- ゴルフのニュース|総合ゴルフ情報サイト
- 記事一覧
- コラム
- もはや“変則”とは呼べない!? “逆手”や“右手添えるだけ”でパターを握る選手が増えた理由
多くのツアープロのコーチとして活躍している石井忍氏が、“ここはスゴイ”と思った選手やプレーを独自の視点で分析します。今回注目したのは、「全米女子オープン」。出場選手のパターの握り方です。
全米女子OP上位2選手の“変則”グリップに注目
米国女子ゴルフのメジャー第2戦「全米女子オープン」が行われました。大会前から大きな話題になっていたのが、総額1000万ドル(約13億円)、優勝180万ドル(約2億3500万円)という賞金額です。
180万ドルを手にしたのは、ミンジー・リー選手。最終日は4バーディ、4ボギーのイーブンパーで回り、通算13アンダーでメジャー2勝目、ツアー通算8勝目を挙げました。通算9アンダーで2位に入ったのはミナ・ハリガエ選手。108万ドル(約1億4000万円)を獲得しました。
さて、そんな今大会で気になったのが、各選手のパターの握り方です。ノーマルなパターの握り方とされているのが、グローブを外し、左手を上、右手を下にして握る逆オーバーラッピングですよね。
しかし、優勝したリー選手は、右手を上、左手を下にするクロスハンドグリップ。2位のハリガエ選手は、左手のグローブをつけたまま、左手でパターを握り、右手は指先をグリップに添えるクローグリップ。上位2選手は、“変則”といわれることもある握り方をしていました。
他の出場選手を見ても、リディア・コ選手やネリー・コルダ選手、日本人選手では畑岡奈紗選手、西郷真央選手はクロスグリップ。レクシー・トンプソン選手はクローグリップでした。また、日本人最上位の20位タイでフィニッシュした小祝さくら選手は、順手ですが、グローブ外さずにグリップするスタイルでした。
一方、日本の女子ツアーでも、稲見萌寧選手や植竹希望選手はグローブを着けたクロスハンドグリップ、堀琴音選手や高橋彩華選手はクローグリップです。
ここまでくると、クロスハンドグリップやクローグリップは、“変則グリップ”とはいえないかもしれませんね。なぜこれほどクロスグリップやクローグリップが浸透しているのでしょうか。
グリップの握り方の変化に“道具の進化”
理由のひとつにあるのは、道具の進化です。最近は、ヘッド体積の大きいマレット型はもちろん、それほどヘッドが大きくないピン型でも慣性モーメントが大きいモデルが増えています。
こういったヘッドにマッチするのは、パターの慣性を優先させたストローク。クロスハンドグリップやクローグリップ、グローブを着けたまま握ることで、手先の感覚が抑えられ、パターの慣性を活かしやすくなるわけです。
特に、器用に動く右手は、ストローク中に“悪さ”をすることがあります。クロスハンドグリップやクローグリップは、そんな右手の“悪さ”を抑えるのに有効な握り方といえるでしょう。
自分のフィーリングを活かしてタッチや方向性を出している人は、「素手+順手」のスタイルで問題ありませんが、パターに悩んでいる人は一度他のグリップを試してみてはいかがでしょうか。
ミンジー・リー
1996年生まれ。オーストラリア出身。米ツアー初優勝は、15年の「キングスミル選手権」。同ツアー参戦初年度、18歳で初勝利を達成した。21年の「エビアン選手権」でメジャー初制覇。22年は「コグニザント ファウンダーズカップ」で通算7勝目、「全米女子オープン」でメジャー2勝目を挙げた。米ツアー通算8勝。
ミナ・ハリガエ
1989年生まれ。米国カリフォルニア州で寿司店を営む日本人両親の下に生まれる。ジュニア時代はカリフォルニア女子アマ4連覇、全米女子パブリックリンクス選手権優勝など活躍。09年にプロ転向し、10年の下部ツアーで3勝を挙げて賞金女王に。11年からレギュラーツアーに本格参戦。ツアー未勝利。
【解説】石井 忍(いしい・しのぶ)
1974年生まれ、千葉県出身。日本大学ゴルフ部を経て1998年プロ転向。その後、コーチとして手腕を発揮し、多くの男女ツアープロを指導。「エースゴルフクラブ」を主宰し、アマチュアにもレッスンを行う。
最新の記事
pick up
ranking