフ・インベストメンツ」は、ツアーの中に全10試合の「インターナショナルシリーズ」を創設。各試合とも賞金総額150万~200万ドル(約1億7000万~2億3000万円)で実施すると表明。併せて「リブ・ゴルフ・インベストメンツ」は投資額を当初の2億ドルから3億ドルに増額するとしたのです。単純に計算して、年間3000万ドル(約34億円)ですから、1試合当たり300万ドル。賞金のほかに、有名、有力選手を招待する余裕もできそうです。
さらに「インターナショナルシリーズ」には、一部に穏やかではない情報が含まれていました。
同シリーズは3月3~6日、タイのホアヒンを皮切りに、イングランド、韓国、ベトナム、中東と転戦。その後、中国、シンガポール、香港をサーキットする予定です。このうち、6月9~12日開催のイングランドのコースというのが、ロンドン郊外のセンチュリオンクラブ。
ここは、アジアンツアーへの警戒感を強める欧州ツアーの本部からわずか31マイル(50キロ弱)にあるゴルフ場。言うなれば、欧州ツアーの喉元での開催。これはちょっと刺激的です。
ノーマン&トランプという濃厚キャラの剛腕タッグが実現!?
欧州のゴルフメディアには、さらに刺激的な憶測が載っていました。
全10試合の「インターナショナルシリーズ」ですが、開催地として挙がったのは8カ国(地域)だけ。残る2カ国のうち、一つはアメリカ。ノーマンも記者会見でその可能性を示唆しています。
そして、最後の1カ国は“ゴルフの故郷”スコットランドになるのでは? というのです。
開催コースはなんとターンベリー。本来は全英オープンのローテーションコースですが、オーナーが前アメリカ大統領のドナルド・トランプ氏に代わってからは一度も開催されていません(前回開催は09年。25年までの開催予定地にも選ばれていない)。「ターンベリーで行われた場合、大会の主役が本来あるべき選手や競技からトランプ氏になる恐れがあるから」というのがR&Aの主張です。
これにはトランプ氏はかねてから不満を表明しています。
一方、ノーマンはトランプ氏の昔からの親しいゴルフ仲間。そして、ターンベリーはノーマンが念願の初メジャーを獲得した思い出深いコースでもあります(1986年の全英オープン)。
あくまで“状況証拠”ですが、条件は揃っています。
そのため、トランプ氏が全英オープンの開催を諦めて仲の良いノーマンとアジアンツアーにコースを提供する可能性が取り沙汰され、「ないことは、ない」という見方があるのです。
アジアンツアーをめぐる動向、まだまだ目を離せそうにありません。